「来場者だけ無料でもらえる」などの魅力的なフレーズで人集め。プレゼントや巧みな弁舌で場内を沸かせ、高価な健康グッズや寝具をみずから購入するようにさせる……会場が貸店舗などの場合、業者が行方をくらますこともある。人の心を操ることから「催眠商法」とも呼ばれ、やり口としては以前からあるもの。
 かつて「新製品普及会」なる業者がこの商法を行ない、その頭文字を取って「SF商法」と呼ばれていた。だまされて「はい、はい」と手をあげて買ってしまう様子から、近ごろでは「SF商法」よりも明快に「ハイハイ商法」と紹介されることが多くなった。いまだに高齢者や主婦を中心とする被害があとを絶たず、2012年7月に国民生活センターがホームページ上で注意を促した。


 なお被害に遭った場合は、一定期間内に無条件の解約ができるクーリングオフ制度を活用したり、自治体の消費生活センターに相談してみることも考えられる。(編集部より)

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」の下、永田町では手詰まり感が漂うが、新聞の政治面で頻出するのが「話し合い解散」という言葉である。文字通り、事前に与野党が話し合って衆院解散を行なうものだ。
 新しい言葉ではない。戦後政治史では、1958(昭和33)年の解散が知られている。当時の岸信介首相(自民党総裁)と社会党委員長の鈴木茂三郎(もさぶろう)が会談し、解散の日取りや「社会党が内閣不信任決議案を上程し、採決直前に解散する」といった国会運営まで話し合った。「死んだふり解散」(1986年)、「郵政解散」(2005年)など、メディアは解散に通称を付けるが、この1958年の解散は「話し合い解散」と呼ばれている。
 さて今回だが、野田佳彦(よしひこ)首相は、野党から特例国債法案成立への協力を得る代わりに衆院解散を迫られている。
 解散権は首相の「伝家の宝刀」とされる。本来は、政権を維持するうえで最も都合のよいタイミングを見計らって首相が行使するものだ。だが、「ねじれ」のせいで、重要法案の成立がままならず、いま、野田首相は、法案を人質に解散権を自民党など野党側になかば奪われた格好だ。
 その意味で、今回は「追い込まれ解散」という側面もある。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 日がとっぷり沈んだ秋の夜空を見上げると、無数の星が輝いている。「ほら、あんなにホシバッテるわぁ。明日はきっと晴れやなぁ」と、運動会を翌日に控えた祖父と孫の会話が耳に入ってくる。夜空に星がたくさん瞬いていることを、ホシバルという。京都府や滋賀県、山陰の一部地域で使われている方言で、「星晴れ」(ほしばれ)という言葉が変化したのではないかという説がある。
 星の見え方は、それだけでは天候を予測する根拠にはならないそうだが、上空の大気の状態が影響するため、翌日の天候との関連は深い。湿度が高く、水蒸気が多く含まれている夜には星は見えにくくなり、翌日の天候は悪化する可能性が高くなる。逆に、星が明るく輝き、空が高く感じられるなら、高気圧に覆われ、天候はしばらく安定しているはずである。晩秋から冬に星が綺麗にたくさん見えるのは空気が乾燥しているからであり、きらきらと瞬いているのは、上空を強風が吹いていることを意味している。夜空と関係した言い伝えも多く、「流れ星が多い年は、天候が荒れたり、日照りになる」とか、「星の周囲が赤い色を帯びていたら強風が吹く」など、人は古くから夜空を見上げながら明日の天気の変化を占ってきたのである。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 中国副主席。11月に次期総書記に就くことが確実視されている。太子党といわれる共産党高級幹部子弟たちのグループに属し、共青団(中国共産主義青年団)と呼ばれるグループ出身の胡錦濤主席との間で熾烈(しれつ)な権力争いが繰り広げられていると、さまざまなメディアが報じている。
 その証拠に、習の盟友であり次期常務委員入り確実と見られていた薄熙来重慶市党委員会書記が、妻・谷開来の英国人殺害と自身の不正蓄財の罪で失脚するという大事件が起こったが、これは胡と温家宝(首相)が仕掛けたのではないかと囁(ささや)かれている。
 また、9月初旬から習が2週間にわたって表舞台から姿を消したことがさまざまな憶測を呼んだ。重病説まで流れたが、『週刊現代』(以下『現代』)の10/6号「日本人よ、戦いますか 中国が攻めてくる」では、習が校長を務める「中央党校」の始業式で胡時代を「失われた10年」と批判したために胡の怒りを買い、緊急常務委員会で「習近平はその場で自己批判を強要させられ、『当分の間の活動禁止処分』が下されたのだ」と報じている。
 それに対して習側も黙ってはいなかった。全国的な「反日ムーブメント」を起こすことで、親日的な胡政権は誤りだったということを正当化し、胡一派を駆逐しようと目論んだと『現代』は見ている。
