「タンブラー」といえば、大きめで寸胴型の容器のことだが、最近ではコーヒーショップで使われるカップのかたちとして認識されているだろう。この器を「弁当箱」にしたランチが話題だ。ブームの火付け役とされるのは、フードコーディネーターの資格を持ち、食に関する仕事も多いモデルの近藤しづか氏。
 前提となったのは、何度でも使えるマイタンブラーを持って、スターバックスなどのカフェでコーヒーを入れてもらうスタイル。このタンブラー、フタがしっかり締まって保温性も高い。ゆえにパスタやカレー、あとから牛乳を加えるシリアルなども持っていくことが可能だ。そして幅をとる従来の弁当箱に比べると、女性のバッグにもおさまりがよい。メディアで弁当レシピが紹介される場合には、「おかずの層がわかる」ように透明なタンブラーが使われるが、実際は外側のデザインも豊富。女性にとっては、器のかわいらしさとともに、他人から弁当の中身がわからないようにできることもメリットである。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 金融政策の一つ。政府が物価上昇率を目標に掲げ、中央銀行(日本の場合は日本銀行)にその達成を求めるものだ。いま注目を集めているのは、11月に自民党の安倍晋三総裁がこう言及したからだ。
 「建設国債をいずれは日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出て行く。景気にはいい影響がある」
 安倍総裁としては、日銀が建設国債を買って市場に出回るお金を増やすことで、物価目標を達成しようという算段。ちなみに自民党は2012年衆院選の政権公約で、2%の物価目標を設定。2012年度の建設国債発行額は5.9兆円である。
 そもそも財政法は日銀の国債引き受けを原則禁じている。戦前の反省があるためだ。
 1932(昭和7)年、世界恐慌からの脱出のため、日銀に国債を引き受けさせた。その結果、軍事費など、歳出の膨張に歯止めがかからなくなり深刻なインフレを招いた。
 安倍総裁は、日銀に直接、国債を引き受けさせるのではなく、通常の金融調節手法である「買いオペレーション」での引き受けだと説明している。だが、買いオペであるにしても引き受けは引き受け。友党の公明党からも「日銀が引き受けるのは慎むべきだ。建設国債も国債なので一定のルールを保つ必要がある」とクギを刺す声があがっている。
 これに対し、安倍総裁は意気軒高。前述の発言を市場が好感し、株高、円安に振れたからだ。現在の白川方明(まさあき)日銀総裁は来年4月に任期切れを迎えるが、安倍総裁は後任について、「インフレ目標に賛成してくれる人を、政権をとったら選びたい」と日銀にプレッシャーをかけている。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 こんにゃくのこと。材料の芋は霜が降りる時期が一番の収穫期で、地中から球茎(芋)を掘り起こして収穫する。元来、こんにゃくはこの生芋をすりつぶしてつくっていた。現代は製粉された芋の粉に凝固剤を加えて練り、それをゆでてつくっている。
 鍋(なべ)料理に欠かせない糸こんにゃくは、関東で食べると白く、白滝(しらたき)という上品な名前がある。関西では当たり前の黒い糸こんにゃくは、昔風にわざわざ海草を加え、色づけしている。鍋の種としてもいいが、水溶性食物繊維グルコマンナンに富む食材として生活習慣病の予防にも効果がある。
 12月8日は西京区嵐山の法輪寺などで、おこんにゃを使った針供養が行なわれる日である。伝承によると、12月8日は「お針」(針仕事)を休み、1年間に溜(た)まった折れ針をおこんにゃに刺し、神仏にお灯明(とうみょう)をあげて針をねぎらう日である。昔の京都では、針を刺したおこんにゃを素焼きの器に載せ、川に流していたという。土台におこんにゃを使う理由を聞いてみると、折れ針への思いやりだという。針は硬いものを縫って折れたわけだから、柔らかいものに刺して労をねぎらっているのだとか。
 現代は針供養が終わると、おこんにゃをいただく。食べ方に特別な決まりはない。こんにゃくは、ひと煮立ちさせて臭みをとり、だしで炊いたり、味噌を塗って田楽にしたり。炊くときは、まず角切りにし、鰹(かつお)だし、砂糖、酒、淡口(うすくち)しょうゆで味を付け、輪切りにした鷹(たか)の爪を鍋に入れて辛みを加える。炊き上がったら、盛りつけには削り節を振りかけていただくとおいしい。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 建築家・作家・絵描き。34歳。『週刊現代』(12/8号)によると、いまの政府には期待できないと、2011年5月に「独立国家」を熊本につくり、自ら総理大臣に就任した。
 建国のきっかけは福島第一原発の事故。危険があるのに正確な情報を教えない、国民を守らない政府を見て、これは政府ではないと思い、生存権に特化した国と政府を作ってしまったのだ。
 「原発事故への対応を見て腸(はらわた)が煮えたぎったけど、不満は以前からあった。月給18万円の人がワンルームに住んで8万円も家賃を払うなんて異常。金のないやつは住む場所がなくてもいい、って話でしょう。(略)もはや政府ではないと思った。だから、日本は無政府状態なんです。でも政府がないのはまずいから、自分が国を建てて、その国の内閣総理大臣になるしかないと」(坂口)
 彼が目指しているのは土地と住宅からの解放。早稲田大学時代建築学科に籍を置き、路上生活者たちの調査をしてみたら、彼らの中にはホームレスではなく、合法的に家を持っている人間がいた。調べてみると、係争の結果、誰も所有していない土地や、国と都、どちらが所有権を持つのか決まらずに放置されている土地が都内にあることもわかってきた。
 彼らには段ボールハウスは寝室に過ぎない。図書館が本棚、公園は水場、スーパーは冷蔵庫。都市空間のすべてを自分の家と捉える発想があることに気づく。
