1. あて宮(うつほ物語)
日本古典文学全集
清原俊蔭(としかげ)は遣唐使に選ばれるが、途中で船が難破。波斯国(ペルシア)で天人から琴の奏法を伝授される。この俊蔭の一族の命運(主人公は、俊蔭の孫の仲忠)を軸
2. あえ‐もの[あへ‥]【和物】
日本国語大辞典
反 訓安不一云阿倍毛乃〉擣薑蒜以醋和之」*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「よきくだ物、酒殿の大御酒など召して、〈略〉あへものにとてなどのたまはせたり」*虎
3. あえ‐もの【肖物】
日本国語大辞典
あえものに、けふばかりつけよと、おほせられてたまへりしかば」*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「いとうらやましげなる人々にあへものにせさせん」*源氏物語〔1
4. あお‐がみ[あを‥]【青紙】
日本国語大辞典
〔名〕(1)薄青に染めた紙。*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「あをきすきばこにみちのく紙、あをがみなどつみていだし給へり」*内局柱礎抄〔1496~98〕上
5. あざ‐やか【鮮─】
日本国語大辞典
3)新しくて気持がよいさま。新鮮であるさま。いきのいいさま。*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「少将、あさのよそひあざやかにて、たいめんし給へり」*枕草子〔
6. あそび‐がたき【遊敵】
日本国語大辞典
〔名〕(「かたき」は相手の意)遊び相手。遊び友達。*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「万(よろづ)の事、せぬわざなく上手にものし給へる、御あそびがたきにし給
7. あて宮(うつほ物語) 115ページ
日本古典文学全集
あて宮 〔一〕あて宮の東宮入内決定 実忠・仲澄ら悲嘆 かくて、あて宮、東宮に参りたまふこと、十月五日と定まりぬ。聞こえたまふ人々、惑ひたまふこと限りなし。その中
8. あて宮(うつほ物語) 116ページ
日本古典文学全集
「いたづら人」は、無為の人、亡くなった人、などの意もあるが、ここでは、廃人、の意。仲澄は、あて宮への恋の苦悩に加え、母親を嘆き悲しませている自身のふがいなさを
9. あて宮(うつほ物語) 117ページ
日本古典文学全集
。寺詣でなどのために、山道を行くこと。仲澄は、同腹の妹あて宮へのかなわぬ恋に苦しみ続けたあげく、今や「いたづら人」になってしまった。あて宮の東宮入内が決定的にな
10. あて宮(うつほ物語) 118ページ
日本古典文学全集
裏は青とする説もある。便器の掃除などをする下級の女。あて宮の東宮入内に際し、家柄・容姿・才覚のいずれにおいても秀でた女房らが選抜されている。あて宮の今後は、東宮
11. あて宮(うつほ物語) 119ページ
日本古典文学全集
「俊蔭」巻([1]一二二ページ)の「かうざく」に同じ。必需品。源実忠。あて宮づきの女房で、あて宮の乳母子。→「藤原の君」[1]〔三〕。「燃ゆる火」は、あて宮への
12. あて宮(うつほ物語) 120ページ
日本古典文学全集
『今ものしたまへ』と、さものせむかし。今日はと 〔四〕 兵衛の君が、あて宮との仲介のために尽してくれた、これまでのすべてのこと。仲忠に続き、涼も、あて宮の東宮
13. あて宮(うつほ物語) 121ページ
日本古典文学全集
あないみじや」とて、涙を流したまひて、あて宮に、大宮「侍従の、いと心細くものしつるを、渡りて見たまへ。ものの初めに、いとうたてと思へど、対面せむとものしつれば」
14. あて宮(うつほ物語) 122ページ
日本古典文学全集
仲澄臥しまろびからくれなゐに泣き流す涙の川にたぎる胸の火と書きて、小さく押しもみて、御懐に投げ入る。あて宮、散らさじと思して、取りて立ちたまひぬるを見るままに、
15. あて宮(うつほ物語) 123ページ
日本古典文学全集
ここでは、あて宮と結ばれる可能性がまったくない、ということ。「います」は、「あり」「をり」の尊敬語。源仲頼。あて宮の求婚者の一人。仲頼は、前年の正月、正頼邸にお
16. あて宮(うつほ物語) 124ページ
日本古典文学全集
〔六〕仲澄、あて宮の歌と忠こその加持で蘇生 かく、みな集ひて、御車寄せて、「時なりぬ」と聞こしめすままに、宮、おとど、百済藍の色してうつ伏し臥して、願を立てたま
17. あて宮(うつほ物語) 125ページ
