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西山物語

ジャパンナレッジで閲覧できる『西山物語』の日本古典文学全集・国史大辞典・歌舞伎事典のサンプルページ

新編 日本古典文学全集
西山物語
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西山物語 全体

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西山物語 拡大

【現代語訳】
山城国乙訓郡の松尾村という所に、大森七郎という武士が兄妹三人で住んでいた。妹の名はかへといい、その下の弟は惣次といった。七郎の妻は早く亡くなっていたが、年老いた母が健在で貧しいながらも三人の兄妹で大切に仕えていた。また、同じ村里に、同族で八郎という男がいた。これはまた妻を亡くした寡夫で、亡き妻が忘れ形見として残した愛児が一人いたが、その名を宇須美といった。この八郎の家も、七郎の家と同じように貧しく、世渡りの生業とて別になかったが、たまたま撃剣の術に長じていたので、これを人に教える師範となって、ほそぼそと生計を立てていた。一方、七郎のほうも、こちらは抜群に剣術にひいでていたが、それだけでなく、弓術、馬術といった、武家の表芸のすべてにすぐれていた。身長は六尺二寸ほどもあり、太刀もことさら長いものを身に帯びていた。また、この七郎という壮士は、大森彦七という武士の子孫であって、八郎とは従弟の間柄で

【目次】
西山物語(扉)
凡例

西山物語 上
こがねの巻
かへの巻
太刀の巻
西山物語 中
あやしの巻
琴の巻
文の巻
わかれの巻
西山物語 下
露の巻
よみの巻
ほきの巻



国史大辞典
西山物語
にしやまものがたり
江戸時代中期の雅文体小説。読(よみ)本。建部綾足の作。三巻三冊。明和五年(一七六八)刊。明和四年十二月に、京都一乗寺村で起った事件を題材とした実話小説であるが、舞台を西山に移し、題名としている。西山の豪士大森七郎の妹と七郎の従兄八郎の息子とは相思の間がらで、七郎は二人を結婚させようとするが、八郎は占者の言葉を信じて強く反対するので、七郎は妹を八郎の家に同行し、妹を斬り捨てる。事情がわかって両家は和解し、男のところに女の亡霊が通い続ける、といった構想で、構想が緊密を欠くが、士道をからませ怪奇趣味があり、世相の反映もあって、草創期の読本の代表作の一つに数えられている。衒学趣味にも特色がある。同じ題材により上田秋成も『ますらを物語』や『死者の咲顔(えがお)』(『春雨物語』所収)を作っているが、趣向に相違が見える。『雅文小説集』(『有朋堂文庫』)、『日本古典文学全集』四八などに収められている。
[参考文献]
藤井乙男『近世小説研究』
(井上 豊)


