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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

東洋文庫 214

『朝鮮独立運動の血史 1』(朴殷植著 姜徳相訳注)

2021/08/19
アイコン画像    目を背けてはいけない
約100年前の日本人の蛮行

 もし、あなたが日本人ならば、本書『朝鮮独立運動の血史1』に書かかれていることに、目を覆いたくなるでしょう。絶句を通り越して、嘘だと思いたいはずです。ですが、これが真実です。「侵略」や「植民地」という言葉がかわいく思えるほどの残忍な振る舞いが、1800年代末から、ここ朝鮮半島で繰り広げられていました。誰によって? ほかならぬ日本人によって、です。

 1911年に寺内正毅暗殺未遂事件が起こります。寺内は初代朝鮮総督で、韓国併合を推し進めた中心人物です。

〈韓国統治にあたっては武断政策をとり、憲兵を各地に配して民衆を支配するいわゆる「憲兵政治」を行なった。(明治)四十四年韓国併合の功により伯爵を陞授された〉(ジャパンナレッジ「国史大辞典」)

 憲兵は本来、〈軍隊内部の犯罪摘発〉(同前、「憲兵制度」の項)が主任務ですが、朝鮮では朝鮮の人々の監視・弾圧に利用されました。戦争末期の日本でも憲兵が国民を監視・弾圧しましたが、その大本は、韓国併合にあったのです。

 当時の英国「タイムス」記者の報道です。この暗殺未遂事件で約120人が検挙され、〈警官の厳重な訊問により暗殺の事実を自白させられ〉ます。しかし、〈「そのようなことはなにも知らない」と答えた者には、かならず拷問を加え〉ました。


・立つことも座ることもできないせまい木箱に36時間押し込む。
・頭を枷にはめ、わずかに足の親指がつくくらいの高さまでつり上げる。
・人を腹ばいにして床に置き、頭を上に向けさせ棒きれを顎の下に置いて固定。上から鼻孔に水を垂らし続ける。


 これが拷問の一例です。しかもこの事件自体が、独立を叫ぶ朝鮮人の団体を壊滅させる捏造でした。日本の統治は、手段を選ばなかったのです。例えば〈往来での三人以上の立ちばなし〉さえも検挙の対象でした。

 三・一独立運動の最中のことです。1919年4月、水原の堤巌里(堤岩里)にて、日本軍は村民約30名を教会に集めます。


 〈窓やドアをきつくしめ、兵隊がいっせい射撃を開始した。堂内にいたある婦人が、その抱いていた幼児を窓の外にだし、「わたしはいま死んでもよいが、この子の命は助けてください」と言った〉


 どうなったか。〈日本兵は、子供の頭をつき刺して殺した〉。そして放火。これが「堤巌里の虐殺」です。そしてこれは、韓国併合の一例に過ぎないのです。



本を読む

『朝鮮独立運動の血史 1』(朴殷植著 姜徳相訳注)
今週のカルテ
ジャンル歴史
時代・舞台19世紀末~20世紀初頭の朝鮮(韓国、北朝鮮)
読後に一言辛いですが、まだまだ続きます。
効用写真も多く掲載されており、事実の重みが増しています。
印象深い一節

名言
日本が一進すれば、わが二千万の民衆は日本の仇となる(上編「緒言」)。
類書吉野作造の同時代の朝鮮論『中国・朝鮮論』(東洋文庫161)
日本統治下の文学も追う『朝鮮小説史』(東洋文庫270)
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