日本古典文学全集
かくて、参るすなはち参上りたまひぬ。御供の人、まかで の発言と解する説に従った。「よき折」とは、あて宮の文を仲澄に渡す機会のこと。一二五ページ四行目「うちに召
18. あて宮(うつほ物語) 126ページ
日本古典文学全集
しかし、蘇生できた最大の要因は、あて宮からの文を得たことにあるだろう。当のあて宮は、あやにくにも、この日、ついに入内している。ここで、延々と続いてきた「あて宮求
19. あて宮(うつほ物語) 127ページ
日本古典文学全集
「に」を補う説に従った。「宮」は、東宮。あて宮が東宮の寝所に参上すること。以下、「…上手にものしたまへる御遊びがたき」は、あて宮のことで、そういうあて宮を、東宮
20. あて宮(うつほ物語) 128ページ
日本古典文学全集
ずっと引き続いて、の意。あて宮以外の妃が東宮の寝所に奉仕する夜。東宮があて宮の御局にこもってしまうこと。あて宮に対する東宮の寵愛が並大抵のものではないことが分る
21. あて宮(うつほ物語) 129ページ
日本古典文学全集
春霞が天の岩戸を立ちこめるというのは、夜が明けないことをいう。あて宮は、格別の寵愛を受け、めでたく懐妊したという。いまだ東宮の御子が不在であるだけに、あて宮の立
22. あて宮(うつほ物語) 130ページ
日本古典文学全集
などかかるらむ」とのたまふ。〔九〕庚申の夜、あて宮東宮や所所に贈物をする かくて、二月中の十日、年の初めの庚申出で来たるに、東宮の君たち、御局ごとに。あて宮、さ
23. あて宮(うつほ物語) 132ページ
日本古典文学全集
れる。これには、入内後間もないあて宮からの挨拶という意味もあった。後宮におけるあて宮の評判にもかかわることなので、正頼家の支援態勢にもぬかりはない。一方、あて宮
24. あて宮(うつほ物語) 133ページ
日本古典文学全集
東宮の居所のこと。そこは、あて宮のいる藤壺(飛香舎)に近い殿舎ということになる。形容詞「寝ざとし」の語幹の用法。「寝ざとし」は、目が覚めやすい、の意。庚申の夜な
25. あて宮(うつほ物語) 134ページ
日本古典文学全集
正頼の四の君の婿。下句は、雁も通過しかねて鳴いているらしい、と詠むことで、庚申の今夜、東宮とあて宮がそろって起きているこの場のすばらしさをたたえている。源顕澄。
26. あて宮(うつほ物語) 135ページ
日本古典文学全集
底本「たのきぬ」を改める説に従った。あて宮方からかずけ物をたくさんもらって出て来た人々を狸になぞらえた皮肉。なお、平安時代の作品で「狸」が出てくる例は極めて稀。
27. あて宮(うつほ物語) 136ページ
日本古典文学全集
「沖つ白波」巻二九九ページに見える「蔵人の式部丞」と同一人物であろう。あて宮方の様子をうかがう女房たちの発言と解した。左大将源正頼の姫君、の意。あて宮のこと。一
28. あて宮(うつほ物語) 138ページ
日本古典文学全集
泣く泣く物語して帰りぬ。〔一二〕仲頼、あて宮に歌を贈る あて宮返歌 大将殿の君だちものしたまひつるにも、対面したまひて、物語などして帰りたまふにつけて、あて宮の
29. あて宮(うつほ物語) 139ページ
日本古典文学全集
こそ、いみじく」など聞こえたり。あて宮、あやしくもなりにけるかな。ものいひし時、いらへもせずなりにしを、かくあはれになりにたること。今は何かは、と思して、あて宮
30. あて宮(うつほ物語) 140ページ
日本古典文学全集
小鳥は目に近くすだけり。少将、堂を飾りて念誦したり。櫟、橡、鉢に入れて、時せさせたり。〔一三〕実忠、小野よりあて宮に長歌を贈る 宰相も、参りにしよし聞き果てて、
31. あて宮(うつほ物語) 141ページ
日本古典文学全集
自身が、あて宮を思うあまりに、何度も死にそうになるほど苦しんできたことをいう。「黄なる泉」は、黄泉、死者のゆく世界。「消えかへる」は、水の泡などのように、何度も
32. あて宮(うつほ物語) 142ページ
日本古典文学全集
〔絵指示〕ここは、源宰相、小野におはす。はらからの中将はいましたり。おとど御文あり。〔一四〕仲澄、あて宮に贈歌し絶命 あて宮の悲嘆 かくて、侍従の君も、参りたま
33. あて宮(うつほ物語) 143ページ
日本古典文学全集
仲澄に対する尊敬表現。「しも」は、自分の兄であることを強調する表現。「れ」は、受け身。あて宮の心中を表す言葉の中に、「思す」という、あて宮に対する語り手からの敬
34. あて宮(うつほ物語) 144ページ
日本古典文学全集
