「クリスマスまでに彼氏をつくって、イブはそのカレと一緒にすごしたい!」という女子の切なる願いから、ときにハードルを大幅に下げてまで「恋人」と認定される急造彼氏のこと。また、クリカレやクリカノづくりのための、年末時期の合コンラッシュなどを「クリ活」(「クリカレ活動」「クリカノ活動」の略)と呼ぶ。急造ゆえ、年始を過ぎたあたりから熱はじわじわと冷めはじめ、ヴァレンタインデーあたりには関係が自然消滅しているのが一般的。

 昨今は、女子と2時間以上二人っきりでいると疲れてしまう持久力のない草食系男子が激増中な背景もあってか、クリカノ活動はクリカレ活動ほど活発には行なわれていないとも聞く。

 こういったクリスマスにおける女子供給過多現象は、半年くらい前からオータニやらオークラやら赤プリやらのそれなりにグレードの高い部屋を予約して、当日は花束持参で割高の限定メニューフルコースディナーを食べながらティファニーのオープンハートをプレゼントして、ホテルに戻ったらシャンパン開けて飲み直してから、ようやくイッパツ……と、クリスマスイブ一晩で女子に20万円近くを費やしていたバブル紳士からすれば、とても信じられないようだ。


 

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 北野天満宮(上京区)では、主祭神・菅原道真公の誕生日6月25日と、命日 2月25日ゆかりの毎月25日をご縁日とし、「天神さん」と呼んでいる。特に12月25日に行なわれる祭礼は、昔から「終い天神」と呼ばれ、毎年十数万人が関西一円から訪れ、参拝者には正月の祝い箸やお屠蘇(とそ)などが授与されている。

 毎月25日の通常の「市」は西陣織産地のご当地らしく、きものや反物、裂(きれ)や古道具などがたくさん売られている。「終い天神」の日は、参道には千数百もの屋台が並び、参拝客でごった返している。押し迫った時期の「市」だけに、葉ボタンや福寿草などを並べる植木店、〆飾りや新巻鮭などの正月用品や傷みにくい土つきの里いもなどを売る屋台が勢揃いする。

 また、正月準備を始める事始め(12月13日)から終い天神のころまでは、境内でこしらえた梅干し「大福梅(おおふくうめ)」が授与される。京都ではこの梅を授かり、元旦の朝の祝い膳(ぜん)で、結び昆布と一緒にした大福茶(おおぶくちゃ)を飲むことを習わしにしている人が多い。この初茶の風習は、951(天暦5)年の村上天皇の疫病の平癒に由来し、邪気を払い、生気に満ちた健康な一年間を過ごすことを祈るものである。

 新年最初のご縁日は1月25日。この祭礼は「初天神」という。


賑やかな終い天神の様子。



大福は王服が転訛しことば。元旦の朝、お茶や白湯に入れ、新年最初のお茶として飲む。梅は北野天満宮の梅園で6月下旬に採取され、真夏に天日干しされたありがたいもの。貯蔵前に塩がふってある。


京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊ポスト』(12/20・27号、以下『ポスト』)によれば、テレビの視聴率が軒並み低下し、CM料金も大幅ディスカウントを余儀なくされているという。

 『ポスト』独自の調査によれば、単独司会者の長期間生放送のギネス記録を更新し、最高視聴率27%台を記録した『笑っていいとも!』(フジテレビ系)はこの10年で11.1%から6.0%に落ち、17年間続いてきたTBS系の『はなまるマーケット』も6.0%から3.4%にほぼ半減。

 TBS系の『さんまのSUPERからくりTV』も最盛期には20%近い視聴率を誇っていたのに、いまは10%を割り込んでいる。『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)も10年前は19.9%あったものが8.4%という具合に、かつてのテレビの主役たちの番組が低視聴率で喘いでいるのである。

 視聴率低下は大御所たちの高齢化や番組のマンネリ化が原因の一つではあるが、より深刻なのは「日本人がテレビを見なくなった」(『ポスト』)ことであろう。「総世帯視聴率」が、ゴールデンの時間帯で見ると、97年に71.2%あったものが63.5%にまで大きく下がってきているのだ。

 BSやWOWOWなど選択肢が格段に増えたことが地上波を見る人間を減らしていることも事実だが、テレビという媒体そのものが、ほかのコンテンツに浸食されてきていることが大きいと、あるテレビ局員がため息をつきながらこう語る。

 「子供がテレビに向かうのは録画したアニメを見たりゲームをする時だけ。妻ももっぱら映画やお気に入りの歌手のライブをDVDで見てばかり。テレビ局員の家なのに、誰も今まさに放送されているテレビ番組を見てくれない」

