京都の庭園や一般のお庭で、不思議な形態をした杉の木をよく見かける。太い一株からのびる幹は途中で、水平に手を広げるような形状をしており、さらにその台のような幹から別の細い杉が、3本から5本ほど生えている。「北山台杉」という杉の園芸種である。「北山台杉」は、今でこそ園芸種ばかりになっているが、そもそも数寄屋造の垂木(たるき)や磨丸太(みがきまるた)として使われてきた「北山杉」の原種である。現代では生産効率の優れた「一樹一幹」と呼ばれる林業が中心であるが、昔は「北山台杉」に見られるような、一つの大樹の上で数十本もの杉材を育む「台杉仕立て」という林業が中心だったのである。

 「北山杉」は、なぜこのような奇妙な形態に生長したのだろうか。降雪の多い地域には、「伏状台杉(ふくじょうだいすぎ)」という独特の杉がある。「伏状」とは、上向きにのびるはずの枝が、雪などに押さえつけられてしまって横方向に広がり、場合によって枝が地面に触れ、そこから根を張って大樹となっていることを意味している。そして、横に広がった枝のうえに新しい種子が芽生えて生長し、それを繰り返すことによって「伏状台杉」のような特異な姿が現れたのである。

 1962(昭和37)年に刊行された小説『古都』(川端康成著、新潮文庫)では、主人公の佐田千恵子が「北山杉のまっすぐに、きれいに立ってるのをながめると、うちは心が、すうっとする」と語っている。『古都』は、なにも知らず生き別れとなった双子の姉妹が、異なる環境で過ごし、再会する物語。小説では「じつに真直ぐにそろって立った杉」などと、綺麗に立ち揃った様子が繰り返し表現されており、その文章からは、一樹一幹で育つ北山杉の様子が思い浮かぶ。しかし、同書巻末の山本健吉(評論家)が寄せた解説を見ると、「一本の台木から何本も脇芽を垂直に成育させ、台木は何本もの蝋燭(ろうそく)を立てる燭台のような形だ」と述べられている。『古都』で取り上げられた当時の杉林は、どうやら「北山台杉」であったようだ。

 京都市北部の山中には、北山台杉のもとになった伏状台杉が群生している場所がいくつか残されている。その旧京北町(けいほくちょう)を中心とした山間地域は、千数百年前に平安京造営を下支えした林業の地であり、御杣(みそま)御料の営みが今日に受け継がれている貴重な場所である。切り取られた材木のほとんどは、筏に組まれ、上桂川から嵐山へと流れ下ったが、峠道を人力で京都へ運び込まれたものも少なくなかった。京都を中心に放射線状にのびる数々の峠道には、いにしえより受け継がれてきた林業の歴史を見守るように、「伏状台杉」の大樹の森が静かに佇んでいる。


京都府南丹市にある京都大学・芦生(あしう)研究林をはじめ、旧京北町の山間部などには、写真の北山台杉をそのまま巨木にしたような、伏状の様式で育った杉などの大樹が見られる。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 私は雑誌屋だから、文章は拙いが、どんなお題でもこなせる自信はあった。だが、今回の茂木敏充には正直困っている

 この政治家にはこれまで一度も関心を持ったこともないし、存在を意識したこともないのだ。Wikipediaによれば、1955年10月7日栃木県足利市に生まれ、東京大学経済学部を卒業してマッキンゼー・アンド・カンパニーに入ったそうだ。

 経済学士の肩書を持ち、1993年の衆議院選挙に日本新党公認で旧栃木2区から出馬し、トップ当選したが、同党が解党したため自民党に入ったという。御年61歳。

 『週刊新潮』(8/17・24号、以下『新潮』)によると、これまで沖縄・北方相を皮切りに、自民党の選挙対策委員長、政調会長を歴任してきた。

 「政府与党に重きを成す」(『新潮』)存在だそうだ。8月3日の内閣改造で、「本人は外相をやりたくて、トランプ以降のホワイトハウスにおける人脈作りに余念がなかった。安倍さんにもそれとなく希望は伝えていたみたいですが、“改造のテーマは経済”と説明を受けた結果、今のポストでやる気満々に」(政治部デスク)なっているそうだ。

