イネ科多年草のチガヤ(茅萱)を束ねた輪のことをいう。6月30日には、上賀茂神社や北野天満宮などの京都の神社で、鳥居や社頭に茅の輪が設置される。大きい茅の輪は直径4、5メートルもあるだろう。参拝者はこれをくぐって参拝することで、半年分の罪汚れが祓われるといわれ、これを茅の輪神事と呼んでいる。

 参拝のとき、茅の輪のくぐり方には決まりがある。茅の輪は普通、鳥居の柱に付けられているので、参拝者は茅の輪をくぐりながら、鳥居の周りを左回り、右回り、左回りの順に三回回る。そして、最後の四度目は回らず、ただ輪をくぐって社殿へ参拝に行くのである。

 この日、氏子の家では、着物姿を模(かたど)ったような紙の人形(ひとがた)をつくる風習が残っている。人形に息を吹きかけたり、手でなでたりして自身の穢れを移し、それを川に流したり、焼いたりすることでお祓いをするのである。最近はあまり見かけなくなったが、茅の輪のチガヤを抜き取り、それを輪にして家の門口につるし、厄除けにするという風習もある。

 これらは相当古くから行なわれている神事であり、由来は蘇民将来(すみしょうらい)の故事にちなむという。故事は、旅の途中で宿を乞うた素戔嗚尊(すさのおのみこと、別称・武塔神)を、蘇民が快く迎え入れたことから、素戔嗚尊は、茅の輪を付けていれば、疫病や穢れから免れられると教える。その後、蘇民やその家族は、長く無事に過ごしたというような内容になっている。京都では六月と十二月の晦日に、神に祈り穢れを払い除く、このような大祓が行なわれている。茅の輪神事が行なわれる六月の大祓のことを、夏越祓(なごしのはらえ)や水無月祓(みなづきはらえ)とも呼んでいる。


護王神社(上京区)の「茅の輪」の様子。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 ここ十何年、お笑い芸人が出るテレビ番組を見ていない。横山やすし・西川きよし、漫画トリオ、コント55号、ツービートあたりまではよく見ていたが、あるときからこちらの感性が合わなくなり、どんな漫才を見てもおもしろくなくなってしまったのだ。

 昨年『火花』を書いた又吉直樹のことを調べるためにYouTubeにある彼の漫才を何本か見てみたが、クスリとでも笑えるものが一本もなかった。

 今回書く松本人志(52)についてもほとんど知らないといってもいい。唯一知っているのは、94年に彼が出した『遺書』が大ベストセラーになったことである。

 「『オレは、この芸能界でやっていくのに、一つのポリシーを持っている。〈憎まれっ子世にはばかる〉というヤツだ』。反論も悪口も大歓迎。ダウンタウンの松本人志が自分たちのお笑いを語る1冊」(amazonの紹介文より)

 読んだと思うが、内容はまったく覚えていない。この頃の松本は、彼の顔つきもあるのだろうが、悪ガキが世の中に悪態をついているという印象だった。そういう意味ではビートたけしと同類だと思っていた。

 だが、2009年に結婚したあたりから芸風が変わってきたそうだ。

 「『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)時代の松本さんは、バイオレンスやハラスメント系のエッヂが効きまくったネタも多かったのですが、今は『妻や子どもに迷惑をかけられない』という潜在意識があるのか、そのようなネタは皆無。『ワイドナショー』と『ダウンタウンなう』が生放送ではなく収録放送にしているのは、失言を避ける意味合いもあるのでしょう。
 このあたりの『家庭を大切にする』というスタンスは、『結婚しつつも芸人らしい破天荒さを貫いてきた』ビートたけしさんや明石家さんまさんとは明らかに異なります。(中略)
 いったい松本さんはどこへ向かっているのでしょうか。前述したようにビートたけしさんや明石家さんまさんではないことは明らかですが、気になるのは、今年6月Twitterでの『オレがキモに命じてること。。。万人に好かれたいならテレビになんか出るな!』というつぶやき。他のタレントに向けたメッセージなのか、それとも現在の自分に対する歯がゆさなのか……」(東洋経済オンライン15年10月03日のコラムニスト木村隆志氏の言葉)

 ゴッホやアンネ・フランク、山口百恵が好きだというから、根は真面目で真っ当な芸人なのではないか。テレビでチラッと見た限りでは、年のせいか、人のいいオッサンになったという印象だ。