ことのみ思ほえて、いといとほしく思すこと限りなし。〔一五〕真菅、あて宮入内に立腹し愁訴、一族流罪 かくて、治部卿のぬし、あて宮の御ためにとて、家を造りて、調度を
35. あて宮(うつほ物語) 145ページ
日本古典文学全集
る。正頼の家司である和政をさす。この「大臣」は、官職名ではなく、身分が高い有力な臣下、の意。あて宮の父正頼のこと。以下、二行あとまで、真菅の滑稽きわまりない姿を
36. あて宮(うつほ物語) 146ページ
日本古典文学全集
馬、車に乗りて行く。子ども、結鞍に乗りて行く。非違の尉、佐などして追ひやれり。〔一六〕高基、あて宮入内を知り家を焼き山に籠る かくて、致仕の大臣、かかることを聞
37. あて宮(うつほ物語) 147ページ
日本古典文学全集
あり。あて宮、いろいろの花の中なる白露は萩の下葉を思ひしも出でじ 〔一七〕 る。→「藤原の君」[1]一七〇ページ。あて宮の東宮入内をさす。「施す」は、広く行き
38. あて宮(うつほ物語) 148ページ
日本古典文学全集
ある。里邸に退出したあて宮に、東宮からたびたび歌が贈られる。東宮にとっては、あて宮と離れていることが耐えがたい。東宮の格別の寵愛があらためて確認されるなか、いよ
39. あて宮(うつほ物語) 149ページ
日本古典文学全集
〔一八〕あて宮の皇子誕生と産養 大殿の君の嫉妬 かくて、あて宮の御産屋の設け、候ふ大人、童、みな白き装束をし、大宮なども、みなこなたにおはして待ちたまふに、十月
40. あて宮(うつほ物語) 150ページ
日本古典文学全集
の意。のちに、この后の宮は、あて宮(藤壺)方に対抗して梨壺腹の皇子の立坊を画策することになるが、いずれにしろ、この一節は儀礼的な挨拶の言葉とみるべきであろう。あ
41. あて宮(うつほ物語) 151ページ
日本古典文学全集
な問題となるはずであり、あて宮をとりまく人々の動向が注目される。この巻では、季明の大い君が一貫してあて宮を毛嫌いしているが、東宮の寵愛を望めるような女性ではない
42. あて宮(うつほ物語) 152ページ
日本古典文学全集
大きなる櫃に入れて出だされたり。上下合はせて、二百余人ばかりあり。上臈 〔一九〕 嵯峨院の大后の宮。あて宮にとっては母方の祖母。→一三〇ページ注三一。→一四九
43. あて宮(うつほ物語) 153ページ
日本古典文学全集
綾、箱に畳み入れて、式部大輔に女の装ひ一具、よき馬二つ、牛二つ。〔絵指示〕中の大殿。帳立て、あて宮、白き御衾着て臥したまへり。乳母も白き綾の袿一襲、白き綾の裳、
44. あて宮(うつほ物語) 154ページ
日本古典文学全集
「ごとし」の語幹。東宮の妃たちのなかでも格別の寵愛を受けているあて宮は、翌年にも男御子を出産したという。巻末の最後の一文は、あて宮という女性のこのうえない幸福と
45. あまの 岩戸(いわと)
日本国語大辞典
まにはいとどながめぞまさりけるあまのいはとにひまや見ゆると」*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「めづらしき君に逢ふ夜は春霞あまのいはとをたちもこめなん」*源
46. いい‐け[いひ‥]【飯笥】
日本国語大辞典
「大直(おほなほひの)神一座、〈略〉供御飯笥(いひけ)一合」*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「御前にしたんのついがさね廿、ぢんのいゐけ・御つきどもろくろに
47. いい‐たわぶ・る[いひたはぶる]【言戯】
日本国語大辞典
みなへしには猶なびきけり、今日の判をみればなどいひたはぶれて」*宇津保物語〔970~999頃〕藤原の君「このあて宮の名高くて聞え給ふを、いかでと思ひて、いひたは
48. いうかい‐な・し[いふかひ‥]【言甲斐無】
日本国語大辞典
人の死を婉曲に表わす)どう言っても取り返しがつかない。むなしい。*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「かの君は、いふかひなくなり給ぬるものを」*源氏物語〔10
49. いうかぎり‐な・し[いふかぎり‥]【言限無】
日本国語大辞典
。言い表わしきれないほどである。この上もない。いうかたなし。*宇津保物語〔970~999頃〕あて宮「ふみを見給ふに、いふかぎりなくさがなきことをつくれり」*源氏
50. 言う限り無し
故事俗信ことわざ大辞典
きい。言い表わしきれないほどである。この上もない。いうかたなし。 宇津保(970~999頃)あて宮「ふみを見給ふに、いふかぎりなくさがなきことをつくれり」源氏(