大型ないし中型のアイドルグループを応援する、主にアキバ系のファンは、そのグループのなかでも特にイチ推しのメンバーのことを「推しメン」と呼ぶが、「引きメン」はこの反意語としては、あまり使われない。

 どちらかと言えば、20代女子のあいだで、隠語として合コン中、ささやくように使われることが多く、意味としては「極端にテンションが高かったり、極端に無口だったりして思わず引いてしまう相手男子メンバー」のことを指す。また、たまたま前の席に座った相手男子が、自分の自慢話ばかりしていたり、一杯のお酒だけで寝てしまったり、口から堪えきれないほどの異臭を放ったりしたときに、その男子一人を限定して「引きメン。席替えプリーズ」などと、スマホのラインで仲間女子に伝えるケースもある。なお、後者の場合、「イケメン」同様、原則としては単数の男を言い表す単語なのに、何故か複数形という問題は、いまだ解決されていない。

 本当は好みのタイプの男子なのに、あえて「ひきメン」と発音あるいは表記し、じつは「惹きメン」だったのよ、と女子ライバルを出し抜くハイブロウな手口もあると聞く。

 

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 京都では大根を「おだい」という。「お大根」という丁寧な呼び方の「根」だけを省略した話し言葉である。鴨川東岸にある聖護院(しょうごいん)地域や、四条通(しじょうどおり)の中心部より南側にある壬生(みぶ)などの地域は、江戸時代は野菜の名産地として知られていた。当時、熱心に品種改良が試みられていたため、たくさんの特産野菜が受け継がれている。

 「おだい」の品種だけでも、有名な聖護院大根、11月に紹介した茎大根(長ぐき)、奇妙にくねった形の青味大根、そばの薬味にする丸い辛味大根、塩漬け用の桃山大根、葉が緑色をした時無し大根など、現在でも知られているものが多い。摺りおろしてよし、漬けてよし、煮(た)いてよし、蒸してよしと、冬の京料理は、旬の「おだい」なしには語れない。「おだい」はどんな料理にしても食あたりすることがないので、当たらない(売れない)という意味で、大根役者ということばができたそうである。ついでにいうと、「おこうこ」や「香の物」とは、京都では大根の漬け物をさすことは意外に知られていない。

 12月9~10日は、了徳寺(右京区)で大根焚き(だいこだき)があり、参拝客に振る舞われる。浄土真宗の開祖である親鸞上人をもてなした、という謂われをもとにした行事である。また、12月7~8日は通称・千本釈迦堂、大報恩寺(上京区)でも大根焚きがある。この大根焚きを食べると、中風などの病気にならないといわれ、大鍋でもうもうと湯気を立てて「おだい」を煮く様子は、師走の京都の風物詩になっている。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



「葬儀は火葬に」「墓は小さめに」と天皇皇后両陛下が示した自らの葬儀に関するお気持ちが話題を呼んでいる。

 『週刊朝日』(11月29日号、以下『朝日』)によれば、天皇が逝去されたときには、天皇自身が「火葬が望ましい」という意向があると、当時の羽毛田(はけた)信吾宮内庁長官が発言したのは2012年4月26日だった。

 葬儀も、国民の負担にならぬよう、簡素に、質素に行なうようにという天皇の考えが反映された「今後の御陵及び御喪儀のあり方について」というものが11月14日に宮内庁から発表され、話題を呼んでいる。

 「火葬に」という思いは実現したが、皇后陛下と同じお墓(陵)にという思いは、美智子皇后が「あまりに畏れ多いこと」と固辞したことで叶わなかったという。

 朝日新聞の皇室担当編集委員だった岩井克己氏によると、美智子さまは、「『私などが、めっそうもない。陛下のおそばに小さな祠(ほこら)でも建てていただければ』というお気持ちを示されていたようだ」という。

 そのため、御陵は合葬ではないが、天皇陵と少し小さめの皇后陵を並べて、二つが一体となって一つの陵をなすように設計されるようになったという。そして発表文にはわざわざ「同一敷地内に寄り添うように配置する」と明記されたのだそうだ。