 経済再生担当がそのポストだが、以前『週刊文春』が報じた、千葉県の建設会社から都市再生機構(UR)に対する口利きを依頼され、現金をもらったことを認めて辞任した甘利明と同じ大臣職である。何やら「辞任必至」の予感がするのは私だけだろうか。

 安倍政権の第一次、第二次政権で辞任に追い込まれた閣僚は10人にもなる。だが、「任命責任を認めている」安倍本人は辞めていない。

 なかでも、わずかな能力も自覚もなかった「いかがわしいオバハン(稲田朋美のこと=筆者注)を要職につけ、国を危険に晒したのは安倍」(『新潮45』9月号の適菜収(てきな・おさむ)「だからあれほど言ったのに」)なのに、稲田を切って知らん顔である。

 しかし安倍首相は落ち目である。森友・加計学園に対して、思想が同じ、大学時代からの腹心の友というだけで便宜供与していた疑惑だけでなく、緊張する米朝対立のなかで、日本の立場を一切主張せずトランプのポチとして唯々諾々と付き従う姿勢に、多くの日本人がようやく危うさと不信感を感じてきたからだ。

 いくら茂木が、安倍に跪(ひざまず)き生涯忠犬であることを誓っても、親亀こけたらみなこけるのである。

 『新潮』によれば、茂木は首相になるという大望を抱いているそうだが、他人にやさしくない、人望がない、子分がいないという三拍子そろった人間だそうだから、「そんな人物が改造の目玉のひとつ、『人づくり革命』をも担当しているとは悪い冗談でしかない」(『新潮』)

 それにこの茂木大臣、11番目の「辞任有力候補」だと『新潮』が報じている。公職選挙法違反があるというのだ。事務所関係者がこう打ち明けている。

 「茂木の事務所は、5区(編集部注:栃木5区)の有権者に対して『衆議院手帖』を配っています。毎年3000部ほどで、1部600円なので、180万円に相当するものです」

 配っている先は、後援会の幹部が主だが、後援会費を払っていない人がかなり含まれているため、彼らは「無償で手帖の提供を受けている」と認識している。

 『新潮』の取材に後援会長や後援会連合会次長が口々に後援会費はないと言っている。名ばかりの票集めの後援会である。

 以前はカレンダーも配っていたが、さすがに選挙違反だという声が上がって、やめたという。

 1枚80円のうちわを選挙区内の有権者に配っていたことで、法相を辞任した松島みどりのケースがあったから、茂木も「事務所スタッフを集めた全体ミーティングの場で本人が“手帖の領収書は小分けにして計上すること。配布に際しては慎重に行なうこと”と念入りに指示していました」(事務所関係者)

 本人も「違法」と認識していたに違いない。政治資金問題に詳しい上脇博之(かみわき・ひろし)神戸学院大教授は、こう語る。

 「結論から申し上げて、公選法199条の2第1項が公職の候補者に禁じる『寄附行為』に該当し、違法である可能性が高いと言わざるをえません」

 その場合、後援会幹部が後援活動を実際に行なっているかどうかが重要で、後援会費を納めているかどうかも判断材料になるそうだ。

 『新潮』の取材に対して茂木大臣は、党員や後援会や支部の役員に政治活動で手帖を配ることは問題ないと答えたが、後援会費を払っていない人にも配っている事実を指摘されると、「あのー、それはないと思います……手帖は配っていないんですから、もらった人はいないと思います」と突然しどろもどろに。

 3000部も配っているのにと言われ、「いや、配ってないです、そんなに」。松島みどりはうちわで辞めたが、と問い詰められると、「いや、それはあのー、何ていうか、私は少なくとも何ていうか、そういう配布物については、えー、管理しておりませんので、わかりません」と、政治家得意の逃げの一手。

 国会開会中なら完全にアウトだろうが、安倍首相が加計学園問題で追及されることに怯え、野党が強く求めても臨時国会を9月末まで開かず逃げまくっているから、しばらくはこのままの状態が続くのだろう。

 『新潮』は、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣として入閣した、鈴木俊一(64)にも、五輪ならぬ四輪のガソリン代についての疑惑があると報じている。