 彼を天才だと見る向きもあるようだ。彼の「名言」を集めたまとめサイトもある。いくつか見てみよう。

 「笑う事だけが、人間に許された唯一の特権なんや」「神様が人間を作ったと偉ぶるなら、それがどうしたと言ってやる。俺は笑いを作っている」「生み出すだけが発明じゃないんですよ。何かをやめるっていう発明もあるんですよ」「新しい彼氏ができたんですけど、元カレの名前を彫った刺青はどうしたらいい? 松本『その名前の下に「など」って彫りましょう』」

 そんな松本が8億円の土地転売で大儲けしたと『週刊新潮』(6/23号、以下『新潮』)が報じている。

 JR新橋駅の烏森口を出て大きな通りを西新橋方面へ歩き、ニュー新橋ビルを超えた信号の少し先を右に入ると烏森神社に突き当たる。

 ここいらは古い飲み屋や小体な寿司屋などがある飲み屋街。かつては新橋南地と呼ばれた花街があった場所で、私もときどき行く好きな場所だ。松本が買っていた土地は『新潮』によるとこうだ。

 「その飲み屋街からさらに西、やはり飲食店や居酒屋が軒を連ねる一画に件(くだん)の土地はある。
 赤い庇が特徴的な古びたタバコ屋が烏森通り沿いの角にあり、隣には小ぢんまりとした韓国料理屋。この2つの建物を取り囲むL字型の更地は現在、車10台が駐車できる『Times』というコインパーキングになっているが、そここそ、ダウンタウンの松本人志が以前取得し、今年になって売却した土地だ」

 広さは約261平方メートル、約80坪。松本個人で10年8月10日に取得している。抵当権も根抵当権も設定されていないからキャッシュで購入した可能性が高いと、『新潮』は言っている。

 地元の不動産屋は、松本が買ったのはリーマンショック後で比較的地価が下がっていた頃だから、購入価格は8億円ほどではないかと話し、続けて、現在地価は倍増しているから、売却価格は16億円ぐらいになるのではないかと言っている。

 まあ、ようござんしたね松本さん、という話だと思うのだが、『新潮』は難癖をつけたいらしく「この土地を買うとは松本は相当な玄人」だと言う。

 それは、韓国料理屋とタバコ屋が立ち退いてくれれば、長方形の土地になって価値は増大するのだが、韓国料理屋は頼めば承諾してくれそうだが、タバコ屋の高齢姉妹が頑として売りたがらない「有名な土地」だからだというのである。

 多くの一儲けを企んだ業者が姉妹との交渉に挑み、玉砕してきたというのだ。そういう曰く付きの土地に目をつけたから、松本は玄人ではないのか。

 姉妹は、ウチは江戸時代からやっているから手放さないと言っているという。姉妹の一人とおぼしき女性に『新潮』が話を聞くと、

 「価値が違うでしょ、全然。ここを手に入れれば。あんな狭い入口で、奥がいくら広くたって、価値が違うわよ。そりゃ当たり前でしょ。でもウチは昔から売るつもりはない」

 と、けんもほろろである。

 だが、そんな話はどこにでもあるし、この姉妹が悪いわけではない。また松本が誰かの入れ知恵(『新潮』では島田紳助ではないかと推測している)でその土地を買ったとしても、それだけでとやかく言えることではないはずだ。だが、コインパーキングにして固定資産税分を賄いつつ、5年以上経つと、長期譲渡所得として税率は20%で済むという(5年以内だと短期譲渡所得ということで売買で得た利益の39%が税金として持っていかれる)。

 『新潮』が出た後、松本はこうぼやいているという。

 「ワイドナショーで松本さんは、『怒ってるわけじゃないんですよ。土地を売った。それだけのことなんですよ。「こんなんネタになるん?」ってことですよ。どうせならもう少し面白いネタをね...若手が俺の名前だしてスベったみたいな感じ。もっと面白く、文春に負けへんぐらいのネタを持ってきてくれよ』と苦言を呈した。また、『金額は嘘。土地転がし感を出してる。ありえない』と、金額についても否定した」(『ハフィントンポスト日本版』6月19日 11時08分より)

