「manifesto」。語源はラテン語で「はっきり示す」という動詞。「声明文・宣言文」という意味だ。
 日本の国政選挙では、2003年衆院選から導入された。お手本とした英国では「政権獲得後、その政党が取り組む政策の数値目標や達成期限、財源の裏付け、実行手段、プロセスなどを明示した公約集」とされ、有権者の投票の判断材料となる。
 さて今回の衆院選。産経新聞(11月23日朝刊)によれば、各党が「ひそかに『脱マニフェスト』を意識している」という。
 背景にあるのは「民主党の失敗」。前回衆院選で、民主党が掲げなかった消費税増税に野田内閣が踏み切ったことに対し、小沢一郎氏が異を唱えて離党するなど党が大分裂。野党の自民党も「公約違反だ」と批判を展開、民主党は劣勢に立たされた。
 こうした事態を受け、自民党の安倍晋三総裁は、「私たちの公約はマニフェストではない。『政権公約』だ。民主党政権ができて、マニフェストという言葉はもう使うことができなくなった」と言い切った。
 今回、各党が打ち出したマニフェスト(政権公約)を読むと、具体的な数値目標、達成期限、財源、実行体制などの明示が少なく、「実現を目指します」とか「推進をはかります」といった曖昧(あいまい)な表現が目立つ。従来の選挙公約に逆戻りした感が否めない。残念である。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 すこし甘辛く炊いた椎茸(しいたけ)と干瓢(かんぴょう)、たれを付けて焼いた穴子を刻み、寿司飯(すしめし)と混ぜ合わせ、そのうえに錦糸卵をたっぷりとかけた状態で蒸し上げた、ちらし風の熱々の寿司。仕上げに、錦糸卵のうえに海老(えび)、銀杏(ぎんなん)、煮物、紅しょうがなどを盛りつける。ぬく寿司やぬくめ寿司などともいう。関西発祥で、山陰地方にも見られる郷土料理である。
 京都のおすし屋さんの蒸し寿司は冬の風物詩の一つである。11月下旬になると、季節限定で提供し始める。鍋のうえに蒸籠(せいろ)を積み上げ、ぽうぽうと湯気を立ちのぼらせながら蒸す様子が店先にみられ、寿司飯を蒸した独特の酸い香りがあちこちに漂う。蒸し上げたばかりをふぅふぅと吹きながら、熱々を食べるのがうまいのである。
 京都に暮らす人は蒸し寿司好きが本当に多い。ふつうの「ばら寿司」(ちらし寿司のこと)の残り物を食べるとき、それも蒸して温めてから食べるのが当たり前。蒸し寿司が寒いときの食事として、いかに愛好されてきたのかがよくわかる。


焼き穴子、タケノコやシイタケの煮物などを混ぜ合わせた寿司飯に錦糸卵をたっぷりかけた蒸し寿司(寿司・音羽、京都市中京区)


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 俳優(44歳)。『踊る大捜査線』シリーズの主演を務め、2003年公開の映画2作目では日本映画歴代1位(アニメを除く)、174億円の興行収入を叩き出している。今年9月に公開された『踊る大捜査線 THE FINAL』も興行収入43億円を突破した。
 だが、私生活をまったく見せないことでも有名。2010年8月にモデルで美容研究家の野田舞衣子さんと電撃結婚したが、親しい友人にも知らせず、結婚生活もベールに包まれている。
 その織田が米西海岸サンフランシスコの有名なゲイタウンに4棟ものアパートを所有していると、『週刊文春』(11/29号、以下『文春』)が報じている。
 「ゲイタウンというと、いわゆる『ゲイ・バー』のような店が並んでいる日本の新宿二丁目のようなイメージを持つかもしれないが、カストロストリートは、どちらかというと恵比寿や表参道のようなおしゃれな街にゲイ用のグッズショップなどが混在している。(中略)小誌記者が取材で訪れた際には、そのたもとの広場には、なんと、一糸まとわぬ全裸の男たちがたむろしていた。思わず目を疑ったが、この街では誰も驚かないし、眉をひそめる人もいない。日光浴なのか、一種のアピールなのか、定かではないが、ゲイの彼らは全裸にスニーカーという身なりで、新聞を読んだり、お茶を飲んだり、談笑したりして、“普段の生活”を楽しんでいるようだった」(『文春』)
 この街に織田はたびたび現れ、スーパーマーケットで買い物をしたり、カフェで白人男性とお茶をしている姿が目撃されているという。
 『文春』が現地で取材してみると、織田はそこに4棟もの高級アパートメントを購入、所有しているというのである。
 登記情報などによると、1997年10月から2008年にかけて購入していて、当時の為替レートで計算すると、総額8億1850万円が投じられていると書いている。
 そのいずれもが建築されてから100年も経っている年代物ばかりだから、不動産投機目的ではなく、相当なこだわりをもって織田が購入したことがわかる。
 その一つ、ハイド・ストリートの4階建て14ユニット(戸)のアパートは、ノブヒルという小高い丘にある高級住宅街の一角にあり、白とグレーのツートンカラーの外壁で、ロビーから扇形に階段が拡がり、赤い花柄の絨毯とエレガントな装飾が目をひくと『文春』は書いている。
 地元不動産業者は、こうした物件はゲイの人たちが好みそうなものだと語っている。
 私生活を見せない俳優としては高倉健が知られているが、昔、彼にもホモではないかという噂が流れたことがあった。織田裕二ファンには気になる『文春』の記事であろう。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 奥様がめでたくご懐妊。しかしいまどきの市町村、とくに首都圏では産院の確保もままならない。また産褥期(さんじょくき=出産後、母体が回復するまでの期間)のことを考えると、仕事で忙しいパパ以外の手が必要になりそうだ。必然的に老父母の力を借りることとなり、「里帰り出産」が多くなるわけである。これに対して、なんとか自宅の生活圏で出産しようという動きが「マイタウン出産」だ。この考え方は、一つの出産スタイルを示すだけでなく、夫や地域社会の役割を見直すといった意味も含まれる。
