1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。
イエズス会はキリストの兵士だった! 日本上陸前夜の聖人ザビエル(1) |
ザビエルというのは中々興味深い人物でして……。
えー唐突に、〈日本に初めてキリスト教を伝えたスペインの宣教師〉(ジャパンナレッジ「デジタル大辞泉」)の話を始めたのにはワケがありまして、〈1549年(天文18)8月15日にザビエルは鹿児島に第一歩を印した〉(同「ニッポニカ」)んだそうです(つまり2週間後!)。
ザビエルをひと言で申しますと、〈スペイン人イエズス会士〉(同「国史大辞典」)となりますが、親はスペインに併合される以前のナバーラ王国の貴族という名門の生まれ。パリ大学で学んだ秀才です。そんな人間がなぜ極東の日本に?
というわけで、『聖フランシスコ・ザビエル全書簡』です。ここには、イエズス会の成立の経緯やインドなどでの布教活動の様子が記されています。
イエズス会というのは、〈イグナティウス=デ=ロヨラを中心として、フランシスコ=シャビエル(ザビエル)ら同志七人によって創立された司祭修道会〉(同「国史大辞典」)のことで、〈イエズス会に入会する者は、まず『霊操』によって修行〉(同「ニッポニカ」)します。
ロヨラ(本名イニゴ)というのは負傷軍人なのですが、パリ大学で知り合ったザビエルは、次第に心酔していきます。〈私にとって必要な金や友人たちを幾度も与えて〉くれたと、兄への手紙で書いています。
〈一生かかっても彼(イニゴ)から受けた恩義をお返しするつもりである〉
軍人が作った組織だからなのか、イエズス会は修行がシステマティックだと感じました。「体操」ならぬ「霊操」で精神を鍛えようというのです。
では「霊操」とは? 本書「解説」によれば、これが第一段階だそうです。
〈王たるキリストに従う兵士は、第一にこの世の富に対して清貧、第二に世の空しい名誉に対して侮辱や軽蔑、第三は傲慢に対して謙遜の三段階によって武装する〉
兵士、武装……。軍隊丸出しです。
〈全人類の救済のためにどんな仕事でもどんな所にでもすぐ赴いて行ける即応性を重んじた〉(同「ニッポニカ」、「イエズス会」の項)そうですから、まるでグリーンベレーです。
なぜザビエルは日本に来たのか。
ひとつの理由は、彼らの軍人気質+使命感だといえそうです。
ジャンル | 宗教/記録 |
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時代・舞台 | 1535~45年/フランス、イタリア、ポルトガル、モザンビーク、インド |
読後に一言 | なぜザビエルは日本に来たのか。もうひとつの理由は次回で! |
効用 | 〈私、フランシスコは、あらかじめここに、終生の従順、清貧、貞潔を誓います〉 ザビエルは生涯をイエズス会に捧げることを誓います。彼の信仰の源がどこにあったのか、理解するのに最適な本といえるでしょう。 |
印象深い一節 ・ 名言 | 霊魂の能力は三つです。第一は記憶力です。第二は理解力です。第三は意志力です(第2章「書簡第14」) |
類書 | イエズス会宣教師フロイスによる歴史書『日本史(全5巻)』(東洋文庫4ほか) イエズス会本部に送った宣教師の報告書『日本巡察記』(東洋文庫229) |
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