 場所は武蔵陵墓地内の大正天皇陵西側で、総面積3500平方メートル。昭和天皇陵の8割程度になる予定だ。

 皇室の葬儀は代々土葬だったのではないかと思っていたが、仏教などの影響もあり、703(大宝3)年、女性天皇だった第41代持統天皇が初めて火葬されたそうである。

 その後、土葬と火葬どちらも行なわれていた時期があり、室町中期から火葬が定着したという。

 再び土葬が復活したのは江戸時代で、1654(承応3)年、後光明(ごこうみょう)天皇が神道にのっとって土葬になり、火葬は廃止されていく。

 大正時代に「皇室喪儀令」が整備され、天皇と皇族は土葬による葬儀が行なわれることが決定した。戦後この法律は廃止され、皇族の葬儀は火葬が定着するが、天皇と皇后のみ土葬が続いてきた。

 宮内庁によると、歴代天皇122人のうち、土葬は73人、火葬は41人、不明が8人だそうだ。『朝日』は、昭和天皇の葬儀と陵の造営でかかった費用は計100億円だったと書いている。

 天皇と皇后の温かい夫婦関係が伝わってくる、いい話である。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト5

今回から新設となった気になる記事ベスト5! やはり今週は猪瀬直樹東京都知事に関する記事が多かったので、その順位付けをしてみた。

第1位は徳洲会の徳田虎雄前理事長と次男の毅(たけし)代議士が、携帯電話で猪瀬氏にいくら選挙応援のカネをやるかという生々しいやりとりをスクープした『週刊新潮』の記事。

第2位は安倍首相が都知事の座にしがみつく猪瀬氏を見捨てたと報じた『週刊現代』。

第3位は少しは違った角度で「猪瀬都知事“血祭り”でほくそ笑む人々」と報じた『週刊ポスト』。ここでは次期都知事有力候補の舛添要一氏が、愛人との間に生まれた「婚外子」への養育費を、今はカネがないからと「ケチッた」と報じている。

第4位は猪瀬都知事と徳田虎雄氏をつないだ「一水会」木村三浩(みつひろ)代表を直撃した『週刊文春』。

第5位が、猪瀬都知事が辞任すれば「ウハウハ」なのは舛添要一元厚労相だと、さして新味のないことを書いた『週刊朝日』。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 おひとり様で食べる「ぼっち飯」。「ひとりぼっち」の「ぼっち」から来ているように、これまでは「さみしい」というイメージがつきまとう言葉だった。その意識が変わってきた背景には、久住昌之(くすみ・まさゆき)原作、谷口ジロー作画による漫画『孤独のグルメ』と、そのドラマ化作品が少なからず影響しているらしい。中年男が派手さのない店で酒もなしに飯を食らう様子には、なるほど、スタイルとして確固たるものを感じる。

 2013年は、京都大学の学生食堂で「ぼっち席」が支持を受けていることも話題になった。実際にその様子を見れば、目の前に仕切りがあるだけで、立ち食い店などの大衆的なスタイルを取り入れただけの代物。だが、学生とはいえ仲間といつもつるんでいるわけではなく、ひとりで気軽に食事をしたいニーズに合っているのだろう。

 そもそも、世間で「グルメ」と言われる人ほど、ひとりの食事に慣れている。美味いレストランに、毎回パートナーをともなって通うのは、予算的にも時間の都合をつけるうえでも難しいものだ。味に貪欲ならば、もとより「ぼっち飯」が基本。よく言われる「プライベートな空間を保つ」ことのみならず、ストレスフルな現代人には「食を純粋にたのしむための時間が必要である」というポイントが理解されるべきだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 11月26日に衆議院を通過した特定秘密保護法は、国の安全保障の中でも重要な情報を「特定秘密」に指定し、それを外部に知らせたり、外部から知ろうとしたりした人を厳罰化することを目的とした法律だ。

 特定秘密の対象は、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ活動防止の4分野だが、条文は曖昧で「その他」という文言もある。つまり、国家が決めれば、何でも「特定秘密」になってしまう可能性があるが、その秘密が何なのか、処罰された人に知らされることはない。

 最高で懲役10年という罰則がついており、処分対象は公務員だけではなく、ジャーナリストや一般市民も対象だ。秘密指定の期間は最長60年だが、武器や暗号など7項目については例外扱いとなっている。第三者機関の設置は検討されているものの、権限も設置時期も不明確だ。

 審議期間も短く、強引に成立を急ぐ与党のやり方には、内外から大きな非難の声が上がっているが、実は特定秘密保護法は安全保障と情報公開に関する国際基準である「ツワネ原則」にも背く内容となっている。