 さらにインターネット機能を搭載した「スマートテレビ」の普及で、大画面テレビはネットの動画やオンデマンド放送を楽しむためのものになりつつある。

 『ポスト』は『8時だョ!全員集合』『オレたちひょうきん族』『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』などのように、低俗と批判されながらも、多くの視聴者がテレビ局を支持し、その応援の声が制作者の熱意を支える時代があったが、今はPTAや一般視聴者からのクレームにテレビ局側が敏感に反応して自主規制したり、BPO(放送倫理・番組向上機構)にチェックされるために制作現場が萎縮しているから、昔のように野放図な番組づくりができないことも視聴率低下の要因だと指摘している。

 私は毎朝食後、テレビ欄を見て録画する番組のチェックを日課にしているが、その多くはBSで、地上波で録画しようと思う番組はほとんどない。絶景を映しているのに、お笑いタレントのしょうもないバカ発言を挿入させる地上波より、NHK-BSの『世界ふれあい街歩き』のほうが景色の楽しさを満喫できる。

 同局でやっている俳優・火野正平が自転車で全国を回るというだけの『にっぽん縦断 こころ旅』やBS-TBSの『吉田類の酒場放浪記』はお手軽なつくりだが、地上波では発想できない秀逸な番組である。

 昔、TBSのテレビマン3人が書いた『お前はただの現在にすぎない テレビになにが可能か』(朝日文庫)という名著がある。だが録画やオンデマンド視聴が主流になってくれば、テレビは「現在」さえも伝えられなくなってくるのかもしれない。

 もう一つ、私がテレビに危惧を抱いているのは、報道番組がほとんどなくなってきていることである。先日成立した特定秘密保護法についても、明らかな危惧を表明したのは、私が知る限りテレビ朝日の『報道ステーション』とTBSの『報道特集』などごく少数であった。なかでもNHKの報道姿勢は、この法案の持つ危険性を掘り下げず、まるで他人事のような報じ方であった。

 民放は総務省に許認可権を握られ、NHKは予算を国会で承認してもらわなければならないために「お上」にからきしだらしがない。だが、それでも自局で報道番組を持っていることで、権力側への「威嚇」にはなるはずだ。

 それすら捨て去った結果、NHKの会長人事に安倍晋三総理が介入し、中立報道を心がけていた松本正之会長が辞任に追い込まれ、安倍総理の意に沿う会長が選ばれることになってしまった。

 時の権力が自分の意のままに操るため、テレビ局の人事に介入するなど許すことのできない暴挙だが、テレビ内部からこうしたことへの批判の声は上がらない。

 楽しくもなく報道機関としての役割も果たさないテレビから視聴者が離れていくのは、当然の帰結なのである。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 今週は『週刊ポスト』が休み(先週合併号)だし、『週刊文春』、『週刊新潮』ともに見るべきものなし。『週刊朝日』さらになし。そこで今週に限り孤軍奮闘している『週刊現代』(12/28号)の記事3本を取り上げる。

「安倍総理、気分はもう戦争」
 赤木智弘氏の「『丸山眞男』をひっぱたきたい31歳フリーター。希望は、戦争。」(『論座』07/1月号)からのパクリのようなタイトルだが、なかなか鋭い安倍批判になっている。

「金正恩 頭のネジがぶっ飛んだ」
 そうとしか思えない、今回の粛正騒動である。

「国民的大議論 原発のゴミ 東京に『処分場』を」
 かつて広瀬隆氏に『東京に原発を! 』(集英社文庫)というのがあったが、安倍首相は福島の原発20キロ圏内に処分場(中間貯蔵施設)をつくろうと画策している。それなら東京につくったらどうか。永田町周辺はどうかね、安倍さん?

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 俗に「ガシャポン」「ガチャガチャ」などと呼ばれるカプセルトイ。一般に1970年代に日本に広まったとされ、現在も子どもたちに安定した支持を受けているが、近年は大人の購入も増えているという。社会人となって自由になったお金を、比較的安価な玩具などのコレクションに費やす。これは、不景気で高級なものに手を出せない昨今ならではの消費行動といえるだろう(清涼飲料水の販促でボトルにフィギュアを付けたりするのも、この流れだ)。

 「大人ガチャ」と呼ばれる、最初から子ども以外を対象にしたカプセルトイは、内容もアニメなどの関連商品ではなくて「ユニーク雑貨」の印象が強いものである。この分野で気を吐くメーカーが「奇譚クラブ」。コップに腰掛ける謎のOLさん『コップのフチ子』をはじめ、『江頭2:50ストラップ』『シリーズ生きる 土下座ストラップ』……。「稚気にあふれている」が、「子どもなら買わない(ユーモアがわからない)」、ビミョーな玩具のラインナップがウケている。

 いまカプセルトイの自販機は、おもちゃ屋だけでなく、東急ハンズやヴィレッジヴァンガードなど、大人を意識した販路が増えている。個性的なものづくりを大事にする日本らしい文化といえるだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 この秋、阪急阪神ホテルズが運営する8ホテルで発覚した誤表示を皮切りに、全国のホテルやデパート、レストランなどに広がっていった食品偽装問題。