 今のお笑い芸人には不動産で儲けているのが結構いるという。人気商売は世間から飽きられればそれで終わり。その日のために、不動産や飲食店を経営する芸人が多いのは「自己防衛」なのだろう。清原和博のように、あれだけ稼いだのに今は一文無しというケースもあるのだから。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 舛添要一都知事辞任フィーバーがようやく終わって、次のターゲット探しに各誌狂奔しているはずだ。そこはさすが『文春』。東京五輪招致のために多額の裏金がIOCの委員に渡ったのではないか、その窓口をやったのは元電通の専務ではないかという疑惑が出ているが、大手メディアは電通の力の前にひれ伏して、ほとんど独自取材はしていないようだが、それならオレに任せろと、『文春』が追及に乗り出した。見物ではあるが、どこまで電通タブーに迫れるのか

第1位 「『東京五輪招致』電通元専務への巨額マネー」(『週刊文春』6/23号)
第2位 「気をつけろ!『保険ショップ』にダマされる中高年が急増中」(『週刊現代』7/2号)
第3位 「医者に言われても『受けてはいけない手術』『飲み続けてはいけない薬』」(『週刊現代』7/2号)

 第3位。『現代』が毎週やっている手術は受けてはいけない、薬は気をつけろという特集だが、これだけ続けているというのは、売れ行きがいいのだろう。
 だが、私のような「成人病の宝庫」のような人間が読むと当たり前で、失礼だがおもしろくもおかしくもない。
 そう思いつつ、一応紹介しておく。
 まず、初期のがんであっても医者が手術に失敗することがある。当たり前じゃ。
 父親を食道がんの手術がきっかけで亡くした平山久美さん(47歳・仮名)は「メスを持った若い医師が頸動脈を傷つけるミスを犯した。まさか、あれほど自信満々だった医師の手術が失敗するとは思いませんでした。安易に手術を選択したことを悔やんでいます」と語っている。
 特に外科医はメスを持ってナンボというところがあるから、すぐに手術をしたがる。だが、手術したことでより悪化させてしまうことはよくあるのだ。
 また外科医の平岩正樹氏はこう言う。

 「胃瘻(いろう)(腹に穴を開け、直接胃に栄養を送ること)をするようなことになってしまうと、『自分の口で食事もできずに長生きするくらいなら、手術はせずに死んだほうがマシだった』と考える人も出てきます」

 私の父親がそうだった。誤嚥性肺炎には何度もなったが、自分で食事することは最後までやめなかった。
 しかし、若い医者が熱心に勧めるので渋々胃瘻にしたが、したとたん、気力が衰え寝たきりになって、数か月で亡くなってしまった。今思い返しても痛恨事である。

 「65歳を過ぎて、体力の衰えが目立ってきた高齢者にとっては、手術がベストな選択肢とは言えないのですが、医者はそこまで考えてないし、教えてもくれません」(都内大学病院の呼吸器外科医)
 「医者がいくら『安全だ』と言っても手術後、身体にどんな弊害が出るか分からない。しかも腰や膝、眼といった、手術をしなくても命に別状はないような病気であればあるほど、『なぜ手術したのか』『保存療法のほうが、健康寿命が延びたのでは』という後悔も大きい」(『現代』)

 最近とみに増えてきた内視鏡や腹腔鏡手術には危険が伴う。

 「開腹手術なら術中の思わぬ出血にも適切に対処できますが、腹腔鏡手術では予期せぬ出血が起きてしまうと止血がままなりません。(中略)
 特に肝臓やすい臓におけるがんは大量出血の恐れが高く大変危険です。肝臓やすい臓の場合、大血管が周囲に存在している上、体内の奥深くにあるため、内視鏡のモニターでは見えづらく、誤って傷つけてしまう可能性が高いのです」(浜松労災病院の有井滋樹院長)

 腹腔鏡手術は非常に高度な技量が要求され、一歩間違えれば「死」のリスクを伴うことを忘れてはならないと『現代』は言う。
 また全身麻酔もよく言われるが大きな危険を伴う。麻酔薬の分量を正しくコントロールするには熟練が必要だし、もっと言えば、なぜ麻酔薬を投与されると人は意識や感覚を失うのかというメカニズムそのものが、いまだ完全には解明されてはいないからだ。
 私の年上の友人は、昨年夏に肺がん、それも末期ではないかと診断された。相当悩んだが、医者の言うとおりに抗がん剤治療をはじめた. やはり副作用がきつく、日に日に身体が痩せて、食事も喉を通らない。
 そういう姿を身近で見ていると、あのとき、抗がん剤治療ではなく、緩和ケアのようなやり方のほうが、好きな食事をしたり仕事を続けたりできたのではないかと、後悔している。
 自分の最期のときは、絶対抗がん剤はやらないと決めているのだが、医者から、抗がん剤治療をしたら完治するかもしれないと言われたら、拒み続けられるだろうか。自信はない。
 こうしたテーマは、いい悪いではなく、ケースバイケースで、個々の例を詳細に追っていかないと、わからないことが多い。もっと工夫がほしいテーマである。

