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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアの古典・名著がズラリそろって、その数なんと約700冊! 後世にぜひ引き継いでいきたい、まさにアジアの文化遺産なのです。

そんな珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、あなたを面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

東洋文庫
『聖フランシスコ・ザビエル全書簡2』(河野純徳訳)

2019/08/08
   ザビエルが日本行きを決めた理由とは
日本上陸前夜の聖人ザビエル(2)

 フランシスコ・ザビエルがインドに上陸した時、彼はまだ30代でした。今ならまだしも、当時のインドや東南アジアでの生活&布教は命の危険さえありました。


 〈モロタイ島(インドネシア)は非常に危険な土地柄で、人びとは陰険も甚だしく、食物や飲物のなかに毒を入れます〉

 〈この地方の島じま(モルッカ諸島/インドネシア)では、他の部族と戦い、喧嘩して人を殺した場合、殺された人の肉を食べます〉

 当然、こんな地に行きがる人はいません。ザビエルはせっせと本部に、宣教使派遣を要請します。


 〈イエズス会員として十分な学識や能力に恵まれていない者であっても、もしもこちらの人びととともに生き、ともに死ぬ覚悟で来る人であれば、この地方のためにはあり余るほどの知識と能力をもっていることになります〉

 能力問わず。それでいいのかっとツッコミたくなりますが、ザビエルの事情は察するに余りあります。

 そんなザビエルの元に、ひとりの日本人がやってきます。アンジロウ(アンジローとも)です。

 〈日本人で最初のキリシタン。ヤジロウ、アンゼロなどの説がある。鹿児島生まれの商人、もしくは薩摩水軍に属する武士といわれる。故郷で殺人を犯して東南アジアに逃亡中、(中略)フランシスコ・ザビエルに引き会わされた〉(ジャパンナレッジ「ニッポニカ」)

 ザビエルは東南アジアの異文化に手を焼いて(もっといえば身に危険さえ感じて)いました。そこに、片言でポルトガル語を話せる日本人がやってきたのです。相対的に日本人の評価がアップしたこととは、想像にかたくありません。


 〈もしも日本人すべてがアンジロウのように知識欲が旺盛であるなら、新しく発見された諸地域のなかで、日本人はもっとも知識欲の旺盛な民族であると思います〉


 ポルトガル人のインド支配のやり方がまずく、その反発からインドへの布教がままならないことや、ポルトガル人たちの腐敗にザビエル自身、どうやら嫌気がさしていたようです。そんな中、知識欲の旺盛な民族がいる、というのはひとつの光明でした。


 〈私は内心の深い喜びをもって、日本へ行くことを決心しました〉


 さあ、いよいよ日本上陸です。



今週のカルテ

ジャンル宗教/記録
時代・舞台1545~49年/マレーシア、インドネシア、インド
読後に一言さて今の日本だったら、ザビエルは来たがるでしょうか。
効用16世紀の東南アジアの様子が垣間見られるのも、この本の特徴です。
印象深い一節

名言
自身について用心することを怠るならば、そこから友人であった人びとを失ういろいろな原因が生じるものです(「書簡第80」)
類書イエズス会士マテオ・リッチが説く教義『天主実義』(東洋文庫728)
オランダ東インド会社の報告書『バタヴィア城日誌(全3巻)』(東洋文庫170ほか)
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