 鈴木の資金管理団体「清鈴会」が計上するガソリン代が3年間で約1400万円にもなるという。これは地球を33.8周分となるそうだ。しかも収支報告書の欄には「徴難(ちょうなん)」という言葉が228回も登場する。

 これは支出の証拠を出しがたい事情がある時に使うのだが、領収書のないものを報告書に計上するなんてと、対立陣営の元会計責任者も首をかしげている。

 新閣僚も脛に傷を持った連中が多いようで、不祥事、暴言が続いた前回と同じように、辞任するデージンが続出するはずだ。

 先の茂木大臣は『新潮』発売後、「政党支部の政治活動だから問題はない」とコメントを出し、大手メディアの幹部にも連絡して、「新潮に乗ると誤報になる」と伝えていたと『新潮』(8/31号)が続報している。

 そのため「経済相が公選法(編集部注:公職選挙法)違反報道に反論」(毎日新聞)などという記事が垂れ流された。

 ならばと『新潮』は、まず茂木の人品骨柄を再度、地元の政界関係者に語らせている。

 「豊田真由子議員みたいに、“このハゲーーーーー!”とまでは言わないみたいだけど、秘書に対して“おい、デブこの野郎”とかは普通に言うらしいよ。(中略)ある秘書は我慢できずにキレて、携帯をへし折ってそのまま辞めたと聞いたことがあります。だから茂木事務所の秘書は辞める人がたくさんいて、一時はハローワークで求人を出していたくらいなんです」

 『新潮』は、後援会員から会費をとらず、一般の人にも手帖を配っているではないかと問い詰め、「一般の方には手帖を配っていない」となおも抗弁する茂木に、「それならば事務所にあるはずの手帖を配った人の名簿を出せ」と迫るが、「そういうものはない」と逃げる逃げる。

 だが、先の上脇教授は、「茂木氏の秘書は、手帖を配る際に事務所の名刺を一緒に配る場合もあったということなので、まさに寄附に該当すると言えます」とダメ押しする。

 安倍一強長期政権の驕りと歪みが吹き出している。マッキンゼーでコンサルタントと称し、多国籍企業のお先棒を短時間担いだだけの人間や、NTTで広報担当課長を務めただけの人間が、経済に明るい、メディア戦略の専門家だと過大評価されるのは、永田町以外にあるまい。

 政治家である前に人間としての品格を著しく欠く人間が、なぜこれほど安倍首相の周りに集まったのか。

 それは安倍の本質がカルトであり、安倍が全体主義へと移行させているからだと、先の適菜はこう書いている。

 「現在のわが国でみられる言葉の混乱、事実の軽視、法の破壊、議事録の修正といった現象は、全体主義の兆候である。憲法を理解した形跡がない『幼児』が改憲を唱え、国会で『私は立法府の長』と平然と言い放つ。(中略)
 周辺にはイエスマンが集められ、お友達たちには便宜が図られる。言論は弾圧され、現実に目を背ける連中が『現実を見ろ』と言い、嘘は『事実である』と閣議決定される。全国紙は官邸のリークを垂れ流し、一私人のプライバシーを暴き立て、つるし上げる」

 安倍には、茂木も河野太郎も目に入らないのだ。菅官房長官や麻生副大臣でさえ、いらなくなれば容赦なく首を切る。だが世の東西の独裁者がたどった破滅への道を、間違いなく安倍もたどっている。そうなれば、茂木などという大臣が昔いたことを、国民は覚えていないだろう。考えてみれば今の閣僚たちは「哀れ」だといえるのかもしれない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 雉も鳴かずば撃たれまいに。今井絵理子との不倫で、日本一有名な市議になったために、政治活動費の不正を暴かれ、橋本健、通称ハシケン神戸市議が辞任した。妻にも捨てられ(るであろう)、ただの「サル」でしかなくなった彼を、今井はどうするのだろう。彼女も議員辞職して2人で駆け落ちでもすれば、今井の株は上がるだろうが、芸能界のドロ水を長年飲んできた女にはできはしないだろうな。捨てられた男は哀れである。忘れられた男はもっと哀れだ。

