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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

東洋文庫 466|471

『和漢三才図会 6、7』(寺島良安著 島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳訳注)

2018/08/16
アイコン画像    江戸時代は魑魅魍魎だらけ!?
和漢三才図会版ふしぎないきもの

 世間では『へんないきもの』(新潮社)にはじまり、『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)などなど、“不思議な動物”、あるいは“動物の不思議”を集めた本がウケていますが、江戸の図鑑『和漢三才図会』も負けてはおりません。特に本書6巻、7巻は、“不思議な動物”の宝庫です。

 というわけで、「和漢三才図会版ふしぎないきもの」を紹介しましょう。


【風狸】(かぜたぬき) 大きさは狸かカワウソ。猿に似ていて模様はヒョウ。鳥のように空中を飛び、〈頭を撃ち砕いても、風が吹いてくればまた生き返る〉

【山精】(さんせい) 人に似ているが一本足。山蟹を食べる。彼らと関わると、〈病気になったり、住居が火事で焚けたりする〉

【魃】(ひでりがみ) 山鬼。〈人面獣身で手は一つ足は一つ〉。「魃」のいるところに〈雨は降らない〉

【川太郎】(かわたろう) 河童。〈もし頭に水があると力は勇士に倍し、また手肱(うで)はよく左右に通り脱けなめらかなので、どうすることもできない〉

【姑獲鳥】(うぶめどり) 〈鬼神の類〉で、〈人の魂魄(こんぱく)を食べる〉。〈胸の前に両乳があり、好んで人の子を取り、養って自分の子とする〉(以上、『和漢三才図会 6』より)

【吉弔】(きっちょう) 竜は必ず卵を2つ産み、そのうちひとつが「吉弔」となる。〈蛇の頭、亀の身体〉

【和尚魚】(おしょういお) 海坊主のこと。身体はスッポンで顔は〈人面、頭には毛髪がない〉

【人魚】(にんぎょ) 〈頭や顔は婦女に似ていて以下は魚の身体〉。〈暴風雨のくる前に姿を見せる〉

【青蚨】(せいふう) 蟬に似ていて、大きさはアブ。母子の〈血をとって銭に塗る〉と、使っても銭は、〈自然に還ってくる〉(以上、『和漢三才図会 7』より)


 『和漢三才図会 6』は動物を中心に、『和漢三才図会 7』は魚や虫を中心に紹介する巻です。この他にも「こんな生物がいるの?」というものばかりで、UMA(未確認動物)好きや、妖怪好きにはたまりません。

 しかも、こうした「ふしぎないきもの」が、虎や象などの普通の動物に混じって記述されています。江戸の人たちが、どうのように世界を認識していたのか、その一端が垣間見えます。

 江戸の魑魅魍魎の世界へようこそ! 本書を紐解けば、見えなかったものが見えてくるかもしれませんよ。



本を読む

『和漢三才図会 6、7』(寺島良安著 島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳訳注)
今週のカルテ
ジャンル事典
刊行時期江戸時代中期
読後に一言〈虎は犬を食えば酔う〉という記述に驚きました。〈犬は虎の酒〉なんだそうです。虎は日本の生物ではありませんので、江戸時代は、虎も妖怪も一緒なのですね。
効用全編、図が入っており、これがまた興味深い! ご自身の目で、たとえば【魃】の姿を確かめてみてください。
印象深い一節

名言
(虫は)蠢動し霊を有し、それぞれ性気を具えている。(巻第五十二)
類書本書でも引用する仙人の理論と実践『抱朴子 内篇』(東洋文庫512)
本書でも引用する江戸の食物図鑑『本朝食鑑(全5巻)』(東洋文庫296ほか)
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