 第2位。以前から気になっている「保険の何々」「保険を考えるなら〇〇へ」などという、保険の相談を無料で受けるところが増えてきた
 それも儲かるのか、大きな陸上大会などへの宣伝やテレビのCMなども打つようになってきた。
 私も前に一度相談に行ったことがある。驚いたのは、お宅は無料相談というから、どうやっておカネを稼いでいるのかと聞いたら、しらっとして「保険会社さんから協賛金のような形でおカネをもらっています」と言うではないか。
 保険会社からカネをもらっていて、客観的な判断ができるわけはないと、早々に引き上げたが、その後もそうした窓口が増えているのは、保険に無知な人が多いのだろう。
 『現代』が「気をつけろ!『保険ショップ』にダマされる中高年が急増中」だと警鐘を鳴らしている。
 神奈川県在住の女性(40代)が初めて「保険ショップ」を訪れたのは、軽い不整脈で入院したことがきっかけだった。小学生の子どもと共働きの夫がいる。
 そこで提案されたのは「投資型保険」だった。払い込んだ保険料を保険会社が株式等で運用し、その運用結果次第で受け取れる保険金額等が増減する商品である。
 彼女は後で知ることになるが、実は元本割れのリスクがあり、損をするかもしれない商品だったのだ。
 ファイナンシャルプランナーの宮崎貴裕氏はこう言う。

 「保険ショップは『乗り合い代理店』として、様々な保険会社の商品を取り扱い、それを売ることで保険会社から契約手数料をもらっている。手数料は商品によってだいぶ差があります。
 本来、彼女にとって望ましいのは学資保険や終身保険など、元本が保証されている保険商品のはず。ところがこれらは、保険ショップが保険会社からもらえる手数料がものすごく安い。一方で、投資型の保険は元本割れのリスクをともなう分、ショップが手にするマージンが大きい。このケースでは、ショップ側が手数料欲しさに『安全運用』を望む彼女の意向を無視したわけです」

 保険屋が信用をなくしているから、こうした代理店を隠れ蓑にして保険を売ろうという、悪徳商法ともいえる手口である。
 こんなところにダマされないためには、少しでも自分で保険の知識をつけることしかない。気をつけよう、甘い言葉と保険の勧誘。

 第1位。今週の第1位はやはり『文春』。『文春』の見事さは、ターゲットにする人物の「選定」のうまさだが、今週は東京五輪の招致に絡んで、多額のワイロを贈ったのではないかという「疑惑」が言われている電通の元専務・高橋治之氏(72)に絞ったところなんぞ、憎いね。
 だが、疑惑に迫れたのかといえば、道半ばであろう。舛添スキャンダルのように連続追及してもらいたいものである。
 『文春』追及の要点は二つある。一つは高橋氏がJOC会長兼組織委員会副会長、招致委員会理事長だった竹田恒和氏(68)と極めて親しいこと。竹田氏の兄と高橋氏が慶應幼稚舎からの同級生で、竹田氏は高橋氏に頭が上がらないらしい。
 もう一つは興味深いカネの話。電通を退職した高橋氏は「コモンズ」という会社の代表を務め、電通時代の人脈を生かしてコンサルタント業務をはじめた。
 2020年五輪招致委員会の「スペシャルアドバイザー」に就任する。この「コモンズ」に関しては、大手民間信用調査会社が詳細な調査レポートを作成していると『文春』は言う。
 それによると、売上は2012年12月期の約6億3000万円から、招致活動が山場を迎えた翌年には約14億9000万円に跳ね上がっているというのである。
 その原動力は会社のコンサルタント部門の収入で、2012年12月期に約3億3000万円だったが、翌年には人脈を見込まれ調整活動を委託されて、コンサル部門は11億円を超える大口収入となったと書かれているそうだ。
 現在問題になっている2億3000万円を超える巨額な資金が招致委員会などから「コモンズ」に支払われているのである。しかし、調整活動に奔走したことで支出も増えて増収効果は薄く、営業利益は約1億8000万円に終わっている。
 調整活動に多額のカネが使われたためだが、その活動の実態とはどのようなものだったのか。元電通とはいえ、その会社に五輪招致のために巨額のカネを払うのは、IOCの有力委員たちへのロビイング&ネゴを期待してのことであろう。
 きな臭い臭いがプンプンするが、舛添やショーンKとは違って、高橋氏の後ろには電通が控えている。自民党と通じ、メディアを押さえ威嚇している電通タブーを打ち破り、五輪招致の闇に切り込めるのか、『文春』。お手並み拝見といこう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 リボベジは「リボーン・ベジタブル」、つまり「再生野菜」という意味だ。調理のあとに残った野菜の一部を、水に浸すことでふたたび育てて、また食べる。エコで家計にもやさしいことから、マスコミで多く取り上げられるようになった。昔からデキる主婦のテクニックとして行なわれてきたものだが、多少なりとも「みみっちい」イメージはあったかもしれない。現在は食材を育てる喜びの側面がフィーチャーされてもいるようだ。

