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  11. 一言芳談

一言芳談

ジャパンナレッジで閲覧できる『一言芳談』の国史大辞典・日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典のサンプルページ

国史大辞典
一言芳談
いちごんほうだん
中世の念仏行者らの信仰をめぐる法語類を集録した書。もと一巻。編者は不詳。頓阿が編集したとの説もあるが信じ難い。『徒然草』に本書からの引用があるので、『徒然草』成立時を最下限としてそれ以前半世紀ぐらいの間(一二八〇―一三三〇)に成ったと思われる。法然をはじめ浄土信仰者三十余名の法語を百五十三ヵ条にわたって記録している。おおむね短小簡潔な法語で、名利を離脱すべきこと、無常を深く認識すべきこと、ひたすら念仏行を実践すべきことなどを説いたものが多い。収載法語数の最も多い者は敬仏(三十二条)で、以下法然(十六)、明禅(十五)、聖光(七)、明遍(七)、然阿(六)、行仙(五)の順で次第し、他は一、二条の収載にとどまる。先行の類書『祖師一口法語』と重複する項が六十三条ある。『続群書類従』釈家部所収の本(一巻)が古体と思われるが、本文は慶安元年(一六四八)の板本(二巻)の方が信頼できる。他に刊本として『日本古典文学大系』八三などがある。
[参考文献]
小西甚一訳『一言芳談』(『古典日本文学全集』一五)、宮坂宥勝『仮名法語集』解説(『日本古典文学大系』八三)、禿氏祐祥『一言芳談抄・祖師一口法語』解説(『仏教古典叢書』一)、森下二郎校訂『標註一言芳談抄』(『岩波文庫』)、多屋頼俊編『校注一言芳談』(『法蔵文庫』)、野村八良『鎌倉時代文学新論』、『群書解題』一七、三田全信「一言芳談の編者について―頓阿と推考―」(『仏教文化研究』三)、石上善応「一言芳談について」(『宗教文化』一三)
(山田 昭全)


日本大百科全書
一言芳談
いちごんほうだん

浄土往生(おうじょう)を心の支えとして、世俗を捨て去ることを理想とした一遁世者(とんせいしゃ)が、自分の心にかなった法談を編録した書。鎌倉時代後期の成立。主として法然(ほうねん)(源空)の念仏思想の影響を受けた念仏者の法談150余条を収録しているが、教理への関心は薄く、法然の説く本願他力の思想への理解は浅い。しかし、後世(ごせ)を願う念仏によって、名誉や利益に執する心を離れ、現世での生活を、必要の最小限にとどめて過ごすべきことを説いた片言隻句(へんげんせっく)には、世俗の価値観に対する鋭い逆説が語られている。
[伊藤博之]



改訂新版・世界大百科事典
一言芳談
いちごんほうだん

鎌倉後期の仏教書。念仏行者の信仰を伝える法語153条を集めたもので,無常の認識と現世の否定に徹すべきことを説くその思想と,簡潔なかなまじりの文章から,中世の仮名法語を代表する書とされている。敬仏,法然,明禅ら30余人の法語を収め,《徒然草》に引用されていることから,鎌倉後期の成立と考えられるが編者は不明。先行の《祖師一口法語》と重なる法語が多い。
[大隅 和雄]

