テレビのバラエティー番組で、アイドル好きのお笑いタレントを「いじる」ときに登場するこの言葉。AKB48、ももいろクローバーZなど、業界内人気が特に高いアイドルの場合、ファンを公言することでタレントにとって「仕事」に結びつくことがある。たとえば、番組のゲストに呼ばれる、イベントの司会を任される……など。すると、本当はそこそこのファンなのに、ディープな「オタク」のふりをして仕事が欲しいだけではないか、とコアな層から揶揄(やゆ)されるわけである。このような戦略的ともいえるオタクの姿を「ビジネスヲタ(オタ)」という。
 ちなみに「オタク」を「ヲタク」と表記するのは、2ちゃんねるのアイドル板などから発生して、若者向けの雑誌で使用される表現。一文字置換することで、オタクと称することへの気恥ずかしさといった、心の機微を表現しているといえるだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 18世紀後半に始まった産業革命によって大量生産が可能になり、世界の構造は劇的に変わった。必要だからモノを買うというよりも、大量生産した商品を売るために需要が作りだされ、経済成長そのものが社会の目的へと変わっていったのだ。
 いまや、こうした大量生産・大量消費の社会構造は世界中に広がり、モノは世界中に行き渡るようになった。しかし、一方で経済成長という大義名分があれば、自然環境や地域独特の文化の破壊、人権を無視した産業活動さえ正当化されるようになっている。
 果たして、経済成長によって人類は本当に幸せになったと言えるのか。経済成長は豊かさを代弁していないのではないか。
 こうした経済成長至上主義に対する疑問から、フランスを中心に生まれてきたのが「脱成長」という運動だ。フランス語で「デクロワサンス」といい、必要な消費にダウンシフトし、簡素に生きることを目指す考え方だ。
 「脱成長」社会の重要性を唱えるフランスの経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュは、『経済成長なき社会発展は可能か?』(作品社)の中で、「〈脱成長〉は、経済モデルと経済理論のテーマである成長に反対し、『成長主義者』の言語体系をぶち壊すことを目的とする一種のスローガン」と定義している。
 つまり、成長神話にとらわれている社会を根底から見つめ直し、豊かさの再定義を行なおうという試みだ。そのためには、グローバル経済とは距離を置き、それぞれの地域で環境や人権、住民自治など社会の質に関するものの価値を問い直すことが必要になるという。こうしたラトゥーシュの「脱成長」論は、グローバル経済の構造的矛盾を克服する経済理論として、欧州諸国で注目を浴びており、フランスの国会答弁でも使われるほどになっている。
 一方、日本では「強い経済の復活」を訴える自民党が政権与党に返り咲き、高齢化や貧困などの問題を経済成長によって解決しようという政策がとられている。だが、グローバル化や規制緩和による経済成長は一部の人々にとっては利益拡大のチャンスになるかもしれないが、さらに格差を広げることも懸念されている。
 東日本大震災による福島第一原発事故を経験した日本に求められているのは、脱成長の精神に基づくような生き方や暮らし方そのものを問い直す思考ではないだろうか。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 サドガエルは新潟県佐渡島の固有種だが、田んぼでよく見られるツチガエルにそっくりなため、「発見」が遅れていた。国際的に新種と認められたのは、2012年12月、動物学誌『Zootaxa(ズータクサ)』電子版に論文が掲載されてから。日本でカエルの新種が発見されたのは(未知の種が多い南西諸島以外では)実に22年ぶりという。
 発見といっても、1997年にはすでに、新潟大学の関谷國男(せきや・くにお)氏によって佐渡のツチガエルとの差異が見出されていた。以降、遺伝子解析などが進み、晴れて新種として認められることに。佐渡に固有の種はいないという認識をくつがえした。体長4~5センチで、腹が黄色い、「ギューンギューン」という独特の鳴き声を発する……などの特徴を持つ。このサドガエル、実は絶滅の危機に瀕(ひん)したトキの大好物。トキが繁殖した未来はカエルにとって受難かもしれないが、まずは共存共栄できる自然環境が望まれるところだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 尖閣諸島問題など中国の海洋進出が活発化する中、自民党内で海兵隊構想が持ち上がっている。言い出しっぺは石破茂(いしば・しげる)幹事長。昨年秋の自民党総裁選では「海のある国は持っている。日本だけが持たなくていいのか」とアドバルーンを上げた。総裁選では安倍首相も同調。「もし島が占領されたら、兵隊を送る部隊を持つべきでないか。陸上自衛隊に置いてもいい」と応じたのだ。
 海兵隊は、洋上からの上陸、空からの空挺作戦が主任務の部隊だ。米海兵隊がよく知られる。想定されるのは、陸上自衛隊に海兵隊機能を持つ部隊を創設することだ。陸上自衛隊は昨年、米領グアム島などで行なった日米共同訓練で、米海兵隊から島の奪還を想定した上陸訓練の伝授を受けた。防衛省は2013年度予算案で水陸両用車4両の購入経費を計上(25億円)した。
 海兵隊構想の実現にはハードルがある。上陸作戦が国の国是である「専守防衛」にそぐわない、とする考え方があるからだ。
 政権復帰以降、「慎重運転」の政権運営に徹する安倍自民党は「海兵隊構想」を引き出しの中にしまったようだが、夏の参院選で勝利すれば「海兵隊構想」が表に出てくる可能性がある。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 まだ寒さを残す余寒のころ、春の訪れを告げる和菓子といえば、うぐいす餅。こし餡(あん)を餅や求肥(ぎゅうひ)に包み、青大豆でつくった淡緑色の青きな粉を表面にまぶして色づけてある。菓子の両端の部分を少しだけつまんでとがらせ、うぐいすをかたどっている。