 リボベジに向いた野菜としては、エンドウ豆を発芽させた豆苗(とうみょう)が代表格だ。もとより水耕栽培で育つので、根の部分を残しておけば、一週間ぐらいですぐに育ってくる。たくましいことに、二度も再生が可能である(それ以降は豆に養分がなくなってしまうとか)。

 ほかにも、水菜、小松菜、長ねぎなど、さまざまな野菜で再生が可能だ。ダイコンやニンジンのへたからも葉を育てることができる。一日一回は水を換える、直射日光にさらさないなど、いくつかのコツがあるので留意されたい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 6月1日の記者会見で、安倍晋三首相は消費税の「増税再延期」を表明した。

 再延期の理由については、「内需を腰折れさせかねないと判断した」と説明したうえで、「延期の是非を、国政選挙である参議院選挙を通して国民に信を問う」と発言した。

 消費税率の引き上げは、年金や介護、子育て支援などの社会保障費を賄う新たな財源を確保するために、2012年8月に成立した消費増税法によって決められたものだ。当初の予定では、2014年4月に8%に、2015年10月に10%に引き上げることになっていた。

 だが、このスケジュールは、すでに1回見送られている。

 8%への引き上げは予定通りに行なわれたものの、その後、消費の冷え込みが顕著になったことから、政府は2015年10月の10%への増税引き上げ見送りを決定。安倍首相は2014年11月の記者会見で、「デフレから脱却し、経済を成長させる、アベノミクスの成功を確かなものとするために」と説明した。この時、首相は「再延期はない」と断言し、2017年4月までには増税に耐えられるような経済環境をつくり、借金に頼らない社会保障の財源確保を行なうことを国民に約束していた。

 だが、この国民との約束を反故にして、今年もまた国政選挙の公示日前に、消費税の再延期を表明したのだ。それはつまり、現政権が進めてきたアベノミクスが、増税できる強い経済をつくれなかったことの証明でもある。

 安倍首相は、増税はしないが、2020年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する目標は継続するため、赤字国債を財源にした社会保障の充実は行なわないという。それでも、子育て支援策を含めた社会保障の充実は行なっていくというが、財源の目処なしで実行できるのだろうか。

 すでに、日本は赤字国債の積み上げによって、国と地方を合わせて1000兆円の財政赤字を抱えている。これ以上、将来世代にツケを先送りしないためには、増税は免れない状況だ。だが、個人の立場から見れば、家計の負担が重くなる増税は避けたいのが心情だろう。

 そうした大衆の心理を利用し、この国の為政者たちは、社会保障を政争の具とすることを繰り返してきた。政局に翻弄され、その都度、改革のスピードが緩められてきたこの国の社会保障の先行きはどうなるのか。