第1位 「『今井絵理子』が溺れる『不倫市議』の怪しい政活費」(『週刊新潮』8/31号)
第2位 「『安倍君、下関へ帰りたまえ』」(『週刊ポスト』9/8号)
第3位 「若狭勝 小池方式で『二大政党制を目指す』」(『アサヒ芸能』8/13号)

 第3位。さて、安倍首相は長い夏休みをとっているが、例年と違ってゴルフ三昧ではないようだ。9月末から始まる国会対策、晩秋にもやるかもしれない「破れかぶれ解散」など、煩悩が多いので、ゴルフどころではないのだろう。
 その一つが、小池都知事と若狭勝(わかさ・まさる)衆院議員が進めようとしている日本ファーストの会(仮称)の動きである。
 若狭は民進党を離党する意向の細野豪志(ごうし)衆院議員らと次々に会って、動向が注目されているが、小池との齟齬も目立つようになってきたという。
 『文春』によれば、若狭が立ち上げた「輝照塾」と小池の「希望の塾」との棲み分けも決まらず、小池が不満を漏らしているそうだ。

 「今の段階で『(新党を=筆者注)年内に立ち上げる』と公言する政治センスのなさに、小池さんは失望している。『若狭さんは喋りすぎなのよ』と呆れています」(小池周辺)

 小池に政治センス云々をいわれるようでは、若狭もたいしたタマではないようだが、彼が『アサヒ芸能』のインタビューに長時間答えている。
 元々政策も何も決まってはいないのだから、たいしたことは話していないが、いくつか紹介しよう。
 女性の議員を増やさなければいけない、少なくとも半分ぐらいにはと言っている。そんなに増やしたら、不倫などの色恋沙汰で大変になりそうだが。
 自分は国政を目指すので、地域政党の都民ファーストとは違うと、なにやら、自分が上と言わんばかりである。
 したがって、地域政党の大阪維新の会から国政政党、日本維新の会を立ち上げた橋下徹のやり方と自分は違うとも言っているから、都政は小池にやってもらって、国政はオレに任せろということだろう。
 そのほか、無駄が多い国会の象徴、衆議院と参議院を統合して一院制にしたほうがいいとも言っている。
 一読して、この男にリーダーシップはないが、リーダーでなければイヤだと駄々をこねるタイプと見た。
 小池も同じようなタイプだし、民進党を議席欲しさに離れた細野や長島昭久も、オレがオレが、のタイプ。すんなり一緒になるとは思えないが、そうなると安倍首相がほっとするだけだし、何とかまとまるいい案はないのだろうか。

 第2位。安倍首相を応援してきた保守派からも、批判の声が高くなってきている
 『ポスト』は保守派の論客である西尾幹二が、これも保守系新聞の産経に安倍批判の論文を載せたことを取り上げた。

 「憲法改正をやるやると言っては出したり引っ込めたりしてきた首相に国民はすでに手抜きと保身、臆病風、闘争心の欠如を見ている。外国人も見ている。それなのに憲法改正は結局、やれそうもないという最近の党内の新たな空気の変化と首相の及び腰は、国民に対する裏切りともいうべき一大問題になり始めている」

 西尾は9月に新著を出す。『保守の真贋―保守の立場から安倍信仰を否定する』(徳間書店)がそれだが、その中ではもっと手厳しい。

 「拉致のこの悲劇を徹底的に繰り返し利用してきた政治家は安倍晋三氏だった。(中略)主役がいい格好したいばかりに舞台にすがり、巧言令色、美辞麗句を並べ、俺がやってみせると言い、いいとこ取りをして自己宣伝し、拉致に政権維持の役割の一端を担わせ、しかし実際にはやらないし、やる気もない。政治家の虚言不実行がそれまで燃え上がっていた国民感情に水をかけ、やる気をなくさせ、運動をつぶしてしまった一例である」
 「ウラが簡単に見抜かれてしまう逃げ腰の小手先戦術は、臆病なこの人の体質からきている」