新版 歌舞伎事典
西山物語
にしやまものがたり
戯曲。三幕六場。小山内薫作。昭和三(1928)年四月東京・歌舞伎座初演。源太=二世市川左団次、団次=二世市川猿之助(後の猿翁)。実録に基づく明和・安永年間(1764‐1781)の建部綾足の小説と、後の上田秋成の作品の両方を素材とした戯曲で、発表は大正一三(1924)年九月号の《演劇新潮》。従兄弟同士の渡辺源太と団次は仲が良く、二人とも剣術の指南をしているが、太平の世とて仕官のあてもない。源太の妹かえは、団次の一人息子右内と親同士も認める恋仲であった。九州から使者が来て、試合の結果勝った方の団次を師範役に取り立てる。源太はかえに花嫁衣裳を着せ、右内との祝言をと頼むが、団次は今はもう家柄が違うと拒絶する。不実を怒った源太はかえを団次の眼前で刺し殺し、武士の意地を示す。境遇の変化による人の心のうつろいやすさと、ますらおぶりが主題。メロドラマ性を排し、きびきびした現代語のせりふが簡潔で、《息子》とともに作者の代表作。
[水沼 一郎]
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検索コンテンツ
1. 『西山物語』
日本史年表
1768年〈明和5 戊子〉 この年 建部綾足 『西山物語』 刊。
2. 西山物語
日本大百科全書
建部綾足(たけべあやたり)作の小説(読本(よみほん))。三巻。1768年(明和5)2月刊。前年の1767年12月、京都一乗寺村の住人渡辺源太が、恋愛問題のもつれ
3. 西山物語
世界大百科事典
を舞台とした浪漫的な夢語りとして,すぐれた達成を示している。これをもとにした小山内薫の戯曲《西山物語》(1928初演)がある。森山 重雄 建部綾足 源太騒動
4. にしやまものがたり【西山物語】
日本国語大辞典
読本。三冊。建部綾足(たけべあやたり)作。明和五年(一七六八)刊。刊行の前年に京都近郊で起こった渡辺源太の妹斬殺事件に取材した雅文小説。親戚間の男女の悲恋という
5. にしやまものがたり【西山物語】
全文全訳古語辞典
[書名]読本。三冊。建部綾足著。一七六八年(明和五)刊。刊行の前半に起こった斬殺事件を題材にした雅文小説。
6. にしやまものがたり【西山物語】
国史大辞典
江戸時代中期の雅文体小説。読(よみ)本。建部綾足の作。三巻三冊。明和五年(一七六八)刊。明和四年十二月に、京都一乗寺村で起った事件を題材とした実話小説であるが
7. にしやまものがたり【西山物語】
歌舞伎事典
戯曲。三幕六場。小山内薫作。昭和三(1928)年四月東京・歌舞伎座初演。源太=二世市川左団次、団次=二世市川猿之助(後の猿翁)。実録に基づく明和・安永年間(1
8. 西山物語
日本古典文学全集
京都一乗寺村で起った渡辺源太による妹斬殺事件(源太騒動)を題材とした実話小説。親戚間の男女の悲恋という実話に、先祖伝来の太刀にまつわる怪異談をからませ、伝奇小説
9. 西山物語(著作ID:397648)
新日本古典籍データベース
にしやまものがたり 建部綾足(たけべあやたり) 読本 明和五刊
10. 雨月物語 401ページ
日本古典文学全集
長柄の僧都と対話問答する話がある。家に奉公する下人。先述の十両を拝領した下男。左内の精霊への対応は、『西山物語』中の大森七郎が怪異に平然たるところと酷似する。ま
11. 雨月物語 402ページ
日本古典文学全集
管仲九たび諸侯をあはせて、身は倍臣なが 銭観は、そのまま大森七郎への鋭い批判となる。つまり本編を『西山物語』への批判的執筆として読むことができる。日頃考えてい
12. 小山内薫画像
日本大百科全書
叢(ろんそう)』などの評論のほか、戯曲に『第一の世界』(1921)、『息子』(1922)、『西山物語』(1924)、『森有礼(ありのり)』(1926)、小説に『
13. 小山内薫
世界大百科事典
のために,その後も鶴屋南北の《謎帯一寸徳兵衛(なぞのおびちよつととくべえ)》を演出したり,《西山物語》《森有礼》,現代語にした《博多小女郎波枕》などを書いて生涯
14. おさないかおる【小山内薫】
歌舞伎事典
この俳優のために、その後も鶴屋南北の《謎帯一寸徳兵衛(なぞのおびちょっとととくべえ)》を演出したり、《西山物語》《森有礼》、現代語にした《博多小女郎浪枕》などを