[索引語]
仮名法語
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1. 一言芳談
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3. いちごんほうだん[イチゴンハウダン]【一言芳談】
日本国語大辞典
浄土各流の高僧中、法然、聖光、良忠、貞慶など二十余師の法語百六十余を雑然と集めたもの。一巻本、二巻本、三巻本があるが、一巻本が原型とされる。編者不明。鎌倉後期の ...
4. いちごんほうだん【一言芳談】
国史大辞典
一)、森下二郎校訂『標註一言芳談抄』(『岩波文庫』)、多屋頼俊編『校注一言芳談』(『法蔵文庫』)、野村八良『鎌倉時代文学新論』、『群書解題』一七、三田全信「一言 ...
5. あい‐が【愛河】
仏教語大辞典
人は愛欲におぼれやすいことを河に喩えていったもの。 一言芳談 下 「今生の愛河をわたらんとおもふに(略)称名するほかには別の様なき也」 あい‐が 愛河 の橋梁  ...
6. あい‐もつ【愛物】
仏教語大辞典
愛用の品。大切にしている品物。 一言芳談 下 「出離に三障あり。一には所持の愛物、本尊・持経等まで」  ...
7. あ・う[あふ]【合・会・逢・遭】
日本国語大辞典
1〜14頃〕行幸「たけだちそぞろかにものし給ふに、太さもあひて」*徒然草〔1331頃〕九八「一言芳談とかや名づけたる草子を見侍りしに、心にあひて覚えし事ども」( ...
8. あかご‐ねんぶつ【赤子念仏】
日本国語大辞典
〔名〕赤ん坊のような無垢な気持でとなえる念仏。*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「あか子念仏がよきなり」 ...
9. あかご‐ねんぶつ【赤子念仏】
仏教語大辞典
理屈ぬきの念仏。赤ん坊が無心に母を求めるのに喩える。 一言芳談 上 「あか子念仏がよきなり」  ...
10. あ・ふ
全文全訳古語辞典
❶二つ以上のものが、一つになる。ぴったりと重なる。 「『一言芳談』とかや名づけたる草子を見侍りしに、心にあひて覚えし事ども」〈徒然草・98〉『一言芳談』とかいう ...
11. い‐ぎょう【意楽】
仏教語大辞典
しようと思い願うこと。心に思う願い。 沙石集 二・九 「慈悲の意楽をなす」 2 転じて、心がけ。心がまえ。 一言芳談 上 「出離生死のほかはなに事もいかにもあら ...
12. いち‐ぎょう[‥ギャウ]【一行】
日本国語大辞典
専心〓即是一心也」*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「一行におもひさだめて後、人のとかくいへばとて、変改の条無下の事な ...
13. いち‐ねん【一念】
仏教語大辞典
思〔に〕」 7 (イ)一遍の念仏。一声の念仏。 教行信証 行 「弥勒付属之一念、即是一声」 一言芳談 上 「一念に一度の往生をあてをき玉へる本願」 (ロ)念仏を ...
14. いちねん 三百六十日(さんびゃくろくじゅうにち)
日本国語大辞典
(陰暦の一年は約三百六十日であるところから)一年じゅう。一年間。*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「一年(ネン)三百六十日は、みな無常にしたがふべき也」*浄瑠 ...
15. いちぶ‐しじゅう【一部始終・一伍一什(ジフ)】
日本国語大辞典
始めから終わりまで。*私聚百因縁集〔1257〕八・一「霊峰即ち妙法蓮華経の一部始終(いちフシジウ)なり」*一言芳談〔1297〜1350頃〕三・学問「又学問すべし ...
16. いんじ‐たいじ【婬事対治】
仏教語大辞典
性的欲望(婬欲)を押さえること。 一言芳談 下 「婬事対治、不浄無常は猶次也。只以貧為最」  ...
17. 宇治拾遺物語 477ページ
日本古典文学全集
さもしくさせる所だ」という評言は、「むかしの坂東の人、京に長居しつれば、臆病になる也」という『一言芳談』の言葉を連想させるが、俗世の本質をついて痛烈かつ爽快。奈 ...
18. おお‐ざかい[おほざかひ]【大堺】
日本国語大辞典
〔名〕屋敷の境の垣。*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「寄宿しける在家の、四壁、大堺(ザカイ)みなやぶれて」 ...
19. かみ 一枚(いちまい)
日本国語大辞典
薦被り無宿の者は死と紙一枚程ならでは隔てぬ者成る故」(3)きわめて価値が低いことのたとえ。*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「敬仏房の云、後世者の法文は紙(カ ...
20. かみ‐ぎぬ【紙衣】
仏教語大辞典
「 かみこ【紙子】 」に同じ。 一言芳談 下 「名利を捨といへばとて、同行をはぢず、紙衣ひとつもとめて、きるほどの事をいふにはあらず」  ...
21. き‐み【気味】
日本国語大辞典
1331頃〕一七四「人事おほかる中に、道をたのしぶより気味ふかきはなし。これ実の大事なり」*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「かまへて念仏に気味(キミ)おぼえ ...
22. くう‐がん【空観】
仏教語大辞典
はなく、すべて空であると観じること。 →空 維摩経義疏 中二・菩薩品 「空観不見形色所処」 一言芳談 上 「時々せし空観と念仏とぞ、後世の資粮となる」 2 成実 ...
23. く・る【繰】
日本国語大辞典
(6)順々に数えてゆく。(7)書籍などのページをめくる。また、めくって必要なことがらを探し出す。*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「如形(かたのごとく)往生要 ...
24. ぐんしょるいじゅう【群書類従】
国史大辞典
北院御室拾要集・妙香院宮御参務日記 八三七 愚迷発心集・為盛発心集 八三八 無住妻鏡 八三九 我慢抄 八四〇 一言芳談 八四一 仁空置文・真恵上人御定 八四二  ...
25. げ‐ろう[‥ラフ]【下臈】
日本国語大辞典
頃か〕一五・二七「今昔、比叡の山の西塔に延昌僧正と云ける人の、未だ下臈にて修行しける時に」*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「むかしは後世をおもふ者は、上臈( ...