 今日は、参院選の公示日だ。そろそろ、私たち市民は現実を直視し、持続可能な社会保障体制を作れる政権を選びとるようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 いま、タイで話題のルクテープ(Luk Thep)人形。「ルクテープ」はタイ語で「天使の子」という意味で、まさに赤ちゃんの姿をしている。なかなかリアルな造形で、われわれ日本人からすると少し怖さを感じてしまいそう。仏教がさかんな現地では、購入後にお寺に持っていき、祈祷を施してもらうという。これによって、人形へと子どもの魂が宿り、持ち主に幸運を招くと考えられているのだ。

 ルクテープ人形は、タイの著名人たちがSNSなどで「御利益あり」のお墨付きを与えたことから、空前の広がりをみせている。まるで本当の子どものようにたいせつに扱われるのだ。飛行機に乗せるとき、ひとりぶんのシートを確保するサービスをタイ・スマイル航空が始めたほどである。

 一方でタイ民間航空局では、ルクテープ人形をあくまで人形として扱い、機内での収納などのルールを遵守するように通達を出した。薬物の密輸などに悪用される懸念があるためだ(実際、すでにこうした犯罪は起こっている)。いささか呪術めいたその存在自体、「常識的な」タイ人のあいだではこころよく思われていないらしい。たかが人形、されど人形。今回の狂騒ぶりは、政府でも手に負えないところまで来ているようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「クオータ(quota)」は英語で、「割り当て」という意味がある。クオータ制度は、性別や国籍などの属性別に枠を割り当てる仕組み。いま永田町で、女性議員の割合を増やす「クオータ制」を導入しようとする動きがある。

 自民、民進、公明など超党派の議員連盟が二つの法案、(1)政治分野における男女共同参画推進法案、(2)公職選挙法改正案の国会提出を目指していた。

 (1)はいわゆる理念法で、「候補者の数ができる限り男女同数となることを目指さなければならない」などと提唱。(2)はその対処策として、衆院の比例代表候補について、男女交互に当選させる方法を選べるようにする、というものだ。

 安倍政権は、女性の登用を進めるため、すでに女性活躍推進法を2015年に成立させ、企業で女性管理職の数を増やすことなど、女性の活躍の場を積極的に設けようとしている。

 そこで「企業だけでなく国会や地方議会でも」ということだが、前述の二つの法案の国会提出について、自民党がブレーキをかけた。

 2016年5月25日の同党の会合で、賛成の声の一方で異論が噴出したというのだ。「(法案提出は)拙速ではないか」「男女同数という表現は、いかがなものか」などの意見が出たという。

 クオータ制度は男性議員からすれば「逆差別」と受け止められているのだろうか。当選に向けて同じように努力をしても「女性のほうが優遇されるのは不公平だ」というわけだ。

 その結果、野党4党のみの共同提案のかたちで(1)が5月30日に衆議院に提出された。

 自民・公明・おおさか維新の3党は、「男女同数」にかえて「男女均等」の文言を盛り込んだ(1)の法案を秋の臨時国会に提出したいとしている。

 なお、民進党は単独で、同日の30日、(2)を衆議院に提出した。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「親の意思を確認する」の略語。我が子の就職活動に干渉する親とのいざこざを避けるため、内定を出す企業側が学生の親になんらかのアポイントメントを入れ、入社の確認を取ることをいう。片一方の親が承諾しても、もう一方の親が反対して内定辞退を申し出るケースもあるそうなので、かならず“両親”に確認するのが重要であるらしい。

 昨今、この「オヤカク」が、メディア上では「過保護も甚だしい」「もう大人なんだから就職先くらい自分で決めろよ」……みたいな論調で取り上げられ、“時代の風潮を象徴する就活専門用語”風に紹介されているが、たしか筆者が就活を行なっていた30年前にも「オヤカク」はあったはずで、「あえて“今”フィーチャーする事象なのか?」といった疑念が、正直なところ個人的にはなくもない。

 筆者が就活をしていた時期は、ちょうどバブル景気の一歩手前。現在では信じられないほどの“売り手市場”であり、筆者程度の能力しかない学生にも複数の企業がバンバンと内定を大盤振る舞いしていた。そして、その人事担当のそれなりに偉いヒトたちが、「私に娘さんをください!」と、両親に土下座しながら結婚を申し込む彼氏のように、菓子折り持参で自宅まで参上してくださったものである。ただ、これは「オヤカク」と呼ぶよりは、「将(=内定を出した学生)を射んと欲すればまず馬(=両親)を射よ」的な「オヤオトシ」の要素のほうが強かったのかもしれない。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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