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【現代語訳】
一ノ一
ある日、垂示して言われた。『続高僧伝』の中に、次のような話が出ている。ある禅師の門下に一人の僧があった。金銅の仏像と、また、釈尊のご遺骨とを崇敬して取り上げ、衆寮などにいる時も、いつも香を焚いて礼拝し、心から敬って供養した。
ある時、師の禅師が、「お前が崇敬している仏像とご遺骨は、後になってお前のためによくないことがあろう」と言われた。ところが、その僧はこの言葉を聞き入れなかった。そこで師が、「これは天魔波旬が働きかけることだ。早くこれを捨てよ」と言われたところ、その僧がむっとしてその場から出て行ったので、師は直ちに僧の後ろから言葉をかけて、「お前は、持っている箱を開けて、中のものを見てみよ」と言われた。そこでその僧は、怒ったまま箱を開いて見ると、毒蛇がとぐろを巻いて寝ていたということだ。
この話を考えてみると、仏像と舎利は釈迦如来の遺像・遺骨であるから、謹んで敬うべきではあるが、一途にそれらを尊敬して悟りを得られると思うなら、かえって誤った考えである。天魔・毒蛇の領有する原因となるのである。仏の説かれた教えでは、仏像・舎利を敬えばその功徳がきっとある
【目次】
正法眼蔵随聞記(扉)
凡例
正法眼蔵随聞記(扉)
正法眼蔵随聞記 第一
一ノ一 一日、示して云はく、『続高僧伝』の中に、
一ノ二 また云はく、戒行・持斎を守護すべければと
一ノ三 或る時、示して云はく、仏照禅師の会下に、
一ノ四 一日示して云はく、人、その家に生れ、その
一ノ五 示して云はく、広学・博究は叶ふべからざる
一ノ六 或る時、奘問うて云はく、「如何なるか、こ
一ノ七 夜話に云はく、悪口を以て、僧を呵嘖し、毀
一ノ八 また、物語に云はく、故鎌倉の右大将、始め
一ノ九 夜話に云はく、昔、魯仲連と云ふ将軍ありき
一ノ十 法談の次に、示して云はく、たとひ、我が道
一ノ十一 示して云はく、無常迅速なり。生死事大なり
一ノ十二 示して云はく、昔、智覚禅師と云ひし人の発
一ノ十三 夜話に云はく、祖席に禅話を心得る故実は、
一ノ十四 夜話に云はく、世間の人も、衆事を兼ね学し
一ノ十五 示して云はく、人は思ひ切りて、命をも棄て
一ノ十六 示して云はく、学道の人、衣糧を煩ふ事なか
一ノ十七 雑話の次に云はく、世間の男女・老少、多く
一ノ十八 夜話に云はく、世人、多く、善き事を作す時
一ノ十九 夜話に云はく、もし人来て用事を云ふ中に、
一ノ二十 夜話に云はく、今、世・出世間の人、多分、
一ノ二十一 示して云はく、学道の人、世情を捨つべきに
正法眼蔵随聞記 第二
二ノ一 示して云はく、行者、先づ、心をだにも調伏
二ノ二 示して云はく、故僧正、建仁寺におはせし時
二ノ三 夜話に云はく、唐の太宗の時、魏徴奏して、
二ノ四 また示して云はく、隋の文帝の云はく、「密
二ノ五 夜話に云はく、学道の人は、人情を棄つべき
二ノ六 夜話に云はく、故建仁寺僧正の伝をば、顕兼
二ノ七 また云はく、故公胤僧正の云はく、「道心と
二ノ八 夜話に云はく、故僧正の云はく、「衆僧、各
二ノ九 また、或る人、勧めて云はく、「仏法興隆の
二ノ十 また云はく、学道の人、教家の書籍を読み、
二ノ十一 示して云はく、我、在宋の時、禅院にして、
二ノ十二 夜話に云はく、真実、内徳なくして、人に貴
二ノ十三 夜話に云はく、学道の人、世間の人に、智者
二ノ十四 夜話に云はく、今、この国の人は、或は行儀
二ノ十五 一日、学人問うて云はく、「某甲、心に学道
二ノ十六 夜話に云はく、人多く遁世せざることは、我
二ノ十七 夜話に云はく、古人の云はく、「朝に道を聞
二ノ十八 夜話に云はく、学人は、必ず、死すべきこと
二ノ十九 或る時、奘問ひて云はく、「衲子の行履、旧
二ノ二十 夜話の次に、奘問うて云はく、「父母の報恩
二ノ二十一 一日、示して云はく、人の利鈍と云ふは、志
二ノ二十二 示して云はく、大宋禅院に、麦・米等を揃へ
二ノ二十三 因みに問うて云はく、「学人、もし、『自己
二ノ二十四 一日、請益の次に云はく、近代の僧侶、多く
二ノ二十五 示して云はく、治世の法は、上、天子より、
二ノ二十六 また云はく、我が大宋の天童禅院に居せし時
