七福神信仰とは、七難を除き、七福を与えるという、七神を組み合わせた民間信仰である。七福神とは大黒天(だいこくてん)、恵比須(夷、蛭子、えびす)、毘沙門天(びしゃもんてん)、弁財天(弁才天、弁天、べんざいてん)、布袋(ほてい)、福禄寿(ふくろくじゅ)、寿老人(じゅろうじん)のこと。ときに、寿老人を福禄寿が兼ね、吉祥天(きっしょうてん)を組み合わせる場合もある。七神の中の海運守護や商業神として祀られている恵比須神と、米俵の上で打ち出の小槌(こづち)と大きな袋を担いだ大黒天の二神を祀ったことが、この福神信仰の原点になったと伝えられている。

 京都は七福神信仰の発祥地とされており、室町初期1420(応永27)年には、すでに七福神の風流行列が行なわれていたそうである。昔の人も正月となれば、願わくば福徳を満載した宝船が初夢に現れてくれまいか、と寝床で祈願したのだろうか。

 1月1日から7日までの間、七福神を祀った社寺を巡る「七福神詣で」がある。有名な参拝コースがいくつかあり、もっとも知られているのは「都七福神」である。大黒天(妙円寺、左京区)、恵比寿(京都ゑびす神社、東山区)、毘沙門天(毘沙門堂・東寺、南区)、弁財天(弁天堂・六波羅蜜寺、東山区)、福禄寿(赤山(せきざん)禅院、左京区)、寿老人(革堂(こうどう)・行願寺、中京区)、布袋尊(天王殿・萬福寺、宇治市)という、名だたる寺院を参詣しながら巡る。また、成人の日には、泉涌寺(せんにゅうじ、東山区)の山内にある七福神を巡拝する「泉山七福神」も行なわれている。


狸谷のお不動さん(狸谷山不動院、左京区)参道の七福神。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 大つごもりとは、12月31日の大晦日(おおみそか)のことである。京都には「おおつもごり」と、覚え違いをしているような人がいるのだが、実はれっきとした京ことばである。

 1か月の末日を意味する晦日(みそか)のことを、陰暦では月がなくなるという意味から「月隠」(つきごもり)と呼ぶ。この音が転じて「つごもり」になったと考えられており、1年間と1か月の最後の日が重なる師走は、「大」をつけるわけである。月の満ち欠けによる陰暦では、1か月とは30日間であったので、「みそか」という音は「三十日」と読み方として重なる。しかし、太陽暦では「三十一日」でも「みそか」になってしまうため、なんともわかりにくく感じられることだろう。

 さて、大つごもりは大切な来客を迎える日である。まず、来たるべき新年の豊作の守り神、歳神を迎え入れる。歳神は、祖先の霊ともいわれており、燈明をともし、道を照らして祖先の霊を招き入れるのである。大つごもりの過ごし方とは、本来はそのような祖先の霊魂を慰めながら過ごすことであったと考えられ、大掃除や正月料理の準備は、そのための準備であったともいえるだろう。

 京都では、走り(台所の水回り)や手洗いなどに「星付きさん」という鏡餅風のとても小さなお餅を供え、水へ感謝する風習を守っている家もある。

 以前、大つごもりと元旦の境は、明け方近い「寅の刻」(午前4時ごろ)であると聞いたことがある。家々では、明け方まで夜更かしをして祖先の霊をなぐさめながら過ごしている。そして、寅の刻になると、霊魂は新年の到来とともに、もとの世界へ戻っていくのである。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊ポスト』(1/1・10号)恒例の年末年始企画。フランス文化省から芸術文化勲章最高章「コマンドゥール」を受賞し“世界のキタノ”といわれているビートたけしが審査委員長。といっても彼一人だけで選んでいるのだが、“品格”はないが週刊誌の企画としては秀逸である。

 昨年は「AVネーミング大賞」の歴代ナンバーワンを決定したが、腹を抱えるおかしなネーミングがあった。

 たとえば、実録ヤクザ映画不朽の名作を元にした『前戯なき戦い』、巨大ホオジロザメが襲ってくるパニック映画の金字塔のオマージュ『床ジョーズ』、ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』をヒントにした『サオだけではなぜ満足しないのか?』など。

 歴代ベストワンには『あしたのニョー』が輝いた。たけし自ら「あの名シーンが蘇るよ。『勃て、勃つんだ、ニョー!』ってね。前立腺も涙腺も崩壊する感動巨編」だと絶賛していた。

