渋沢栄一伝記資料
しぶさわえいいちでんきしりょう
財団法人竜門社の編纂・刊行による渋沢栄一の伝記資料。竜門社では、栄一の死後、嫡孫で相続人だった渋沢敬三の意見により伝記の執筆と伝記資料の蒐集編纂とを分けて行う方針をとり、伝記の執筆を幸田露伴に、伝記資料の蒐集編纂を幸田成友に依頼した。こうしてまず、昭和七年(一九三二)十月から同十年十二月まで幸田成友を主任として数名の編纂員によって伝記資料の蒐集編纂が行われた。ついで十一年四月からは土屋喬雄が主任となり、十数名の編纂員とともに再び編纂を行い、七年の日子を費やし十八年三月末を以て完了した。第二次世界大戦後その刊行会が組織され、三十年四月第一巻が発刊されてから四十年二月までに全五十八巻が刊行された。さらに四十一年四月から四十六年五月にかけ別巻十巻も刊行されたので、全部で六十八巻となった。本巻五十八巻のうち、最初の三巻は第一編「在郷及ビ仕官時代」として天保十一年(一八四〇)の生誕から明治六年(一八七三)五月三十四歳で大蔵省を退官するまでの資料が、第四―二十九巻は第二編「実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代」として下野後の明治六年六月から同四十二年六月七十歳で金融関係を除く実業界から引退するまでの資料が、第三十―五十七巻は第三編「社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代」としてそれ以後昭和六年十一月九十二歳をもって死去するまでの資料が編集され、第五十八巻は索引編になっている。なお、第一編は全くの編年体であるが、第二・三編は事業別または事項別の形をとり、その下でそれぞれ編年体となっている。資料の配列は一項目ごとに綱文をたて、その次に基本資料・参考資料をおいて一括りとするという形がとられ、別巻十巻には日記・書簡・演説・談話・遺墨・写真の類が収められている。尨大なこの資料集は、単に渋沢栄一の伝記資料というだけでなく、ひろく近代日本史のための資料の役目をも果たすものといえる。
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