編集方針
- 仏教語(術語)の意味を現代語で表現する。そのために平明かつ、簡潔に説明することに努めた。同一の語を種々の面から説明して理解を助けることにした。
- 用語の採集にあたっては、従来未検討であった最初期の仏教の漢訳文献をはじめ、インド・中国(本文中では漢民族の住む地域という意味合いでシナという語を使っている場合がある。〔本文「中国」の項参照〕:編集部註)・日本その他の重要な仏教文献に当たり、それらから広く術語を収録した。また、民間信仰や諸方の霊場で用いられている諸語を、わが国のみならず、朝鮮・ベトナム・中華民族活動地域などにわたって採録した。
- パーリ語・サンスクリット語・チベット語などによるテクストが現存するものは、それに直接さかのぼり、原語を示して、術語の説明が厳密となることをめざした(読者が一定の術語をさらに詳しく検討する場合、直接原典にまでさかのぼって調べられるよう配慮してある)。
- インド思想一般・インド人の生活との関連をも検討し、その点を吟味したうえで術語の意味するところを説明しようと試みた。仏教がインド文化史の中で見直されており、難解な仏教語もインド人の生活や思想と照らし合わせてみると、理解しやすくなるからである。
- 普通名詞以外の語は、仏典読解に必要なもののみを取り上げ、固有名詞(人名・地名・寺名・書名など)は原則として省いた。例外的に取り上げた仏・菩薩・天に関する固有名詞については、必要に応じてその名称の意味を簡単に解釈するにとどめた。
- 現代の日常用語や西洋哲学の現代訳語が、昔の仏教文献でどのような意味に用いられているかを知ることができるようにした。
- ギリシア・ローマ起源の語あるいは遠い国々に由来する語がサンスクリット語に入り漢訳されたような場合も、源流にさかのぼって究明した。
- 日本の重要な古典(『源氏物語』『平家物語』など)や仮名法語などに現れた仏教語についても解説し、その出典まで示した。日本の典籍にも広く当たったという点では、今までに出版された仏教関係の辞典ではもっとも詳しいものであることをめざした。
- 既刊の梵漢辞典、梵和辞典の類に収録されていない多くの原典に当たってあり、多数の原語を掲載してあるので、一種の梵語辞典、パーリ語辞典としても役立つはずである。
- 多くの辞典は一つの読み方に統一している場合が多いが、この辞典では、宗派により、また同一宗派でも時代により、読みを異にする場合は可能な限りこれを収録した。そのほかの点でも、仏教全般に通じる超宗派的な辞典である。
- その他、この辞典の編集内容等の特徴に関しては、「はしがき」「あとがき」も参照されたい。