 では今年はどうか。今回は頭に「妄想」とつけている点がこれまでと違う。

 まずは今年の流行語になった滝川クリステルの「お・も・て・な・し」、予備校講師林修の「今でしょ!」、TBSドラマ『半沢直樹』の決めゼリフ「倍返し」、「じぇじぇじぇ」という能年玲奈の驚いたときの表現が流行語になったNHK朝のドラマ『あまちゃん』からお題を頂戴してAVのネーミングをつくっている。カッコ内はたけしの言葉。

 「絶世の美女・滝川クリ●リスさんがあの手この手を使って男性委員を口説き落とす『クリちゃんのお・も・て・な・し』。(中略)“おもてなし(表無し)”ってぐらいだから、そうとうハードコアな裏ビデオのはずだぜ」

 「現代文のスペシャリストが言葉責めでオンナをとろけさせる『イクなら今でしょ!』」

 「視聴率40%超えの『半勃ち直樹』の『パイ返し』。(中略)オッパイ型の『パイ返し饅頭』なんて便乗商品がヒットしそうだね」

 NHK朝ドラからは『ナマちゃん』が登場。「作品のクライマックスでは、“挿入歌”の『潮吹きのメモリー』が流れるはずだってね。“寄せては返す波のように~♪ 激しく~♪”ってか」

 女性が乗っていた自転車のサドルばかりを200個盗んだ変態犯が8月に捕まり、35歳の無職男が「女性の匂いを嗅ぎたかった。盗んだサドルを家に持ち帰り匂いを嗅いだり舐めていた」と自供した事件を取り上げ、「エロのトレンドはドンドン細分化していかなきゃダメなんだよ」とたけしがいいながら『サドルを舐めたい』というネーミングをノミネート。

 時事ネタからは猪瀬直樹都知事辞任のきっかけになった徳洲会からの5000万円借り入れをネタに、『イノセクンの5000マンお借りします』。(中略)人妻を一晩お借りして5000人斬りを達成する実録ドキュメントってことでさ。(中略)後で不貞を追及されると、“奥さんを貸してくれるなんて親切な人だと思った”という名ゼリフを吐くというオチなんだよ」

 宮崎駿監督最後の長編作品『風立ちぬ』も俎上にあげられる。「シンプルに『カリ勃ちぬ』でいいんじゃない」。アニメで大ヒットした『進撃の巨人』からは「『進撃の巨チン』だって? そりゃあ迫力ありそうだな~。過去の名作『20センチ少年』を超える大器かも」

 話題になったフジテレビの番組『ほこ×たて』からは「今年はやっぱりアレだな。放送中止になった問題番組『ソコ×勃て』だよ」

 結局、たけし審査委員長の「第一回妄想AVネーミング大賞受賞作」は『サドルを舐めたい』に決定!

 こうした“毒”のあるものをやらせるとたけしはうまい。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 上の「妄想AVネーミング大賞」もそうだが、今週は『ポスト』に見るべき記事が多かったので、同誌からベスト3を選んでみた。

第1位 「現役100人に聞いたヤクザ世論調査」
 こうした企画は週刊誌でなくては出てこない。中でも安倍首相の評価を65歳の中国地方のヤクザがしている。「目が死んでる。線が細すぎる。死ぬ気でやってるとは思えない。本気で喧嘩が出来るようにも見えない」といっているのは的を射ている。

第2位 「この国を支配する知られざる≪公的差別≫の正体」
 「なぜ4月に70歳を迎える人から医療費自己負担が2倍なのか? なぜ『男女平等』の世で年金支給は男65歳、女60歳なのか? なぜ災害見舞金は公務員が民間の3倍なのか?」と問う姿勢がいい。

第3位 「佐野眞一特別寄稿『猪瀬直樹君への手紙』」
 20代の時から一緒に仕事をしてきた“戦友”が、自分の不徳を振り返りながら、猪瀬氏に「辞任せよ」(これが書かれたのは辞任前)と諭す。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 30年以上続いた『笑っていいとも!』(フジテレビ)が、2014年3月で終わるとあって、テレビ業界が色めき立っている。たしかにここ数年は視聴率が低迷していたが、製作現場や出演者にも知らされていなかった。今回、タモリがみずから、しかも淡々と終焉を宣言したのは、タモリという芸人を好んで見てきた世代には、じつに「らしかった」といえるだろう。

 お笑い界でビッグ3と呼ばれるほかのふたり、ビートたけし、明石家さんまと比べると、これまでタモリという存在は語られることが少なかった。雰囲気を変えたのは、樋口毅宏(たけひろ)氏の著書『タモリ論』(新潮新書) である。2013年7月の出版とともにベストセラーとなり、芸人の間で評判は上々だが、ことネット界隈で「批判」の声も多い。これがどうも、「タモリには語るべきことがもっとたくさんあるのに、必要十分なものではない」といった批判なのだ。ひるがえって、「才人」たけし、「お笑い怪獣」さんまのように、「お昼の顔」タモリのすごさを語りたいという無自覚の「欲」に、お笑いファンは気付かされたのである。