 都市と山里が近接する京都は、桃のつぼみが膨らみ始めるころ、春を象徴するうぐいすがいたるところで「ホーホケキョ、ピチュピチュピチュ」と、愛らしくさえずり出す。越冬した山中を下りてきたばかりのうぐいすは、青きな粉よりもっと黄色っぽく、きな粉そのもののような色合いをしている。それが山の芽吹きの色へと合わせるように、徐々に緑褐色を強めていく。
 うぐいす餅の発祥は、豊臣秀長が兄の秀吉を天正年間(1573-92年)に郡山城(奈良県大和郡山市)に招いて開いた茶会のための「珍菓」だと伝わっている。秀長の「珍菓をつくれ」という命を受け、御用菓子司であった菊屋治兵衛が献上したのがうぐいす餅の発祥である。秀吉はこの餅菓子が気に入り、「うぐいす餅」と名づけたといわれている。城跡の入り口付近に現在もある本家菊屋では、「お城の口餅」という菓銘で、いまもうぐいす餅を作り続けている。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 「戦争が始まれば、東京を空爆することを考えなければならない」。これは『週刊新潮』(2/21号、以下『新潮』)に掲載された羅援中国人民解放軍少将の発言である。
 1月30日に海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」が中国海軍艦艇にレーダー照射(ロックオン)されたことが発表された。ロックオンとはミサイルを撃ち込まれても不思議ではない危険行為。以来、週刊誌には中国との戦争が勃発したかのようなタイトルが並んだ。
 「中国人9割は『日本と戦争』『東京空爆』」(『新潮』)、「中国からの『宣戦布告』」(『週刊文春』2/21号、以下『文春』)、「中国『宣戦布告なき開戦』の一部始終」(『週刊ポスト』3/1号、以下『ポスト』)、「『狙いは首都・東京』習近平の中国は本気だ」(『週刊現代』3/2号)。
 1月19日にも尖閣諸島から北へ約百数十キロの海域で、海上自衛隊のヘリコプター「SH-60K」が、中国のフリゲート艦から射撃管制レーダー照射されている。その模様を『文春』で作家の麻生幾(あそう・いく)がこう描いている。
 「神経をかき乱す音が、海上哨戒用のヘリコプターSH-60Kの狭い機内に鳴り響いた。
 “強烈に耳障りな音”を聴いた機長ほか三名の搭乗員たちは、その音が意味することをすぐに悟った。
 SH-60Kをターゲットにして向かってくるミサイルが自ら放つ終末誘導レーダーか、軍艦が射撃を行うためのレーダーか、そのどちらかを探知したのだ。(中略)
 “強烈に耳障りな音”は止むことはなかった。しかも回避行動を取りながらその海域を離脱するSH-60Kの背後へも、フリゲート艦は十分近くもしつこく照射し続けたのである。
 “強烈に耳障りな音”を十分近くも聞き続けたヘリコプター搭乗員の精神状態はいかばかりであったか──『至急報』を受けた海上自衛隊幹部は、ゾッとする想いに襲われた」
 『ポスト』は、こうした中国側の危険な行為は2010年4月8日に「中国艦艇の艦載ヘリが護衛艦『すずなみ』に接近飛行」以来8件あると報じている。
 『新潮』によれば、『環球時報』という人民日報系の新聞が「尖閣空域で巡視活動を行う中国機に対し、日本の戦闘機が射撃を行うと思うか」というアンケートを実施し、3万人ほどが回答したが、その9割近くが「日本は開戦への第一弾を発砲するだろう」と答えたという。
 さらにメディアには解放軍の幹部たちが次々登場して「我々は瞬間的に日本の戦闘機F15を撃墜する力を持ち、開戦から30分で日本を制圧し、始末することができる」という過激な発言をくり返しているというのである。
 日中もし戦わば、という特集も多く組まれている。大方は日本有利と見ているが、「中国が東風21などの中距離弾道ミサイルを東京や大阪に向けて発射、それが着弾した場合、それらの都市は瞬時に焦土と化します」(武貞秀士(たけさだ・ひでし)韓国延世大学教授、『新潮』)という最悪のシナリオを想定する向きもある。
 私見だが、いくら中国軍内部に好戦的な空気が横溢(おういつ)しているからといって、中国がここまでやるとは思えない。それより日本にとって当面の最大の危機は北朝鮮である。日米関係も大事だが、北朝鮮をおさえるためにも中国の協力が必要なこと、いうまでもない。
 それなのに安倍晋三総理は中国との関係改善の糸口さえ見つけられないでいる。今メディアがやるべきは日中関係をさらに悪くする方向へ世論を煽(あお)ることではなく、安倍総理に「日中関係改善を最重要課題とせよ」と諭すことではないのか。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 「魚離れ」を食い止めるため国が主導する「『魚の国のしあわせ』プロジェクト」。「ファストフィッシュ」の動きに関しては以前お伝えしたとおりだが、そのほかにもさまざまな取り組みがある。魚を食べるのは日本の「文化」。魚を食卓に引き戻すだけでなく、連綿と続いてきた文化への関心を高めたいという水産庁の考え方がある。そこで、魚食の伝道者に水産庁長官がお墨付きを与えるという制度が「お魚かたりべ」だ。
 その顔ぶれは、大学の先生から漁業関係者、水産会社のトップなどさまざま。プロジェクトを組む前から、子どもに魚のよさを伝える活動を続けていた「かたりべ」も多い。2012年11月に初回の34人が任命され、その後も追加されている。「実物を見ても何という魚か答えられない」「料理のコツが肉と比べてわからない」といった昨今の家庭の現状からの脱却をはかれるだろうか。ひとつの成果を得た「ファストフィッシュ」よりも今回は地道なプランとなるが、各方面からの期待は高い。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


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