 それをヒントに自分でモバイルハウスを作る。ベニヤ板だけで作った三畳間だけの小さな家だが、リヤカーの車輪がついているのがミソで、これだけで車両扱いになる。建築基準法上の「家」ではないから固定資産税はかからないし、建てるのに免許もいらない。
 初期投資に2万~3万円はかかるが家賃はゼロ。井戸水を使い、自家発電を行なえば、水道光熱費もゼロだ。
 使われていない土地を無償で借りてモバイルハウスを並べ、0円で泊まれる避難場所を用意し、福島の子どもたちや東日本からの避難者を受け入れている。
 坂口はツイッターのフォロワーを新政府の国民と定義していて、現時点で3万2000人超の国民がいる。東京ミッドタウンにあるフリースペースの使用権を無償で譲り受け、そこを国会議事堂にするという。  
 妻と4歳の子どもを持ち、収入は原稿料とドローイング(絵)の販売、それにカンパ。
 坂口は『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書)でこういっている。
 「35年ローンをほとんど強要するような労働環境は、まるで奴隷制度である。その土地に縛られ、身動きが取れなくなる。それでも働かないと借金を返せない。死の灰がどれだけ積もっているとわかっていても、生活費、ローンを返すためには仕事をやめることができない。そんな馬鹿な話があるだろうか。生きるという行為を勘違いしている」
 おもしろい発想をする、実に痛快な若者が出てきたものだ。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 日本人が長生きなのは「魚を食べる文化だから」ということは、過去のデータから異論がないようだ。ところが昨今、「魚離れ」が進んでいるという。2006年に肉類と魚介類の摂取量が初めて逆転。2009、2010年とますます肉類との差が広がった。「ヘルシーな和食」の根幹を揺るがす状況に、2012年水産庁が打ち出したのが、官民一体となって水産物の消費拡大を促そうとする「魚の国のしあわせ」プロジェクト。その一環として、「ファストフィッシュ」なるブランドの選定が行なわれている。
 選ばれる基準のキーワードは「手軽」と「気軽」。中骨を抜いた、もしくは骨ごと食べられる魚や、温めるだけのレトルト感覚の加工品など。いずれも、料理をする際の処理が面倒、というイメージを払拭するような商品や食べ方である。初回の選定品目は8月から店頭に並び、なかなか好調。これを受けて企業の新たな選定応募も殺到している。魚をさばく家庭の文化も愛おしいものだが、まずは魚離れを食い止める活発な動きに注目したい。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 社会保障制度改革推進法は、2012年8月に成立した「社会保障・税の一体改革関連法」のひとつで、国民生活の安心よりも財源論に力点を置いて医療や介護、年金などの社会保障制度を見直すことを目的とした法律だ。
 医療も介護も「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」が謳われているが、国の文書で「適正化」といえば削減・縮小を指すことはいうまでもない。基本方針でも、憲法25条で保障している生存権に対する国の責務を放棄することを宣言しており非常に問題の多い法律だ。
 とくに医療分野では、これまでの改革では必ず使われてきた「国民皆保険の堅持」が消え、「医療保険制度に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持する」という言葉に差し替えられている。「原則として」という言葉は例外を作ってもよいことで、国の都合で「この人は保険に入れなくてもよい」ということが行なわれることも否定できない。その結果、国民の健康に寄与してきた国民皆保険が崩壊し、必要な医療が受けられなくなる危険性が指摘されている。
 同年2月、民主党政権が閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱について」では、基本方針としてはむしろ、社会保障の機能強化も打ち出されていた。ところが、自民公明との3党合意で消費税増税法を通すために、バーターとして自民党の「社会保障制度改革基本法案」をほぼ丸のみしたのが今回成立した法律だ。つまり、国民生活を破壊しかねない悪法は、民主党だけではなく、自民党、公明党の3党の合意のもとに成立したことを覚えておきたい。
 ただし、今後の社会保障の具体的な制度作りは、有識者で組織される社会保障制度改革国民会議での話し合いで決められることになっている。そのメンバーには、弱者を見捨てない良識のある審議が行なわれることを期待したい。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 制服に身を包んだ異性は、ときに眩(まぶ)しく見えるもの。「萌(も)える」のはなにもオトコだけではない。いまどきは、ハツラツと働く宅配便のお兄さんに萌える女性が増えているという。2012年8月には『佐川男子』(飛鳥新社)と銘打った書籍も上梓(じょうし)。これは佐川急便のセールスドライバーのファンブックで、「実は存在が気になっていた」女性たちの感覚をうまくすくい上げた。出版イベントでは握手会まで行なったというから、話題作りにせよ、ちょっとしたアイドル扱いである。
 昨今の細マッチョな男性アイドルは「脱いで魅せるための筋肉」になっているところもあるが、いうまでもなく「実用としての筋肉」はポイントが高い。草食系男子全盛の現代、日ごろの業務で鍛えられたたくましいカラダはとりわけ魅力的に映るはずだ。現実的には宅配業者がイケメン揃いとはなかなかいかないだろうが、もし「当たり」の佐川男子が来たら、アイドルよりも身近で頼もしい存在となることだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


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