 西尾は『ポスト』のインタビューに対してこうも話している。

 「彼はそうした保守派の過度な応援に甘え、憲法にしても拉致にしても皇室の皇統問題にしても、保守であればしっかり取り組むべき課題を何もやろうとしなかった。
 5月3日の憲法改正案の発表には決定的に失望しました。戦力の保持を認めない9条2項をそのままにして3項で自衛隊を再定義する。これは明らかに矛盾しています。しかもその改憲すら、やれない状況になりつつある。困難というべき逼迫した軍事情勢にあり、国会でも3分の2という議席を有する今の状況で改憲をあきらめたりすれば、改憲のチャンスは半永久的に失われてしまいます。こんな事態を招いた安倍首相は万死に値する」

 ようやく保守派も安倍首相の本質に気が付いたようだ。遅かったとは思うが、これで安倍を支持しているのは「ネトウヨ」しかいなくなるだろう。否、「ネトウヨ」だっていつ反安倍になるかもしれない。四面楚歌とはこういうことをいうのである。

 今週の第1位は新潮砲。今井絵理子の不倫相手、橋本健神戸市議は『新潮』のおかげで日本一有名な市議になった。この市議に政治活動費(地方議員に対して調査や研究、広報活動に役立てる費用として、自治体が支給する)不正受給疑惑があると『新潮』が報じているのだ。
 なんでも、「ハシケン通信」というチラシを10年から14年度の5年間で、計12回作り、合計で50万部以上印刷して計720万5330円を政治活動費として支払っているそうだ。だが、その印刷業者は橋本の友人の会社で、本業は輸入車販売業者なのだ。橋本は、そこが受けて、印刷は別の下請けに出したと釈明しているが、どうもおかしいと『新潮』はいうのである。
 なぜなら、15年7月に神戸新聞が複数の神戸市議の政活費不正流用疑惑をスクープしたが、その年に、橋本はその会社への発注をやめ、別の業者に出しているのだ。
 この疑惑、あの「号泣議員」野々村竜太郎元兵庫県議の二の舞になるのか? と思ったら、展開は早かった。
 まず、橋本が記者会見を開き、印刷はしていたし、不正はないと言い切った。
 証拠は出すと大見えを切ったが、なんのことはない、肝心の印刷業者が、「神戸市内の印刷業者は24日、代理人弁護士を通じて『実際には印刷の仕事をしていないのに、橋本市議に頼まれて領収書を発行した』と明らかにした」(8月25日付日刊スポーツ)のである。
 そして朝日新聞DIGITAL(8月28日11時44分)で「橋本市議、政活費不正疑惑で辞意 今井氏関連分は返還」と報じられた。

 「神戸市の橋本健市議(37)=自民=が、市政報告の印刷費をめぐり政務活動費約700万円を不正請求した疑惑が浮上し、橋本氏は28日、所属会派を通じて『多大なご迷惑、ご心配をおかけし、心よりお詫(わ)び申し上げます。印刷費についても返金する』とのコメントを出し、議員を辞職する意向を明らかにした。29日にも辞職願を提出するという」

 悪さをするならもっとうまくやれなかったのか。所詮、議員なんぞになるのが間違いだった人間としか思えない。
 今井絵理子も男を見る目がなかったと今頃泣き伏しているかもしれない。そんなタマではないか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 筆者はテレビのクイズ番組で問題作成をする仕事もしているのだが、あるとき、聖徳太子に関するクイズでスタッフから問い合わせが来た。曰く「聖徳太子は実在しないのでは?」。結局、その問題は採用されなかった。

 専門家として文献にあたっていない者が歴史を語る愚かさを承知の上で、状況の流れだけ整理しておきたい。2月、文部科学省は学習指導要領改訂案で、現行の「聖徳太子」を、小学校では「聖徳太子(厩戸王(うまやどのおう))」、中学校では「厩戸王(聖徳太子)」に改めると発表した(ちなみに表記の主従に違いがあるのは、小学校では人物に親しむことに、中学では史実に重きを置くためだ)。この案は国会をも巻き込む議論を呼び、翌3月には早くも撤回されることになる。

