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雨月物語

ジャパンナレッジで閲覧できる『雨月物語』の日本古典文学全集・世界大百科事典・国史大辞典のサンプルページ

新編 日本古典文学全集
雨月物語
うげつものがたり
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雨月物語 全体

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【現代語訳】
逢坂の関の番士に通行を許され、東への道をとってから、秋が来て燃え立つような山々の紅葉の美しさをも見捨てがたく、そのまま東下りの旅は、浜千鳥が足跡をつけて遊ぶ鳴海潟、富士山の雄大な噴煙、浮島が原、清見が関、大磯小磯の浦々の風光。更に紫草の咲きにおう武蔵野の原、下っては塩釜の海の穏やかな朝景色、象潟の鄙びた苫葺きの漁師の家々の眺め、佐野の舟橋、木曾の桟橋など、どの一つとして、心魅かれぬ所はなかったが、その上もなお、西国の名所・歌枕をぜひ見たいことよと、仁安三年の秋には、葭の花散る難波を経て、須磨・明石の海辺の風をしみじみと身に感じながら、旅を重ね歩を進めて四国讃岐の真尾坂の林という所まで行き着いて、しばらくそこに滞在することにした。野宿を重ねてきた長旅の疲れを休めるためではなく、仏法を思念し修行するための便宜として草庵を結んだというわけである。

この里に近い白峰という所に、崇徳院の御陵があると聞いて、拝み申し上げようと思い立ち、十月の初旬ごろにその山に登った。松や柏が薄暗いまでに奥深く茂り合っていて、白雲がたなびく晴天の日さえ小雨がそぼ降るような感じで、児が嶽という険しい峰が背後にそそり立ち、その深い谷底から雲霧が這い上ると、目の前さえおぼつ

【目次】
雨月物語(扉)
凡例

雨月物語 巻之一
白峯
菊花の約
雨月物語 巻之二
浅茅が宿
夢応の鯉魚
雨月物語 巻之三
仏法僧
吉備津の釜
雨月物語 巻之四
蛇性の婬
雨月物語 巻之五
青頭巾
貧福論



世界大百科事典
雨月物語
うげつものがたり

溝口健二監督の映画。1953年製作。《西鶴一代女》の1952年ベネチア映画祭国際賞受賞に次いで翌年同映画祭銀獅子賞を受賞し,溝口の名を国際的に高めた。上田秋成の《雨月物語》の中の〈浅茅が宿〉と〈蛇性の淫〉に,モーパッサンの短編小説《勲章》を加えて川口松太郎が小説化したものから,依田義賢と川口が共同で脚本を書いた。溝口は上田秋成の原作を愛読していて,〈この物語の中からさまざまな幻想が頭の中に浮かび,できた映画〉だと書き残している。戦国時代を舞台に,男たちの野望の卑小さに対して女たちの生活や欲望や官能を生き生きと描いた〈女性映画〉で,妻と母の座を守りぬく女,宮木(田中絹代),娼婦に身を堕とす女,阿浜(水戸光子),現世にさまよい出て男を誘惑する女,若狭(京マチ子)という3人のヒロインについて,溝口は〈女三人を匂ひで云ひますと,普通の香,仏だんの中でじめじめと宮木。野外の墓場で盛んにくすぶってゐる安物の線香,阿浜。四畳半のあやしげな安待合の部屋や便所で匂ふ香水線香,若狭〉といっている(依田義賢あての書簡)。溝口はまた,この映画の真髄を〈芝居と詩〉ということばでいい表しており,一方では〈講談映画〉ではないリアルな戦乱の描写と生きた人間の出る〈真の時代劇〉を目ざすと同時に,深い霧につつまれた夜の琵琶湖に小舟を漕ぎ出す有名なシーンに見られるように,若き日に水墨画を修業した宮川一夫(1908-99)のカメラを通してポエティックな〈幽玄美〉を生み出すことに成功している。
[宇田川 幸洋+山田 宏一]

