「若い世代が消費をしないこと」は、昨今のビジネスにとって悩みのタネ。2009年に上梓された、故・山岡拓(やまおか・たく)氏の著書『欲しがらない若者たち』(日本経済新聞出版社)では、クルマやブランド品などに興味を持たなくなった若者像を解説している。その内容が「WEB本の通信社」で紹介され、記事が「2ちゃんねる」のスレッドで語られた。さまざまな意見の書き込みの中に登場したのが、「ゆとり世代」の次世代ということで「さとり世代」という言葉。物欲に左右されない姿を「悟っている」とはシニカルなネーミングだ(2ちゃんねるはネット社会を越えて、あらゆるジャンルの「新語」の発信源でもある)。
実際に「悟っている」こととは、かつての若者世代と比べてそもそも自由に使えるお金が少ない「現実」であろう。だから、ネットで商品・サービスの価格を比較したり、ユーザーの評判を確認したりすることで、極力「失敗しないようにする」。高い買い物をしないのではなく、つねに警戒しているのだ。そうした性向は消費以外の生活習慣にも現れ、「失敗しないように」恋愛や仕事などにも奥手らしい。大事なのは結果であり、昔から言われる「失敗したとしてもそこにいたるまでのプロセスが重要」などと、「ご立派」な考えにはいたらないわけである。上の世代は説教の一つでもしたくなるだろうが、自分が若者だったときの余裕や楽観がいまは持てないことも理解しておく必要がある。厳しい現代の社会で、臆病というだけで片付けられないリアルな若者の感覚がそこにあるのだ。