 国民的に慣れ親しんだ聖徳太子という名前。変更するといわれて、抵抗を覚えるのはもっともな話だ。しかし、高校の教科書などでは、すでに「厩戸王(聖徳太子)」という呼称が使われている。その理由は明確だ。じつは「聖徳太子」とは後世の呼び名で、存命中は「厩戸王」だったのである。この厩戸王はたしかに実在した人物だ。

 一方で「聖徳太子の偉業」とされる事項の数々については、疑問符がつく。有名な「憲法十七条」「冠位十二階」も、それが厩戸王の事績であることを示した文献が見当たらず、個人の仕事と断定するのは難しい。いわば聖徳太子は、厩戸王にいろんな役人の業績を集約させた呼称という見方ができそうだ。この文脈で「みんなに知られているようなスーパーマン的な聖徳太子はいなかった」と言われれば、それは必ずしも間違いではない。

 歴史の研究が進むにつれ、教科書の記述も変わっていく。いつか小中学校の教科書でも、聖徳太子の表記が消える日は来るのかもしれない。だが、よりよいいまを創るために、先人が積み重ねた偉業それ自体は、決して消えることはない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 9月1日。多くの学校で二学期が始まるこの日は、子どもの自殺が最も多い日でもある。

 内閣府の平成27(2015)年度版「自殺対策白書」によると、1972~2013年の間の18歳以下の自殺者数は合計1万8048人で、日別でみると9月1日がもっとも多い。次に多いのが4月上旬で、学校の長期休業が明けた直後に子どもたちの自殺が増加しているのだ。

 子どもの自殺の原因は、「いじめ」がクローズアップされがちだが、統計をみると、それ以上に多いのが「家族からのしつけ・叱責」「学校生活に伴うもの」など身近な人間関係に起因するものだ。また、中学生になると、学業や進路への悩みも増えている。

 子どもは自殺を考えているほど悩んでいても周囲に兆候を示さず、遺書なども書き残さない傾向が強いという。白書では、子どもが悩みを打ち明けやすい環境を、ふだんから周りの大人たちがつくっていくことが重要だとしている。

 大人から見れば些細なことも、まだ人生の経験が少ない子どもにとっては大きな出来事だということもある。狭い子どもの世界のなかでは親や教師など身近な大人がすべてであり、目に映っていることだけが社会のすべてだ。

 だが、本当の社会は、世界は、もっともっと広い。いろんな人がいるし、いろんな考え方がある。いろんな価値観がある。今見えているものだけが、すべてではないということを、子どもたちには知ってもらいたい。

 世界には飢餓や貧困、戦争など、理不尽で辛いことも多いし、自然災害によって深く傷つくこともある。けれども、反対に人は愛や友情によって救われ、美しく穏やかな自然に癒されることもある。生きていると辛いことも経験するが、生きていることでしか幸福も得られない。

 人生はどこで変わるかわからない。今は灰色にしか見えない毎日が、何かのきっかけで輝く日々に変わるとも限らない。でも、途中で命を絶ってしまったら、輝く日々を経験することは不可能になってしまう。

 だからこそ、今、どんなに辛いことがあっても、まずは生きていてほしいと思う。

 《もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へ行くくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。》

 2年前の8月26日、鎌倉市の図書館司書がつぶやいたこのツイートは多くの人の共感を呼び、10万件以上のリツイート、8万件以上の「いいね」がついている(2017年8月28日現在)。

 死ぬほどつらいなら、学校に行かなくたっていいし、親から逃げ出したっていい。新学期が始まったこの時期、自分に子どもがいてもいなくても、身近にいる子どもたちの様子に気を配りたい。

 子どもに限らず、この国では自ら死を選ぶ人があとを絶たない。2012年に自殺者3万人を切ったものの、2016年は2万1897人が自殺しており、24分にひとりが自殺でこの世を去っている。

 愛する人を自殺で失うことは辛いことだ。

 9月10日は、「世界自殺予防デー」だ。これに合わせて、日本でも毎年9月10日~16日までを「自殺予防週間」として、行政や学校、地域などが連携した活動を行なっている。自殺で命を落とす人がひとりでも少なくなることを祈りたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 日韓関係を語る際によく耳にする「ムービングゴールポスト」。交渉などにおいて、終わりが近付いていると思いきや、相手が着地点を遠のかせる。まるでサッカーのゴールポストを一方的に動かすようなものではないか。こうした、らちが明かない難儀さをたとえた言葉だ。互いに歩み寄っていると考えていた側は、脱力感にさいなまれることになる。