 ツワネ原則は、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」の略称で、今年6月に南アフリカのツワネで発表されたことから、この名で呼ばれている。世界70か国以上の安全保障や人権問題の専門家500人以上が、2年間におよぶ会議を行ない、50項目にわたって示されたものだ。

 ツワネ原則では、国家の秘密保持の必要性は認めているものの、人権とのバランスに配慮すべきとしており、具体的には次のような内容になっている。

・秘密にする正当な理由を国家は示し、秘密にする範囲は限定にすべき
・国際人権法、国際人道法に反する情報は秘密にしてはならない
・秘密指定の期間は限定すべきである
・第三者機関を設置すべきで、その機関は必要なすべての情報へのアクセスを担保されるべき
・公開された情報による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は守られる
・ジャーナリストや市民は処罰の対象にすべきではない

 日本の特定秘密保護法は、ツワネ原則と照らし合わせて世界の潮流に大きく外れている。与党は、今国会で特定秘密保護法の成立を目指しているが、成立すると国民の知る権利は大きく阻害されるため、国連人権理事会も同法への懸念を表明している。

 審議は参議院に送られ、12月6日までの会期中に採決が予定されているが、ここでも数の力による暴挙が行なわれるのか。保身に走って、特定秘密保護法の成立に手を貸した国会議員が、後の世でどのような評価を受けるのかは推して知るべしだ。
 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 パンケーキのネクストブレイクとして注目されたポップコーン。シカゴ発「ギャレットポップコーンショップス」、シアトル発「ククルザポップコーン」の出店は衆目を集めた。また、日本人による専門店「ヒルバレー」も、グルメポップコーン発祥の地とされるシカゴの影響を受けたものだ。これまであくまで庶民的なスナックであったポップコーン。海外からの「黒船」の出店は、その意外な「伸びしろ」を知らしめるに至った。

 一連のブームに先駆けて、日本での出店が最も早かったのは、スペイン語で「ポップコーン」を意味する「パロミータス」。タレント業をしていた藤原里奈(ふじわら・りな)氏が、スペインで出会った味から立ち上げたブランドだ。ちなみに「ギャレット」の日本進出も、ジャパンフリトレー(「マイクポップコーン」で有名)の社長がアメリカで口にした感動からアテンドしたものだという。現在のグルメポップコーンブームは、それぞれの経営者がそれぞれ海外で受けたインパクトを国内に持ち込み、2013年というタイミングで合致したものといえよう。

 味の評価も高いこれらのポップコーンだが、急激な出店数の増加から来る「飽き」も心配され、各店の独自性が今後の展開の鍵となるだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 1年間に、国民が医療機関などで、保険診療に要した費用の総額をいう。厚生労働省によると、2011年度の国民医療費は38兆5850億円(前年度比3.1%増)で、過去最高を更新した。3年連続で1兆円規模で増えており、このままだと13年度には40兆円を突破しそうな勢いだ。1人当たりの医療費も30万1900円と、はじめて30万円台を超えた。

 医療費が右肩上がりなのは、「医療技術の高度化と高齢化」が進んでいるためだ。診療報酬が高い先端治療薬や検査が普及すれば、その分、医療費は跳ね上がる。また、お年寄りはいくつも病気を抱えているため、高齢者が増えれば医療費が増える。

 国民医療費の内訳は、48.6%が保険料、38.4%が税金、患者負担は12.3%。

 保険診療といいながら、実はその4割が税金でまかなわれているわけだ。そのため医療費の伸びは、国の財政赤字の大きな要因の一つになっている。

 国民医療費の膨張は、2014年4月改定の診療報酬見直し論議に影響を与えるのは間違いない。「国の借金」は1000兆円を突破しており、財務省は「マイナス改定」に持ち込みたい考え。かたや日本医師会は「国民に安心の医療を提供するためにも診療報酬の引き上げは当然」という立場だ。

 ちなみに2012年度の民間病院院長の平均年収は前年度比53万円増の3098万円、勤務医も同43万円増の1590万円。

 ずいぶんともらってらっしゃる。前述したように国民医療費の4割弱が税金であることを考えれば、「医師の年収が増えている中で、公共料金である診療報酬が上がるのは国民の理解が得られない」(財務省幹部)との声に賛同したくなる。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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