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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

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『源頼朝』(山路愛山著、福田豊彦解説)

2011/11/24
アイコン画像    明治・大正期に活躍した評論家・山路愛山の
名著から、いま話題の「平清盛」像を探ってみる。

 「今から900年前、貴族政治が混迷を極めた平安末期、1人の男が現われ、この国の行く先を示した。」

 これ、2012年1月から始まるNHK大河ドラマ『平清盛』公式HPの冒頭に記されている文言である。「1人の男」とはもちろん清盛のことだが、いったいどんな男だったのか。東洋文庫&ジャパンナレッジ検索で先取ってしまおう、というのが今回の趣旨(NHKの回し者ではありません、念のため)。

 東洋文庫の中で、最も冷静に「平清盛」を扱っているのは、明治末に山路愛山の手によって書かれた『源頼朝』である。この人、他にも『豊臣秀吉』や『徳川家康』など伝記モノが多く、日本を代表する伝記作家と言ってもいい。新聞記者出身ゆえに、ジャーナリスティックな視点も介在する。いわば山路愛山の見た清盛像は、この当時の冷静な視点による論評だと言えよう。

 愛山の視点は大きく2つ。

①最初の武家政権のトップ。

 〈平清盛は始めて兵馬の実力と政権とを一身に兼ねたる政治家として朝に立ちたるものなりき〉

②源頼朝は、清盛の後追いに過ぎない。

 〈頼朝も亦当時の天下に秩序を与へんとする根本的の原則に於ては全く清盛の継続者たりき〉

 〈常に独宰官を要求す。清盛は此要求に応じて最初に立ちたるものにして頼朝は之に次ぎて起りたるものなり〉

 本書の主人公の頼朝を上回るような評価である。

 余談だが、愛山は幕臣の子である。明治維新がそうであるように、歴史は常に勝者の側から語られる。そのことを身に染みていた愛山だからこそ、冷静客観に歴史の敗者・清盛を評価しているのかも知れない。

 では現在における清盛の評価は?


 〈(清盛の六波羅)政権の性格はまだ貴族的であって、平氏は朝廷の政治権力を簒奪したにすぎず、特別な政治制度を打ち立てたのではなかった〉

(ジャパンナレッジ「国史大辞典」「六波羅政権」の項)


 つまり武家政治と貴族政治の狭間にあって、貴族よりだったということ。ふるまいも貴族的だったようで、「ニッポニカ」になると、〈自由人〉で〈浪漫的でありすぎた〉という不思議な評だ(ロマンチック、ってどんな評だ)。個人的には、ますますもって謎が深まってきた。しばらく「平清盛」という男を追ってみたい。

本を読む

『源頼朝』(山路愛山著、福田豊彦解説)
今週のカルテ
ジャンル評論/歴史
書かれた時代 日本・明治時代
読後に一言清盛の評価の高さに驚き。
効用本の主役は頼朝。もちろん、愛山の頼朝分析は清盛同様、冴えています。
印象深い一節

名言
源頼朝を以て、京人の智慧と東人の力とを以て経営したる新しき政治を論じ……(扉)
類書平安末期を描いた軍記物『義経記(全2巻)』(東洋文庫114、125)
清盛と同時代を多く題材にする『幸若舞(全3巻)』(東洋文庫355、417、426)
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