 イギリスで生まれた「Moving the goalposts」という表現から来ているようだ。日本ではもはや外交用語だが、もともとはビジネスなど幅広い分野で使われる。たとえば、本当は発注側の企業の手際が悪いのに、下請けに対して次々と新たな難題を強要、あげくの果てに納期までに上がらない責任を負わせる、といった状況は、まさにムービングゴールポストの典型例である。

 「無理が通れば道理が引っ込む」とはよくいったもので、客観的なジャッジがいない分野では、ゴネるほうが一時的な得になることはままある。とはいえ、小狡いことをいつまでも続けていては、誰ともパートナーシップを築くことは難しい。いささか優等生的な主張だが、仕事はなるべく真摯にいきたいものだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「米国第一」を掲げる米国・トランプ大統領が強気の策に打って出た。

 トランプ大統領は2017年8月12日、中国との貿易に対し、不公正な規制や慣行がないか調査を開始するよう、政府の関係部局に指示した。米・通商法301条に基づく措置という。

 米・通商法301条は不公正な貿易慣行を持ち、米国企業に不利益があると米政府が判断した国に対し「関税の引き上げ」「輸入制限」などの制裁措置を、一方的に発動できると定めている。米国は発動の前に、実態調査、貿易相手国との協議を行なう。その過程で制裁をちらつかせて圧力をかけ、規制や慣行の是正措置を引き出す。かつて日本も自動車や農産物、フィルムなどの分野で市場開放を迫られた経緯がある。

 今回の標的は中国。トランプ氏は「外国によって知的財産が盗まれ、米国は毎年、何百万もの雇用を失っている」と中国をけん制している。中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟し、その際、「知的財産保護」の強化を約束した。トランプ氏には「知的財産を保護するという約束にも関わらず、中国では海賊版や模倣品が横行。さらには、パソコンやデータ端末への不正アクセスで米企業や米政府の知的財産を盗んでいる」との不信があるようだ。

 これに対し、中国側は「中国は座視することはありえない」と反発、米国による貿易制裁が実行されれば、報復措置をとる構えだ。

 米中両国の貿易摩擦が本格化すると世界経済に大きな影を落とすのは必至だ。

 米国のこうした姿勢は、日本に対しても向けられる可能性がある。米国との通商協議「日米経済対話」などで、トランプ政権が攻勢を強めそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「有りか無しか?」の問いに対し、「有り」or「無し」の二択ではなく、もう少々微妙な言い回しを加えることによって、選択肢を増やした若者特有のコミュニケーション術。「○○」部分に「あり」か「なし」を入れることによって四択が可能となる。

ありよりのあり:「超あり!」の意味。「あり」の最上級。

なしよりのあり:「できれば“なし”にしたいけど、まあ“あり”かな…?」的なニュアンス。最終結論としては「あり」。

ありよりのなし:「できれば“あり”にしたいけど、まあ“なし”かな…?」的なニュアンス。最終結論としては「なし」。

なしよりのなし:「断固なし!」の意味。「なし」の最上級。

 これを仮に「女性がする男の品定め」に当てはめるなら、「なしよりのあり」と「ありよりのなし」のランク付け(?)が非常にむずかしい。「イケメンだけど、遊ばれそうだからチョット…(=ありよりのなし)」「見た目は冴えないけど、イイヒトっぽくてキチンとした会社にも勤めているから結婚相手には…(=なしよりのあり)」みたいな感じだろうか?

 あと、やはり若者のあいだで昨今流通しているネットスラングで「微レ存(びれそん)」というのもあるが、これは「微粒子レベルで存在している」の略で、「限りなく低いけど可能性はゼロじゃないこと」を匂わせるとき、すなわち「可能性有りか無しか」の明言を避ける際に使用される。「さすがに略しすぎだろ!」と筆者としてはツッコミを入れたいところだが……(笑)?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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