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松井栄一先生を悼む

2018-12-17

2018年12月3日。『日本国語大辞典』の初版と第二版を導いてくださった、松井栄一(しげかず)先生が、お亡くなりになりました。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

大正15年12月1日生まれですので、享年92歳ということになります。3年ぐらい前までは、お元気に小学館の国語辞典編集部に見えて、第二版では補いきれなかった用例などを採取していらっしゃいました。

いつも淡々と古書展を巡り、明治から大正・昭和にかけての小説、エッセイなどから一級の資料を探し出しては、ことばを拾い、大辞典に載っていないものはもちろん、載っているものでもさらに古い例や意 味の違う例があればそれを引き写していらっしゃいました。あたかも、『日本国語大辞典』のことばと用例がすべて脳内にあり、いつでも引き出せるかのようでした。

先生は、祖父が『大日本国語辞典』の編者・松井簡治で、父・驥(き)さんが法律関係の仕事を辞めて引きついだその改訂作業をさらに引きつぐことになります。昭和35年(1960)、戦災を免れた資料(8万枚のカードなど)をもとに新しい国語辞典を作りたいという申し出が小学館からあったときに快諾されたのです。以来、生涯にわたって『日本国語大辞典』のために尽くされました。

『大日本国語辞典』『日本国語大辞典』と100年を超えて引きつがれてきた国語辞典の実証主義と歴史主義。私たちはそれを身近で教えていただきました。ことばをそのときどきの実例によって解釈し、説明し、証明するというその精神を、絶やさず次世代に引きついでいくことが私たちの責務であると、今は感じている次第です。

松井栄一先生、長い間お導きいただき、ありがとうございました。

佐藤 宏(『日本国語大辞典 第二版』編集長)


■松井先生のお仕事と生涯を知るためには以下の著書をご覧ください。

松井栄一著『出逢った日本語・50万語—辞書作り三代の軌跡』
筑摩書房:http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480430908/
amazon:https://amzn.to/2LeSE92

松井栄一著『日本人の知らない 日本一の国語辞典』
小学館:https://www.shogakukan.co.jp/books/09825204
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2018-12-17 written by ゲスト