《同》株細胞(strain cell).細胞寿命を超えて不死化し,培養条件下で安定に増殖し続けるようになった細胞.染色体構成は二倍体(diploid)から異数体(aneuploid)に変化し,表現形質もがん細胞様に変化していることが多い(⇒二倍体細胞).最初の樹立細胞株は,1943年にW.R.Earleにより,C3H系マウス皮下組織から分離されたL細胞(L cell)で,特に,クローン化された株であるL-929は,標準細胞株として種々の定量的実験に供されている.1951年にG.O.Geyらにより,ヒト子宮癌組織から分離されたHeLa細胞(ヒーラさいぼうHeLa cell)は,現存する人体由来の組織培養株のうち最も古く分離されたもので,世界各地の研究室で維持されている.ヒトパピローマウイルスのがん遺伝子をDNA中にもち,がん細胞としての性質を示すため,ウイルス学,がん研究,分子生物学などの研究材料として広く使われている.また,3T3細胞(3T3 cell)は,接触阻止現象に感受性をもつマウス胎児由来の樹立細胞株で,由来するマウスの系統によってSwiss 3T3,Balb 3T3,NIH 3T3の3種類があるが,いずれもG.J.Todaroらにより1960年代に樹立された.接触阻止に感受性をもち,1層の細胞層を形成したところで増殖と運動を停止するが,がん遺伝子やがんウイルス,発がん物質などにより接触阻止を喪失し重なり合って増殖する細胞が出現する.3T3細胞を用いたトランスフォーメーション実験により,数多くのがん遺伝子が分離された.
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