 ところが、各方面で「タモリ論」が噴出し、さらにこれからが花盛りになるかというときに、タモリは『いいとも』を降りる。まるで「まあ落ち着け」と、自分が語られることをやんわりと拒否するかのようだ。タモリ独特の「いなす」間は、まだまだ衰えるところを知らないのである。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 国や地方公共団体、認定を受けたNPO法人などへの寄付は、所得税の寄付金控除の対象となり税制優遇を受けることができる。

 個人が寄付をした場合の税制優遇の方法には、次の2種類がある。

●所得控除
 1年間の寄付の合計額から2000円を差し引いた金額を、年間所得から差し引ける。控除できる金額は、その年の総所得金額の40%まで。

●税額控除
 1年間の寄付の合計額から2000円を差し引いた金額の40%を、その年の所得税額から直接差し引ける。対象となる寄付金額は、総所得金額の40%まで。

 どちらを利用するかは個人の自由だが、1年間に10万円寄付した場合に還付される税金の目安は、所得控除と税額控除では次のような差がでる。

・所得控除(所得税率10%の場合)
(10万円-2000円)×10%=9800円

・税額控除
(10万円-2000円)×40%=3万9200円

 よほど高所得者でたくさん納税している人でない限り、税額控除を利用したほうが有利になる。寄付金控除を受けるには、自分で確定申告をする必要があるので、今年1年間にNPO法人などに寄付をしたという人は、領収書を添えて忘れずに申告しよう。条例で定めている自治体の住民なら、住民税でも優遇が受けられる。

 一定の税制優遇を受けられる寄付金控除は、税金を支払う代わりに、自分が応援したいNPO法人などに直接、お金を渡せる仕組みでもある。つまり、税金の使い道を自分で決められるというわけだ。

 寄付金控除の対象になる認定NPO法人には、貧困問題、労働問題、環境問題、被災地支援、市民メディアなど、さまざまな取り組みをしている団体がある。自分が共感できる団体に寄付をして、彼らの活動を応援することは、自分が暮らしやすい社会を手に入れることにもつながっているのだ。


 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



  「恋」とつく駅名は全国に4つしかないという。JR北海道の母恋(ぼこい)駅、三陸鉄道の恋し浜(こいしはま)駅、西武鉄道の恋ヶ窪(こいがくぼ)駅、智頭(ちず)急行の恋山形(こいやまがた)駅である。これらの駅を持つ鉄道会社が、連携して地域の活性化を図ろうという企画が「恋駅プロジェクト」だ。2012年に立ち上がった。

 4駅の一つ・鳥取県の恋山形駅は、智頭急行のHPによれば、乗降客数が1日2人ほどという地味な駅だった。それが「恋駅プロジェクト」への参加をきっかけに「恋」のイメージを前面に押し出し、2013年6月9日、駅舎をピンク色にリニューアル。地域の恋愛スポットにしようと様々な試みをしている。ちなみに智頭急行智頭線の沿線は、宮本武蔵生誕地の碑などの史跡群が「ウリ」であった。やっていることは、なんだか駅の性差が逆転したかのようだ。

 プロジェクト最初の企画となったのは、2013年のバレンタイン前に行なわれた「日本に4つ 恋の駅きっぷ」。乗車券・入場券を台紙とともにセットで販売、4駅の台紙はそれぞれ絵でつながるようになっていた。話題性もあってすぐに完売するという順調なすべり出し。今後もいろいろと企画を打ち出していく方針という。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 政府・与党は、JR東海が2027年開業(東京・品川―名古屋)を目指すリニア中央新幹線の建設を税制面で後押しする。必要な土地を取得する際にかかる不動産取得税と登録免許税を非課税にするものだ。リニア中央新幹線は名古屋までの開業後、大阪までの延伸を計画しており、税の免除はその延伸計画を支援する狙いもある。減税額は品川―名古屋間で約180億円、名古屋―大阪間が約140億円の計約320億円にのぼるという。

 独立行政法人による整備新幹線の建設では両税が免除されており、減税は、これに準じた措置だ。

 ただ、JR東海は民間企業であり、同社首脳は安倍政権に極めて近い存在であることが知られている。そうした民間企業の事業を「国が優遇するのはいかがなものか」との声も漏れてくる。中央リニア新幹線は公共交通機関であり、「開業の経済効果を考えれば、320億円なんか安いものだ」といえば、それまでだが。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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