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1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。

東洋文庫 794

『子不語4』(袁枚著 手代木公助訳)

2020/04/02
アイコン画像    人の格は、生まれか育ちか?
転生した高僧の色狂い人生

 生まれか、育ちか。

 そんなことを考えさせられる(というよりギョッとさせられる)話を、『子不語4』に見つけました。

 いわゆる輪廻、生まれ変わりの話です。例えばあのダライ・ラマ14世は、13世の生まれ変わりとされています。高僧が得たお告げによって見つけられた子が、13世の遺品当て問題にことごとく正解したことから、13世の転生だとチベット政府が認定し、14世となりました。

 「琉璃廠の春画」もそういう話です。五台山の僧、清涼老人が亡くなった時、時を同じくしてチベットで一人の子どもが生まれました。「清涼」(しょうりょう)は仏教語で〈心の澄みきった、さわやかな悟りの境地〉(ジャパンナレッジ「例文 仏教語大辞典」)のことを指しますので、この名にはそういう意味も含まれているのでしょう。

 で、この子ども、8歳になって突然言葉を発します。


 〈わしは清涼老人だ〉


 いろんな証拠から事実と認定され、この子どもは〈活き仏様〉と崇め奉られます。

 ダライ・ラマ14世の場合は、手厚い教育を受けました。では清涼老人2世はどうか。そういう描写はまったくありません。それどころか、骨董書籍の街として知られる「琉璃廠」で、春画を発見。


 〈つくづくとこれを玩賞して去り難い風情であった〉


 この時点で、「それはアカン」と突っ込みたいところですが、〈活き仏様〉ですからね。何でもアリなわけです。

 さあどうなったか。


 〈五台山に帰ると、山麓一帯の淫売婦や巨大な性器の美少年を、あまねく探し集めては、終日淫楽にふけらせた〉


 本当は本人も登場するAV顔負けのエログロな描写もあるのですが、あまりにもひどいので自主規制。ひと言でいえば、色に狂ったんですな。

 それを見た旧友(前世の友人)が憤慨、一喝しました。


 〈これが活仏のやることか!〉


 なんと答えたと思います?


 〈男が歓び、女が愛するに、何の妨げなし。一点の活力あらば、すなわちこの世界成る〉


 と平然としていたといいますから、これもある種の境地なのでしょうか。……いいえ、ただのアホでしょう。何をしたわけでもないのに、生まれだけで崇め奉ってりゃ、そりゃおかしくもなりますな。



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『子不語4』(袁枚著 手代木公助訳)
今週のカルテ
ジャンル文学
成立18世紀後半の中国(清代)
読後に一言何度注意されても相手を野次るというのも、やっぱり育ちなんですかねぇ。
効用「色欲」を扱った話は、『子不語』に多く載っています。神が人に懸想する話もあって、まあ神にも色欲があるといいますか……。
印象深い一節

名言
熱が高いときは、牀(ベッド)の中に六、七人もいて雑魚寝をしてる感じであった。うなり声などたてたくないのに、奴らは私を痛め付けて唸らせる。(著者自身のエピソード、438「わが家の些事」)
類書輪廻転生エピソードを数多載せる『日本霊異記』(東洋文庫97)
中国六朝時代の短編小説集『幽明録・遊仙窟他』(東洋文庫43)
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