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新版 日本架空伝承人名事典
風魔小太郎
ふうまこたろう
戦国末期に活躍したとされる相州乱波の首領。『北条五代記』によれば、乱波とは「他家へ忍び入り、山賊、夜討、強盗して物盗ること上手なり。才智ありて、計略めぐらすこと、凡慮におよばず」といい、小太郎はこうした関東乱波のうち、小田原北条氏(後北条氏)に属した風魔一族の頭領であったという。元来は「風間」一族であったともいう。北条早雲に始まり、約一〇〇年間関東に君臨した小田原北条氏を陰で支えたのが乱波集団の風魔一族で、合戦に際してはあらかじめ敵の領国に忍び入り、城地を混乱させたり、得意の夜討で敵陣を攪乱したりしたという。
『北条五代記』は、風魔小太郎について次のように記す。身長七尺二寸(約二・二メートル)の大男で、筋骨隆々、眼はさかさまに裂け、口も両方に大きく裂けて四つの牙が出ていた。頭は福禄寿のように高く、鼻も高く、声を出せば五〇町(約五・五キロ)先まで聞こえ、低く乾いた幽かな声も出した。まさに「見まがふ事ハなきぞ……」と評された怪物であるが、これが小太郎の風貌を記した唯一のものである。こうした記述が、逆に小太郎の実像を誰も知らなかったということを物語っている。『北条五代記』には、次のような話も載る。風魔一党の中に甲州透破、すなわち武田氏の忍びの者たちが潜入した。それを察した小太郎は、夜の河原で車座になって談合中、突然松明を振って叫んだ。すると風魔一党はいっせいに立ち上がった。ところが甲州透破たちは意味が分からず、うろうろしているうちに正体を見破られ、捕えられて斬られた。「居すぐり」「立すぐり」という、紛れ込んだ敵を見破るための手段であった。その風魔一党も小田原北条氏が滅ぶと、闇の中に消えた。一説には、江戸に出て盗賊団になったという。なお「小太郎」の名は、代々風魔一党の頭目の通し名であったともいう。
[高橋 千劔破]
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日本人名大辞典
風魔小太郎
ふうま-こたろう
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戦国-江戸時代前期の乱波(らっぱ)の首領。
もと野武士で忍びの術を得意とした。相模(さがみ)(神奈川県)足柄下郡にすみ,北条氏につかえて武田勝頼の軍などとたたかった。北条氏没落後は江戸で盗賊として活動。慶長8年(1603)捕らえられて処刑されたという。風間ともかく。
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