 価格の安いバナメイエビを芝エビと表示したり、市販のストレートジュースをフレッシュジュースと偽って客に提供していたなど、次々と偽装が明らかになる中で出てきたのが成型牛肉の問題だ。肉質の固い赤身の外国産牛肉などを加工して、霜降り和牛などと偽って提供していたのだ。

 人工的に霜降り牛肉を作る方法はいくつかあるが、そのひとつがインジェクション加工処理だ。太い注射針を束ねた機械で、乳化剤を使って液体状にした牛脂を注入していくと、赤身の肉があっという間に霜降り牛肉と見まがうものに変身する。この方法だと筋肉に沿って牛脂が入るため、本物の霜降り牛そっくりの見た目にできあがるのだ。

 この時に使われる牛脂は、香りと旨味の強い和牛のものなので、多くの人が「和牛の霜降り肉」だと思い込むのも無理はない。また、肉質を柔らかくし、旨味を引き出すために、同時に軟化剤も注入されるので、実際に脂肪注入肉を食べた人に感想を聞くと、「柔らかくて、美味しい」と感じたという。

 霜降り牛肉を加工するための牛脂、乳化剤、軟化剤などは食べても身体に害を及ぼすものではなく、JAS法に基づいた使用が認められているが、問題は加工を施していることを消費者に伝えないまま外食産業などで使われるケース。

 たんに「ステーキ」「霜降りステーキ」などと表示するのは違法で、「成型肉使用」と明記することが求められている。また、「やわらかビーフ」「やわらか加工」など曖昧な記載は、消費者に誤解を与える可能性があるため、景品表示法上認められていない。

 食品偽装問題をなくすには、業者が正しい表示を行なうのはもちろん必要なことだが、表示を徹底すれば問題が解決するわけではないだろう。

 食品偽装がはびこる背景には、食の生産現場とそれを食べる消費者との間があまりにも離れすぎて、顔の見える関係を築いてこなかったことがあるのではないだろうか。私たちはもっと、自分が口にするものについて、「いつ」「どこで」「誰」によって作られたものなのかというトレーサビリティに関心を払う必要がある。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 歌手・バンドといった当たり前の「型」から解き放たれ、いま、音楽はある意味で「自由」になっている。2004年にメジャーデビューした「Sound Horizon(サウンドホライズン)」は、ミュージシャンのRevo(レヴォ)が主宰するプロジェクトで、歌い手などのメンバーが楽曲ごとに集められる。公式ホームページによれば、その作風は「物語音楽」。アニメさながらの幻想的なストーリーを、音楽によって展開する活動を行なっている。

 この「Sound Horizon」が、ほかのゲームやアニメとコラボするときには「Linked Horizon(リンクトホライズン)」という名前を用いる。別世界と「リンクする」わけだ。知名度を上げたきっかけは、なんといってもアニメ『進撃の巨人』の主題歌『紅蓮(ぐれん)の弓矢』(後期テーマなどとともに、シングル『自由への進撃』に収録)だろう。それまで『進撃の巨人』に興味のなかったライトな層まで引き込む「神曲」で、ネット上でも熱く支持された。カラオケのJOYSOUNDでもいち早く対応、テレビのオープニング映像をそのまま(歌詞を入れず)配信した。一連の盛り上がりは、社会現象的に朝のワイドショーでも紹介されたほどだ。

 そして大晦日のNHK『紅白歌合戦』、Linked Horizonは2013年の「アニソン(アニメソング)」を代表して参戦することになる。一般にはまだ耳慣れないアーティスト名に「いったい誰?」という声もあったそうだが、CDが売れないと言われて久しい現代、アニソンのセールス力はまさに「進撃」の度合いを増している。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 秋の臨時国会で「タクシー適正化・活性化改正法」が成立した。都市部などでタクシーが多すぎる地域を「特定地域」に指定し、タクシー会社に減車を義務づけるもので、従わない場合は、国が事業者などに勧告や命令を出せる。タクシー業界の過当競争を是正するのが狙いだ。

 タクシーを巡っては、小泉政権時代の2002年に新規参入が原則自由化され、台数制限も撤廃された。その結果、大都市を中心に供給台数が増えて、運転手1人当たりの売り上げが減少、歩合制の賃金も減った。タクシー運転手の平均年収は、長時間労働にもかかわらず300万円に満たない。

 ただ、この規制強化は10月の所信表明演説で、「今後3年間を、税制・予算・金融・規制制度改革といったあらゆる施策を総動員する『集中投資促進期間』にあてる」と言い切った安倍首相の政策と180度異なる。規制強化はタクシー業界や労組の陳情を受けてのものだろう。「行政が規制の網をかぶせて既得権益を守る」という従来型のパターンが息を吹き返した形だ。

 かつては深夜の繁華街でタクシーを拾うのに一苦労したものだが、最近はそんなことはなくなった。利用者が不便にならないよう、法律の運用の際は十分配慮してほしいものだ。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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