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カムカムに連れられて

2022-03-25

その神社は田んぼのあぜ道の向こうの林の中にあった。凛とした拝殿、一目見て胸が熱くなった。

滋賀の湖東を走る近江鉄道・五箇荘(ごかしょう)駅から歩いて20分。連休中日の昼下がり、国道は車で混んでいたものの、すれ違う人はあまりいない。しかしその神社の中に入ると、家族連れ、女子大生風の二人組、祖父母と孫……代わる代わる人が出たり入ったりしていた。

先週金曜日の朝、3代ヒロイン100年のファミリーヒストリーを描く朝ドラ「カムカムエヴリバディ」をいつものように視聴。この日は1994年8月15日の設定で、2代目ヒロインるいと戦死したはずの父・稔との神社拝殿前の邂逅シーンが描かれた。見終わった直後、朝ドラフリーク仲間の先輩に「どこかでカムカムについて語りたいっす。明日、いかがでしょう」と泣きながらメッセージを送信。翌朝8時に品川から新幹線に乗って、京都へと旅立ったのだ(あれ? どこまで行って語るのん?)。まずは京都・太秦映画村の無料(!)イベントスペースで開催中の「カムカムエヴリバディ」展に行き、感動(稔さんの辞書やら婚姻届けやらるいの命名書やらとにかく盛りだくさん!)。映画村の中に入ってここでも撮影していたんだなとまた、感動(回転焼も食べられます)。映画村オンリーの弾丸ツアーと決めてつけていたが、まあ、じゃあどうせなら、昨日のるいと稔が出会った神社に行くか!となって、大城(おおぎ)神社にたどり着いたのだ。

大城神社は『古事記』『日本書紀』などに出てくる高皇産霊神(たかみむすびのかみ)と学問の神様・菅原道真公を主神としている。「聖徳太子創建と伝え、嘉応二年(一一七〇)現在地に移り、以後山前やまさき庄をはじめとする近隣の崇敬を集め、佐々木氏の観音寺城(現蒲生郡安土町)の守護神としても信仰された」(ジャパンナレッジ「日本歴史地名大系」「金堂村」)といった由緒のある神社である。

初代ヒロインのるいの母・安子の時代は岡山が舞台。神社も滋賀にある大城神社ではなく、岡山にある朝丘神社という設定である。日本とアメリカがこじれていくなか「早くパーマネントがかけられますように」と無邪気に願い、稔と愛を誓い合い太平洋戦争出征までのわずかな幸せな日々を過ごし、空襲で家族を次々失ったうえ稔の戦死の知らせに絶望し……この拝殿の前で安子のさまざまなドラマが繰り広げられた。

さて、我々は裏側から来たのでよくわからなかったが、この神社が鎮座する五個荘金堂地区は「三方よし」で知られる近江商人発祥の地で、国の重要伝統的建造物群保存地区。東近江市ホームページには「町並みは古代条里制地割を基本とし陣屋と寺院を中心に形成された湖東平野の典型的な農村集落で、近江商人の本宅群と伝統的な農家住宅がともに優れた歴史的景観をよく伝え、我国として価値が高い」とある。陣屋がズラリ建ち並んだ町自体がまさに映画村のよう。水路には豪華絢爛な鯉がのびのび泳いでいた。大城神社の境内はおみくじやお守りを売っている社務所的なものはなく、でも落ち葉が散らかっているわけでもない。きっと地域の人が朝な夕な掃除をしてくれているのだろう。

「カムカム」は4月8日に最終回を迎える。英語がヒロインたちを素敵な世界に連れて行ってくれる(であろう!)ように、素敵なパワースポットに連れて行ってくれた「カムカム」に感謝。

2022-03-25 written by かおるん
太秦映画村の「カムカムエヴリバディ」展はなんと27日に終了。期間はわずか2週間。ぜひぜひ全国巡回してほしい。