 里帰り出産には、子育ての大切なスタート時に不在だった父親が、わが子と積極的に向き合うタイミングを逸するなどのマイナス面もある。産前・産後を夫婦と地域の力でクリアすることのメリットは存外に大きい。とはいえ、育児休暇などのシステムもまだ未成熟で、そもそも出産をめぐる選択の幅があまりにかぎられている。少子化傾向を脱却するためにも、行政をあげて状況の改善に取り組むことが望まれる。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 はじめて労働者派遣法が施行されたのは1986年。法律ができた当初は、通訳や秘書など専門的な業務にかぎって認められた派遣労働だったが、経済界の求めに応じて対象業務は拡大され、1999年に原則的に自由化される。さらに2003年の改正では派遣期間が1年から3年に延長され、それまで規制されていた製造業派遣や仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣まで許可され、雇用側に都合のよい法律に変えられていった。
 労働基準法では労働者の生活を守るために安易な解雇を禁じており、正規雇用の労働者は「企業の業績が悪いから」などの理由では解雇できない。しかし、そうした法律で守られない派遣労働者が増えたことで、リーマンショック時には企業の一方的な都合で大量に派遣切りが行なわれ、2008~2009年の「年越し派遣村」に象徴される社会問題が起こる。
 労働者を使い捨てにする企業の横暴に歯止めをかけるために、見直しが検討されていたのが今回の労働者派遣法の改正だ。当初は製造業派遣や登録型派遣の原則禁止を求める厳しい内容となっていたが、東日本大震災などを理由に経済界の巻き返しにあい、この条文が削除された改正案が、2012年3月に成立。10月1日に施行されたが、以前の法律と変わったのは、「30日以内の日雇い派遣の禁止」「派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(マージン率)などの開示」「偽装請負などの違法派遣を行なった企業への対処」などで、当初の法律案からは大幅に後退した骨抜きの内容となっている。
 近年、生活保護受給世帯のなかで、働く能力があるのに失業によって生活が困窮した現役世代が増えている背景には、こうした労働法の不備があることも見逃せない。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 鍼灸(しんきゅう)がお年寄り向けの療法、という認識は古くなりつつあるようだ。お灸が発する熱を根性で我慢するような「こわい」イメージを払拭(ふっしょく)するため、最近市販されているお灸はデザインもかわいらしい。新たな支持層は20代から30代の女性。このお灸好きな女子を名づけて「お灸女子」という。便秘、生理痛、冷え症といった女性ならではの悩みだけでなく、美容面における効果も期待されている。自宅でゆったりとお灸を楽しむというスタイルは、アロマテラピーがブームをこえて普及していった過程と同様の感もある。
 こうしたブームを受けて、若い世代が入りやすい鍼灸院も増えている。お灸は正しいツボを捉えるのにコツがいるとされ、最初は体の症状に合わせて専門のアドバイスを受けるのがいいようだ。業界大手が銀座に設けた「せんねん灸 お灸ルーム」では、治療に加えてお灸教室も開いているが、予約が先の月まで埋まってしまうほど盛況だという。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 景気低迷や産業構造の変化などで余剰人員を抱える企業に対し、政府が助成する制度のことをいう。企業に対し、従業員の「解雇」ではなく、「休業」「出向」「教育訓練」で雇用を維持してもらうことが、この制度の目的だ。要は失業予防策。助成金は休業手当や賃金の一部などに充てられる。
 同助成金を巡っては、2008年のリーマンショックを受け、政府はその支給要件を緩和した経緯がある。それを、10月からほぼもとの要件に戻した。例えば、対象企業を「過去3か月間に、生産量・売上高がその直前の3か月または前年同期と比べて5%以上減少」に限っていたのを「前年同期と比べ10%以上減少」といった具合だ。元に戻した理由について厚生労働省は「経済状況の回復」を挙げている。
 確かに助成対象は2009年7月の252万人が12年9月には31万人まで減少した。
 しかし、である。ギリシャ危機に端を発した債務危機は世界中に波及し、日本もその渦に呑み込まれそうな気配だ。パナソニック、シャープなどの名門企業も多額の決算赤字を抱え青息吐息だ。
 一方で、政府は11月16日発表した11月の月例経済報告で、景気の基調判断を4か月連続で下方修正した。雇用環境や個人消費は悪化するということだ。この局面での雇用調整助成金の支給要件の引き上げについて首をかしげる向きも少なくない。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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