15. 近世畸人伝・続近世畸人伝 500ページ
東洋文庫
文人画家として知られる。四十二歳、片歌を提唱、 四十四歳、賀茂真淵に入門し国学を学ぶ。読本 『西山物語』を著わし明和五年刊行。安永二年(一 七七三)三月十八日没
16. 近世俳句集 277ページ
日本古典文学全集
唱えてから俳諧を離れ、賀茂真淵に入門して国学を修め、とくに『伊勢物語』の研究に力を注いだ。『西山物語』『本朝水滸伝』などの初期読本の著述もあるが、俳諧関係の編著
17. ぎこものがたり【擬古物語】
国史大辞典
和文体)による物語小説を制作した。北村季吟の『しら露物語』、荷田在満の『白猿物語』『落合物語』、建部綾足の『西山物語』、石川雅望の『近江県物語』『飛弾匠物語』な
18. ぎこものがたり【擬古物語】 : 擬古物語/(二)
国史大辞典
和文体)による物語小説を制作した。北村季吟の『しら露物語』、荷田在満の『白猿物語』『落合物語』、建部綾足の『西山物語』、石川雅望の『近江県物語』『飛弾匠物語』な
19. し‐だん【詞壇】
日本国語大辞典
〔名〕文人の社会。文壇。詞林。*読本・西山物語〔1768〕序「専以〓片歌
20. じ‐じ【孳孳】
日本国語大辞典
孜孜(しし)。*御伽草子・秋の夜の長物語〔南北朝〕「人心ありて孳々(じじ)として豈勤めざらんや」*読本・西山物語〔1768〕序「忘〓躬為
21. 随筆 明治文学 1 政治篇・文学篇 140ページ
東洋文庫
れ所謂る古文なるものにして現世に用ふ可らざるものなるは読者もおのづから合点すべし近江県物語、西山物語、〓紫船物語等の如きは此体をもてして小説を編み其功を奏せざり
22. 随筆 明治文学 3 人物篇・叢話篇 438ページ
東洋文庫
300 西洋血潮小暴風<にしのうみちしおのさあらし> 1=40,75,418,2=21-22 西山物語 1=140 二十三年国会未来記 1=425 二十三年未来
23. せき‐し【赤幟】
日本国語大辞典
靡来学〓」*読本・西山物語〔1768〕序「交以〓片歌
24. 増訂 武江年表 1 192ページ
東洋文庫
にや、先生とた、へたり。されど千蔭は画をよく せず。綾岱が画は唐絵の流なり。又戯作もあり、 「西山物語」「本朝水滸伝」などの類なり。上方 の人誰やらの随筆に、謝
25. 増訂 武江年表 2 26ページ
東洋文庫
よみほんと云ふもの、おかしき文章提 て、ぬめりたる処は上るりに類し、古語の見ゆ里 はもと綾岱が「西山物語」を手本としたるなり。 ふつエかなる横ぐわへといへるたぐ
26. 増訂 武江年表 2 81ページ
東洋文庫
ど商ひしにや知らず。文かく事、狂歌師にはすぐ れたり。都の手ぶりなどおかし。されど是れも綾 足が「西山物語」の口つぎなり。○閏三月晦日、電降る(下谷の辺は殊に大
27. 建部綾足
日本大百科全書
翻案した『本朝水滸伝』(前編のみ1773刊)を著し、安永(あんえい)3年3月18日江戸で没している。56歳。『西山物語』は文人雅文小説を代表する佳作とされており
28. 建部綾足
世界大百科事典
柄であったため,その芸術的野心は必ずしも世にいれられなかった。片歌唱導から生まれた彼の小説《西山物語》(1768),《本朝水滸伝》(前編1773)は,擬古文体に
29. たけべ‐あやたり【建部綾足】
日本国語大辞典
国学の面では賀茂真淵に師事し、片歌の提唱者として著名。また、読本の先駆的作品「本朝水滸伝」「西山物語」を著わし、絵は長崎で費漢源に就き、初期の南画の鼓吹者の一人
30. たけべあやたり【建部綾足】
全文全訳古語辞典
画人。国学では賀茂真淵に師事し、片歌の提唱者として著名。読本の先駆的作品となる『本朝水滸伝』『西山物語』などを著すなど多方面に活躍した。(一七一九~七四)
31. たけべあやたり【建部綾足】
国史大辞典
とはし草』など片歌の関係書(宝暦の半ばから明和にかけての刊)を多く残した。読本(よみほん)『西山物語』、『本朝水滸伝』(『吉野物語』)、画譜・画法書『寒葉斎画譜
32. たけべ-あやたり【建部綾足】
日本人名大辞典
宝暦13年賀茂真淵(かもの-まぶち)に入門,俳諧をすてて19音の片歌説をとなえ,片歌道守の称号をえる。晩年「西山物語」「本朝水滸伝」などの読み本をあらわした。安