[索引語]
溝口健二 上田秋成 川口松太郎 宮川一夫


国史大辞典

雨月物語
うげつものがたり
上田秋成(署名、剪枝畸人)著。五巻九篇から成る怪談小説集。明和五年(一七六八)三月、初稿成立。八年の推敲を経て、安永五年(一七七六)四月刊行。巻一に「白峯」「菊花の約」、巻二に「浅茅が宿」「夢応の鯉魚」、巻三に「仏法僧」「吉備津の釜」、巻四に「蛇性の婬」、巻五に「青頭巾」「貧福論」を収める。都賀庭鐘(つがていしょう)の『英草紙(はなぶさぞうし)』『繁野話(しげしげやわ)』に倣い、中国白話(口語体)小説に拠って想を構えている。庭鐘の作品が、内容・文章ともに原拠の直訳に近いものであったのに比し、これは原作のもつ巧妙な話術をさらに洗練し、これを流麗な雅文で綴っている。また庭鐘が奇談を主としたのに対し、これは怪談を主とし、そこに怪異の実在を信じた作者の、怖るべき幻想の場面が生かされ、はるかに原作を凌ぐものとなっている。その意味でこれは、怪談小説中の王者であるといってよいが、しかしそれは怪談のための怪談に終らず、話の進行の中に、人間の実体を究め、同時にそのあり方をも示して、浮薄な世情に対する警告の意味をも含んでおり、さらに賀茂真淵の流れを汲む作者の国学的主張も籠められ、日本的特性を顕示することに意を注いでもいる。しかしその点では、やや徹底を欠くものがあり、その大成は、晩年の傑作『春雨物語』を待たなければならなかった。『上田秋成集』(『日本古典全書』)、『日本古典文学大系』五六などに収められている。→上田秋成(うえだあきなり)
[参考文献]
重友毅『秋成の研究』(『重友毅著作集』四)、同『雨月物語評釈』
(重友 毅)
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1. 『雨月物語』
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読本。剪枝(せんし)畸人(上田秋成)著。1768年(明和5)成立,76年(安永5)刊。半紙本5巻5冊。初版初刷は大坂野村長兵衛,京都梅村判兵衛合梓本だが,幕末ご ...
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11. あい‐よく【愛欲・愛慾】
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13. あお‐ずきん[あをヅキン]【青頭巾】
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14. あがない‐いだ・す[あがなひ‥]【贖出】
日本国語大辞典
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15. あき‐びと【商人】
日本国語大辞典
aqibitono (アキビトノ) タヨリニ フミ ナドノ ヲノヅカラ カヨウニモ」*読本・雨月物語〔1776〕貧福論「百姓(よたから)は勤て穀(たなつもの)を ...
16. あき‐もの【商物】
日本国語大辞典
の人、ここに来りとどまりてあきものするあり」(2)商売する品物。あきないもの。商品。*読本・雨月物語〔1776〕菊花の約「けふは誰某(たれがし)がよき京入なる。 ...
17. あきら・める【明】
日本国語大辞典
aqiramuru (アキラムル)〈略〉ダウリヲ aqiramuru (アキラムル)」*読本・雨月物語〔1776〕貧福論「徃古(いにしへ)に富る人は、天の時をは ...
18. あきれ‐まど・う[‥まどふ]【呆惑】
日本国語大辞典
殿に走り来て」*源氏物語〔1001~14頃〕総角「あさましげにあきれまどひ給へるを」*読本・雨月物語〔1776〕蛇性の婬「聞くにあさましう、身の毛もたちて恐しく ...
19. あぎ‐と【〓門・顎・顋・鰓】
日本国語大辞典
草苅鎌といふものをもちて、あぎとをかききりて」*観智院本類聚名義抄〔1241〕「鰓 アギト」*読本・雨月物語〔1776〕夢応の鯉魚「文四はやく糸を収めて我を捕ふ ...
20. あく‐いん【悪因】
日本国語大辞典
三「頼をかけし御本尊、只今土足にかけん事いか成悪業(あくごう)、悪因(あくイン)と」*読本・雨月物語〔1776〕青頭巾「あさましとも哀しとも、ためしさへ希なる悪 ...
21. あくぎゃく‐づか【悪逆塚】
日本国語大辞典
京都市中京区石屋町瑞泉寺にある塚。豊臣秀次とその妻子を葬ったもの。「秀次悪逆塚」の銘がある。*読本・雨月物語〔1776〕仏法僧「一日(あるひ)夢然三条の橋を過ぐ ...
22. あけ を そそぐ
日本国語大辞典
赤色になってゆく。朱(しゅ)をそそぐ。*読本・雨月物語〔1776〕白峰「光の中につらつら御気色(みけしき)を見たてまつるに、朱(アケ)をそそぎたる龍顔(みおもて ...
23. あ・げる【上・揚・挙】
日本国語大辞典
あ)しきを褒(アゲ)貶(くた)し」*観智院本類聚名義抄〔1241〕「称 アグ ホム」*読本・雨月物語〔1776〕仏法僧「此玉河てふ川は国々にありて、いづれをよめ ...
24. あ‐ご【網子】
日本国語大辞典
1430頃〕「あれご覧ぜよ、御津の浜に網子調ふる網舟の、えいやえいやと寄せ来るぞや」*読本・雨月物語〔1776〕蛇性の婬「『おのれは網子(アゴ)どもの怠るらん』 ...
25. あさづま‐ぶね【朝妻船・浅妻船】画像
日本国語大辞典
松の葉〔1703〕三・朝妻舟「あだしあだ波よせてはかへる浪、あさづまふねの浅ましや」*読本・雨月物語〔1776〕夢応の鯉魚「さしも伊吹の山風に、旦妻船(アサヅマ ...
26. あさ‐びらき【朝開】
日本国語大辞典
四四〇八「安佐婢良伎(アサビラキ) 吾(わ)は漕ぎ出ぬと 家に告げこそ〈大伴家持〉」*読本・雨月物語〔1776〕菊花の約「日和(には)はかばかりよかりしものを、 ...