二ノ二十七 また云はく、道を得ることは、心を以て得る
正法眼蔵随聞記 第三
三ノ一 示して云はく、学道の人、身心を放下して、
三ノ二 或る時、さる比丘尼の云はく、「世間の女房
三ノ三 夜話に云はく、今時の世人を見るに、果報も
三ノ四 夜話に云はく、学道の人は、最も貧なるべし
三ノ五 示して云はく、宋土の海門禅師、天童の長老
三ノ六 示して云はく、唐の太宗、即位の後、古殿に
三ノ七 示して云はく、衲子の用心、仏祖の行履を守
三ノ八 また云はく、古人、「その人に似ずして、そ
三ノ九 示して云はく、人は、必ず、陰徳を修すべし
三ノ十 また云はく、今、仏祖の道を行ぜんと思はば
三ノ十一 一日、僧来つて、学道の用心を問ふ。 示し
三ノ十二 また云はく、学道の人、多く云はく、「もし
三ノ十三 僧の云はく、「某甲、老母現在せり。我、即
正法眼蔵随聞記 第四
四ノ一 一日、参学の次に、示して云はく、仏道の人
四ノ二 示して云はく、学人の第一の用心は、先づ、
四ノ三 一日、示して云はく、古人の云はく、「善者
四ノ四 嘉禎二年臘月除夜、始めて、懐奘を興聖寺の
四ノ五 一日、示して云はく、俗人の云はく、「何人
四ノ六 示して云はく、学道の人、悟りを得ざる事は
四ノ七 示して云はく、学人、初心の時、道心有りて
四ノ八 示して云はく、愚痴なる人は、その詮なき事
四ノ九 示して云はく、「三復うして、後に云へ」と
四ノ十 示して云はく、善・悪と云ふ事、定め難し。
四ノ十一 示して云はく、世間の人、多分云はく、「学
四ノ十二 示して云はく、俗の云はく、「城を傾くる事
四ノ十三 示して云はく、楊岐山の会禅師、住持の時、
四ノ十四 問うて云はく、「近代、遁世の人は、各々、
四ノ十五 示して云はく、伝へ聞く。実否は知らざれど
正法眼蔵随聞記 第五
五ノ一 示して云はく、仏法のためには、身命を惜し
五ノ二 示して云はく、学道の人は、我がために仏法
五ノ三 一日、示して云はく、俗人の云はく、「宝は
五ノ四 示して云はく、昔、国皇あり。国を治めて後
五ノ五 僧問ひて云はく、「智者の無道心なると、無
五ノ六 示して云はく、出家人は、必ず、人の施しを
五ノ七 示して云はく、古に謂はゆる、「君子の力、
五ノ八 示して云はく、古人云はく、「光陰、空しく
五ノ九 示して云はく、学道は、須らく、吾我を離る
五ノ十 奘問うて云はく、「叢林、勤学の行履、如何
五ノ十一 一日、参の次に、示して云はく、泉大道の云
五ノ十二 示して云はく、先師、全和尚、入宋せんとせ
五ノ十三 示して云はく、人多く云ふ、「某、師の言葉
五ノ十四 一日、雑談の次に、示して云はく、人の心、
五ノ十五 示して云はく、大慧禅師、或時、尻に腫物出
五ノ十六 示して云はく、諺に云ふ、「唖せず、聾せざ
五ノ十七 示して云はく、大慧禅師の云はく、「学道は
五ノ十八 示して云はく、古人の云はく、「所有の庫司
五ノ十九 示して云はく、古人の云ふ、「百尺の竿頭に
五ノ二十 示して云はく、衣食の事、かねてより思ひあ
五ノ二十一 示して云はく、学人、各々知るべし。人々大
五ノ二十二 示して云はく、学道の最要は、坐禅、これ第
正法眼蔵随聞記 第六
六ノ一 示して云はく、愧づべくんば、明眼の人を愧
六ノ二 示して云はく、或人の云はく、「我、病者な
六ノ三 示して云はく、学道の人、衣食を貪ることな
六ノ四 雑話の次に、示して云はく、学道の人、衣食
六ノ五 一日、示して云はく、古人の云はく、「聞く
六ノ六 示して云はく、学道の人、後日を待つて学道
六ノ七 示して云はく、海中に、竜門と云ふ処あり。
六ノ八 示して云はく、法門を問ひ、或は、修行の法
六ノ九 示して云はく、当世、学道する人、多分、法
六ノ十 示して云はく、唐の太宗の時、異国より千里
六ノ十一 示して云はく、学道の人、参師・聞法の時、
六ノ十二 示して云はく、道者の用心、常に、人に異な
六ノ十三 示して云はく、仏々祖々、皆、本は凡夫なり
六ノ十四 示して云はく、諺に云はく、「虚襟に非ざれ
校訂付記
出典集
解説
一 書名と成立時期
二 説示者と編者
三 文学的意義
四 底本について
参考文献
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