33. 建部綾足[文献目録]
日本人物文献目録
』佐藤紅緑『建部綾足』栗山理一『建部綾足』三昧道人『建部綾足』保田与重郎『建部綾足 その著「西山物語」「本朝水滸伝」の意義』宮島夏樹『建部綾足と万葉集』森山泰太
34. 西山物語 197ページ
日本古典文学全集
西山物語 序 今、古へと同じきは、人情なり。古へ、今と異るは、語言なり。語言、何を以て異るや。蓋し世に汚隆有りて、人は雅俗を分つなり。是を以て学ぶ者の古語に通ず
35. 西山物語 198ページ
日本古典文学全集
以て今を御し、俗に即して雅を為すの術を暁るに俾せんと欲し、乃ち時事を記して以て三巻と為す。題して西山物語と曰ふ。苟しくも国風及び片歌に志す者、能く朝に習ひ夕に之
36. 西山物語 199ページ
日本古典文学全集
客歳遊于平安。下帷講授。戸外履満。於是欲俾従学士。暁以古御今。即俗為雅之術。乃記時事以為三巻。題曰西山物語。苟志国風及片歌者。能朝習夕積之。則置身於荘嶽間之術矣
37. 西山物語 201ページ
日本古典文学全集
西山物語 上綾太理つくる こがねの巻 山背の国乙訓のこほり松の尾といふ所に、大森七郎といふもののふはら一母から同産日本紀みたりまで住みけり。いもとの名はかへとい
38. 西山物語 218ページ
日本古典文学全集
西山物語 中 あやしの巻 けふの太刀あはせには、たやすく八郎に勝えて、守の御たたへにあづからむと、神々にもいはひべ斎瓶万葉 神酒の陶也奉り、真魚古語まうけなどし
39. 西山物語 242ページ
日本古典文学全集
西山物語 下 露の巻 なかびとはかの文をふところにして、七郎親子がまへに来たり、「おぼしめぐらすことまで、をさをさうちにほはして源氏物語きこえしかど、なかなかう
40. 西山物語 243ページ
日本古典文学全集
処女が結婚する時をいう。両家の敵対関係の中で、宇須美・かへの仲はしだいに進退きわまってゆく。古くから『西山物語』が日本版『ロミオとジュリエット』であるといわれる
41. 西山物語 259ページ
日本古典文学全集
アレンジして織り込んだ、この「よみの巻」の文章は、綾足の絢爛たる文才を示しあざやかである。『西山物語』の長所は、むしろこのような古典との情調的な連続性にみられる
42. 西山物語 264ページ
日本古典文学全集
そこに死者(かへのモデル)への敬虔な鎮魂の意図さえしのばれる。いずれにしても、この「よみの巻」のできばえが、『西山物語』の好評の根本的理由であり、また特異な怪異
43. 春雨物語 473ページ
日本古典文学全集
の変化を、自然に描く。母と兄の二人ながらに妹を諫める『ますらを物語』と大いに異なり、むしろ『西山物語』に似る。生涯をかけた夫。将来を約束したことをいう。
44. ゆうほうどうぶんこ【有朋堂文庫】
国史大辞典
山訳、北斎為一画)(全四冊) 雅文小説集 古今奇談英草紙(近路行者)・古今奇談繁野話(同)・西山物語(建部綾足)・本朝水滸伝(同)・つくし船物語(村田春海)・手
45. 読本
世界大百科事典
。 江戸中期の《英(はなぶさ)草紙》(1749),《繁野話(しげしげやわ)》(1766),《西山物語》(1768),《雨月物語》(1776)などを代表作とする前
46. よみほん【読本】
国史大辞典
〇))などがこの作風を受けついだが、ほかに建部綾足(たけべあやたり)が明和五年(一七六八)『西山物語』、安永二年『本朝水滸伝(すいこでん)』などで、古典的な雅文
47. 1768年〈明和5 戊子〉
日本史年表
この年 上田秋成 『雨月物語』 成る。 円山応挙 『七難七福図巻』 成る。 建部綾足 『西山物語』 刊。 賀茂真淵 『万葉考』 刊(~天保6年)。 【死没】
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落窪物語(日本古典文学全集・世界大百科事典・国史大辞典)
〔一〕今は昔のこと、中納言である人で、姫君を大勢持っていらっしゃった方がおられた。長女や次女の君には婿を迎えて、それぞれ西の対、東の対に派手に住まわせ申しあげなさって、「三女、四女の君には裳着の式をして差し上げよう」と、大事にお世話なさる
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