27. あさまし・い【浅】
日本国語大辞典
・西鶴諸国はなし〔1685〕四・八「此あさましき内助に、さやうの美人なびき申べきや」*読本・雨月物語〔1776〕吉備津の釜「親もなき身の浅ましくてあるを、いとか ...
28. あさみ‐わら・う[‥わらふ]【浅笑】
日本国語大辞典
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29. あざら‐け【鮮─】
日本国語大辞典
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30. あざら‐けき【鮮】
日本国語大辞典
世をわたるよと推量して、やふやく吟行したれば、又いつくとも知ぬ山里、人煙が見へたぞ」*読本・雨月物語〔1776〕菊花の約「美酒(よきさけ)を沽(か)ひ鮮魚(アサ ...
31. あしかが‐ぞめ【足利染】
日本国語大辞典
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32. あし‐なえ・ぐ[‥なへぐ]【蹇・跛】
日本国語大辞典
足奈戸久馬」*海道記〔1223頃〕大岳より鈴鹿山「羊腸坂きびしくして駑馬石に足なへく」*読本・雨月物語〔1776〕浅茅が宿「翁も又足蹇(アシナヘギ)て百歩を難し ...
33. あずみのいそら【安曇磯良】
日本架空伝承人名事典
顔の色いと青ざめて、たゆき眼すざましく、我を指たる手の青くほそりたる恐しさに、「あなや」と叫んでたふれ死す。雨月物語巻之三「吉備津の釜」 ...
34. あだ‐ごと【徒言・徒事】
日本国語大辞典
〕絵合「世の常のあだ事のひきつくろひ飾れるにおされて、業平が名をや腐(くた)すべき」*読本・雨月物語〔1776〕吉備津の釜「只かりそめなる徒(アダ)ことに、女の ...
35. あつい 心(こころ)
日本国語大辞典
(1)高い熱のため、からだが燃えているように熱くなっていること。また、その時の浮かされた気分。*読本・雨月物語〔1776〕吉備津の釜「疫(えき)といふものの脳( ...
36. あつら・える[あつらへる]【誂】
日本国語大辞典
かしこの人の集まりたるは」*冥報記長治二年点〔1105〕「慇懃に四たび之を属(アツラフ)」*読本・雨月物語〔1776〕菊花の約「佐用氏にゆきて老母の介抱(いたは ...
37. あて【貴】
日本国語大辞典
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38. あと‐な・し【跡無】
日本国語大辞典
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39. あな
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其時初てわらひ給へり」*バレト写本〔1591〕「ana (アナ) カシマシヤ シズマレト」*読本・雨月物語〔1776〕吉備津の釜「あな哀れ。わかき御許(おもと) ...
40. あな‐や
日本国語大辞典
「鬼はやひとくちに食ひてけり。『あなや』といひけれど、神鳴るさわぎにえ聞かざりけり」*読本・雨月物語〔1776〕吉備津の釜「顔の色いと青ざめて、たゆき眼(まなこ ...
41. あま‐かか【尼嚊】
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(アマグ)」*俳諧・奥の細道〔1693~94頃〕草加「ゆかた、雨具、墨、筆のたぐひ」*読本・雨月物語〔1776〕仏法僧「雨具(アマグ)うち敷き座をまうけて、閑( ...
43. あま‐な・う[‥なふ]【和・甘─】
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滅してしまう」*俳諧・むかしを今〔1774〕序「あやしき舎りして市中に閑をあまなひ」*読本・雨月物語〔1776〕菊花の約「清貧を憇(アマナ)ひて、友とする書(ふ ...
44. あみご【網子】[方言]
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45. あめの 神(かみ)
日本国語大辞典
安女乃加美乃以支保以乎毛〓」*読本・雨月物語〔1776〕白峰「そも保元の御謀叛は天(アメ)の神(カミ)の教給ふことわりにも違はじとておぼし立たせ給ふか」 ...
46. あめの 時(とき)
日本国語大辞典
天が与えてくれる好機会。天運。てんのとき。*読本・雨月物語〔1776〕貧福論「いにしへに富める人は天(アメ)の時に合(かな)ひ、地(くに)の利をあきらめて産を治 ...
47. あや‐にしき【綾錦】
日本国語大辞典
句・夏「いく村も山は若ばのにしきかな 綾錦など一端二たんをば一むら二村などといへり」*読本・雨月物語〔1776〕浅茅が宿「綾錦(アヤニシキ)に裹(つつ)める京女 ...
48. あら‐た【新】
日本国語大辞典
*謡曲・金札〔1384頃〕「四海を治めし、おん姿、あらたに見よや、君守る、八百万代の、しるしなれや」*読本・雨月物語〔1776〕菊花の約「賢弟が老母は即(やがて ...
49. あらの の 煙(けぶり)
日本国語大辞典
火葬の煙。また、火葬。野辺の煙。*読本・雨月物語〔1776〕吉備津の釜「かくてはとて遂に曠野(アラノ)の烟(ケフリ)となしはてぬ」 ...
50. ありあけ‐づき【有明月】
日本国語大辞典
猿蓑〔1691〕五「青天に有明月の朝ぼらけ〈去来〉 湖水の秋の比良のはつ霜〈芭蕉〉」*読本・雨月物語〔1776〕浅茅が宿「屋根は風にまくられてあれば、有明月のし ...
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