 『現代』は10/20号「日本人よ、もう覚悟したほうがいい 中国は本気だ」のなかで、争いはさらにエスカレートしていると書く。胡が最後の手段を使って、総書記就任と同時に、習近平が中国人民解放軍を統轄する党中央軍事委員会主席のポストに就くのを阻止しようとしているというのである。
 その手段とは中国共産党の憲法ともいうべき「中国共産党章程」の第18条(「18条規定」)の“非常事態”を適用することだと、政府の要人の居住区として名高い中南海に勤める官僚がこう語る。
 「胡錦濤及びその一派としては、習近平後継を阻むには、もはやこの『18条規定』を適用するしか手段がないと考えているのだ。非常事態とはすなわち、“対日宣戦布告”に他ならない。当初、党大会は10月18日開催でほぼ決定していたのに、9月末になって胡総書記の鶴の一声で、20日間、先延ばししたのだ。これは非常事態へ持っていく時間を稼ぐためだろう」
 軍を手放したくない胡が、反日に大転換してでも習に最終決戦を挑むと読むのだ。中国の権力争いのために対日戦争を仕掛けられてはたまったものではないが、江沢民前国家主席率いる上海派まで絡んだ中国内部の暗闘の行方は、中国経済以上に予断を許さない。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 「タトゥーストッキング」や「タトゥータイツ」と呼ばれるアイテムが、2012年に急激に売り上げを伸ばした。透けている生地にイラストや文字がプリントされており、素肌に描き入れたようなおもしろさがある。もともとは海外発。レディー・ガガなどのアーティストが履いていたことから注目を浴びたという。東京では「SPINNS(スピンズ)」や「MAM AVANTGARDE(アバンギャルド)」などのブランドが扱っており、いわゆる原宿系ファッションとして認識されているようだ。
 バブル期を境に、若い世代のストッキング離れが進み、いわゆるナマ足で街を闊歩(かっぽ)する女性も多い。にもかかわらず、とくに売り上げが伸び悩む夏にもヒットしたことは特筆すべきだろう。レギンスなどのブームを経て、「履く」ことへの拒否反応が薄れ、足のラインを気軽に整えるストッキングに対する需要が高まっているといえそうだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウィルスの感染によって発熱など風邪のような症状のあと、手や足に麻痺(まひ)が現れ、小児麻痺などの障害が残ることの多い病気だ。1960(昭和35)年に日本でも大流行したが、ワクチンの導入により下火となり、1981年以降、新しい患者は発生していない。ただし、アフリカやインドなどではいまでもポリオの感染が認められており、日本でもポリオワクチンは定期接種の対象となっている。
 ただし、これまで日本で使われていたのは、ウィルスの病原性を弱めて作った生ワクチン(経口生ポリオワクチン)で、数百万件に1件の割合でポリオに感染した時と同様の健康被害が発生していた。先進諸国では、免疫を作るのに必要な成分だけを取り出し病原性をなくした不活化ワクチンの使用が標準なので、日本のワクチン行政は数十年遅れているといわれている。こうした状況を打開するために、市民団体や小児科医などが不活化ワクチンへの切り替えを望む運動を展開。その結果、日本でもこれまでの生ワクチンの予防接種は中止され、2012年9月から不活化ワクチンに切り替えられることになった。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 2012年はイギリスにとって二つの重要なイベントがあった。ロンドン五輪ともう一つ、即位60年を迎えた女王エリザベス2世を祝う記念式典「ダイヤモンド・ジュビリー(Diamond Jubilee)」である。ロンドンで国会議事堂として使われているウェストミンスター宮殿の北側の時計塔「クロック・タワー(Clock Tower)」が「エリザベス・タワー」と改称するのは、これを記念したもの。長いイギリス王室の歴史で、在位60周年を迎えた王は現女王とビクトリア女王の二人だけ。ウェストミンスター宮殿で対となる南側の塔には、すでにビクトリア女王を称え、キングス・タワーを改称した「ビクトリア・タワー」の名が付けられている。
 日本の報道では「ビッグベンがエリザベス塔に改名」との見出しが躍ったが、正確には「ビッグベン」とは時計塔にある鐘だけの愛称。そこから塔全体をさすこともあるが、今後も鐘自体をビッグベンと呼ぶことは変わらないと思われる。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


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