26. げんらい‐えこく【還来穢国】
仏教語大辞典
極楽浄土に生まれた人が、またこの世の人を救うためにこの世に戻ってくること。 一言芳談 下 「利生は還来穢国を期すべし」  ...
27. こくびゃく を 弁(わきま)う
日本国語大辞典
」*海道記〔1223頃〕豊河より橋本「浪による海松布は心なけれども黒白を弁へ」*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「黒白(コクビャク)を弁へざる程の物になりて」 ...
28. こころ に 合(あ)う
日本国語大辞典
〕東屋「かたみにうちいさかひても、心にあはぬことをばあきらめつ」*徒然草〔1331頃〕九八「一言芳談とかや名づけたる草子を見侍りしに、心にあひて覚えし事ども」* ...
29. こころ に 入(い)る
日本国語大辞典
ざま、手うち書き、絵などの心にいり、さいつ頃まで御心に入りてうつ伏し伏して書き給しものを」*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「念仏、心に入ときは、飯にもあらず ...
30. こん‐じょう[‥ジャウ]【今生】
日本国語大辞典
〔1280〕「設ひ又今生には父母に孝養をいたす様なれども、後生のゆくへまでは問ふ人はなし」*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「今生(コンジャウ)は一夜の宿り、 ...
31. ごせ‐しゃ【後世者】
日本国語大辞典
ごせもの。*法然消息文〔1212頃〕或人のもとへつかはす御消息「又後世者とおぼしき人の申げに候は」*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「蛇の心をば蛇がしるやうに ...
32. ごせ‐もの【後世者】
日本国語大辞典
〔名〕「ごせしゃ(後世者)」に同じ。*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「後世者(ゴせモノ)といふものは、木をこり水をくめども、後世をおもふものの」 ...
33. ごせ‐もん【後世門】
仏教語大辞典
浄土門のこと。浄土の法門。浄土の教え。 一言芳談 下 「人々、後世門の事につきて、あらまほしき事どもねがひあひたりけるに」  ...
34. ごん‐ぐ【欣求】
仏教語大辞典
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35. さい‐しょ【最初】
仏教語大辞典
さい‐しょ 最初 の一念 仏の救いを信じてすべてを託そうと思い立った最初の信心。 →初一念 一言芳談 下 「往生は最初の一念に決定せり」 さい‐しょ 最初 の一 ...
36. 最初の一念
仏教語大辞典
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37. 佐藤忠信
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39. さ‐ね【実・核】
日本国語大辞典
文稍に異(け)なりといへども、其の実(サネ)一なり」*観智院本類聚名義抄〔1241〕「誠 マコト サネ」*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「今は学問し候べき器 ...
40. さんしん‐しょうみょう【散心称名】
仏教語大辞典
平生の乱れた心のまま気が散るままで念仏すること。 一言芳談 上 「穢土を厭心候はゞ、散心称名をもて往生候事うたがひなく候」  ...
41. しえん‐しょうりゃく【資縁省略】
仏教語大辞典
衣食住は修行の助けとなるものの、それにかかずらえば逆に修行のさまたげにもなるとして、万事、最小限に止めること。 一言芳談 上 「浄土谷の法蓮上人は、資縁省略のう ...
42. しき‐とん【色貪】
仏教語大辞典
色界における貪欲の煩悩。これを起こすことによって色界を離れることができなくなる五上分結の一つ。 一言芳談 下 「往生のさはりの中に貪愛にすぎたるはなし。衆悪のさ ...
43. した‐て【下手】
日本国語大辞典
*千五百番歌合〔1202〜03頃〕一三二二番「それもかたみの有明の月にならべばしたてにやなり侍らん」*一言芳談〔1297〜1350頃〕下「心をばうはてになして、 ...
44. しちかにち‐さんろう【七ケ日参籠】
仏教語大辞典
七日間のおこもり。社寺などに参詣して神仏に祈願するもの。 一言芳談 上 「恵心僧都、伊勢大神宮へまいりて七ケ日参籠はつる夜の夢に」  ...
45. しつ【失】
日本国語大辞典
*徒然草〔1331頃〕一三〇「されば、始め興宴より起りて、長き恨を結ぶ類多し。これみな争ひを好む失なり」*一言芳談〔1297〜1350頃〕上「いたづらにねぶりゐ ...
46. 沙石集 27ページ
日本古典文学全集
高野山蓮華谷に蓮華三昧院を開き、念仏者に交り、空阿弥陀仏と名乗る。元仁元年(一二二四)没。八三歳。未詳。『一言芳談』に「黒谷善阿弥陀仏」とあり、貞慶との交友を語 ...
47. 沙石集 200ページ
日本古典文学全集
ここでは談義に参列して講師の説法を聞いた僧を指す。結論。究極の要点。「秦太瓶」は糠味噌を入れる壺。この言葉は『一言芳談』に「俊乗房云、『後世を思はん者は、糂粏瓶 ...
48. 沙石集 202ページ
日本古典文学全集
ここに、毒箭の譬喩の短い文がある。空の思想から、執着を捨てるべきことを説く。俊乗房の言葉は『一言芳談』では浄土門の遁世者の言葉として理解されるが、無住は大乗の空 ...
49. 沙石集 595ページ
日本古典文学全集
付さずにそのまま続ける。 群馬県勢多郡新里村山上。浄土宗の系譜である『蓮門宗派』では禅勝の弟子とする。『一言芳談』にその法語が残り、『念仏往生伝』の編者と目され ...
50. しゅうきょうぶんがく【宗教文学】 : 中世/(一一)
国史大辞典
随聞記』、日蓮の消息、一遍の語録などはその例である。これらを法語文学と呼ぶ。その一つである『一言芳談』は『徒然草』にも引かれ、深い影響を及ぼしている。中世末期に ...
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