人は清潔な水がなければ生きていけない。電気やガス、水道といった暮らしのインフラは重要だが、なかでも優先されるのは水だろう。飲み水はもちろんだが、トイレの水洗や入浴ができなくなると公衆衛生が悪化し、健康にも悪影響を及ぼすことになる。
 「南関東で今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が起こる確率は70%」という国の発表もあり、2011年3月11日の東日本大震災以降、いずれ起こる災害に備えて自宅に「マイ井戸」を掘る人が出てきているという。自宅用の小規模な井戸なら、専門業者に依頼すると20万円程度で掘ってもらえる。
 ただし、1960~1970年代にかけて行なわれた地下水の過剰な汲み上げによって、都市部では地盤沈下が問題となったため、厳しい揚水規制が行なわれている。たとえば東京都で新たにポンプ出力が300Wを超える井戸を掘る場合は届け出が必要で、年間の揚水量の報告が義務付けられている。また、定期的な水質検査も必要で、飲用には適さないこともある。
 どこにでも自由に掘れるものではないので、マイ井戸を検討している人は事前に市区町村に問い合わせを。あえて自宅に井戸を掘らなくても、公共施設などに防災井戸を準備している市区町村もある。ふだんから地域の防災井戸の場所を確認しておくことも、万一の備えになるだろう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 パソコン一台で高度な仕事がこなせる現代では、従来型のオフィスは必ずしも労働の実情やコストにそぐわない。また場所を選ばずに仕事をするノマドワーカー(ノマド=nomadは「遊牧民」の意味)も注目されている。そんなワークスタイルのよりどころとなっているのが「コワーキングスペース」。coworkingとは「co(共に)working(仕事する)」ということ。デスクのほかに受付やミーティングルームなども備え、スペースを共有する。アメリカ発だが、いまや日本を含め世界の都市に広がりつつある。
 いわゆるレンタルオフィスと違うのは、仕事をする場所が個室ではなく、あくまで開放された「スペース」であることだ。自宅でも仕事可能なフリーランスが多く利用しているのは、閉じた空間で孤独に陥るよりも、お互いのクリエイティビティを刺激する空間となり得るから。たまたま出会った異業種の人と、思いもよらないコラボが生まれることもある。起業家の出発点となることも多い。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 財政難から毎年、発行されている赤字国債だが、実は、わが国の財政法はその発行を認めていない。
 そのため、政府は毎年、法律を新規に作って「1年間の特例」として赤字国債を発行している。2012年度一般会計予算では、約38兆円を赤字国債で賄(まかな)う算段だ。これは、歳入の約4割に相当する。
 もっとも、12年度の特例公債法案は野党の反対により、通常国会では廃案になった。政府は、10月29日開会の臨時国会に特例公債法案を出し直す。財務省によれば、この法案が成立しない場合、「11月末には財源が枯渇する」という。
 国の米びつが空っぽになる、というわけで、財布のひもも締めねばならない。政府は、9月から地方交付税の交付を一部延期するなど、予算執行の抑制措置(約5兆円)をとった。今後、法案成立が遅れると、医療費や生活保護費、治安面でも影響が出てくる可能性もある。
 特例公債法案をめぐっては11年度予算でもひと騒動あった。当時の菅内閣退陣の取引材料に用いられたのだ。こうしたことから、野田佳彦(よしひこ)首相は、NHKテレビで「特例公債法案を毎年人質に取られ、内閣総辞職か解散を問われることを繰り返していたら、日本の首相は全部寿命が1年だ」とぼやいた。野田首相は、自民、公明両党に対し、特例公債法案と予算案の一体処理のルール作りを提唱しているが、そういう理由が背景にある。
 与野党は、国民生活を優先してさっさと特例公債法案を成立させるべきだ。そうしないなら『責任政党』を標榜(ひょうぼう)しないでほしい。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 陰暦10月の亥の日に食べる餅のこと。平安時代から江戸時代までの間、宮中では大豆、小豆、ささげ、胡麻(ごま)、栗、柿、糖(あめ)の七種の粉でつくった猪の形の餅を食べ、無病息災を祈ることを年中行事としていた。亥は動物の猪に当たることから、猪(いのしし)の多産にあやかり、子孫繁栄を祈願する意味もあった。中国の言い伝えがもとになった行事で、玄猪(げんちょ)ともいう。
 中世以降の日本では、亥の子の日に収穫祭を催すことが盛んになっていった。新穀でついた餅を神仏に供えて皆でも食べ、子どもたちはわら束で地面を打ち回ったそうだ。わら束を打って万病をはらい、子孫繁栄を祈るまじないであったという。
 亥の子餅は古くからの縁起物とはいえ、いまも11月が近くなると、おまんやさん(餅菓子店)の店先に並ぶ人気菓子の一つである。胡麻(ごま)や栗などのさまざまな種子や果実の風味を豊かに含んだ独特の香りや食感があり、好物にあげる甘党も多い。
 江戸時代以降、亥の子の日は冬支度の始まりでもあった。一般の家ではこたつや火鉢(ひばち)を出し、暖をとる準備をこの日に行なう習慣があり、暮らしが秋から冬へと変わる節目になっていた。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊ポスト』(10/26号)が「女子アナ大量退社止まらない」と報じて話題になった。同誌によれば、TBSの看板アナだった青木裕子アナが「ナインティナイン」の矢部浩之との結婚準備のために今年末退社する予定だが、いちばんの理由は会社に対する不満だとTBSの社員が語っている。
 「馬車馬のように働かされて、それでも給料は安くなる一方。労組と会社がもめて、冬のボーナスが越年するなんて毎年の恒例行事になってますから」
 山田愛里、竹内香苗も辞めたTBSだけでなく、各局の看板アナが雪崩をうって退社しているのだ。一昨年「実質給与3割カット」して年収700万クラスになったといわれる日本テレビでは西尾由佳理、夏目三久、宮崎宣子が辞め、女子アナ王国といわれたフジテレビも中野美奈子、平井理央が退社し、比較的退社が少ないのはテレビ朝日だけという惨状。
 『週刊文春』(10/25号)も、年間視聴率三冠王を日本テレビに奪われ、今年になってテレビ朝日にも抜かれて3位に転落したフジテレビを取りあげ、「フジテレビはなぜ“時代遅れ”になったのか?」を特集しているが、そのなかで女子アナも人材不足だと嘆いている。
 「最近、フジの女子アナの話題は番組関連ではなく、プライベートの男の話題ばかり。八月には『ニュースJAPAN』のキャスター秋元優里アナが後輩の生田竜聖アナとハワイ旅行していたことが発覚。(中略)九月には松尾翠アナが福永祐一騎手とのデート&お泊りが見つかった。現在の一番人気は加藤綾子アナですが、今ひとつ伸び悩んでいる」(芸能プロ関係者)
 女子アナがアイドル化したのは有賀さつき、河野景子、八木亜希子のフジテレビ「花の三人娘」が出てきたころからではないか。私が『フライデー』編集長のとき(1990~92年)には、女子アナのセクシー&ツーショットが大きな売り物だったことを覚えている。
 スターになることが約束され、人気タレントと知り合え、玉の輿(こし)に乗るチャンスのある女子アナは、いまでも憧れの職業である。だが、彼女たちを「あらゆる番組に使えて出演料のいらない使い捨てのお人形」と考えているテレビ局のやり方に、彼女たち自身が「反旗」を翻し始めたのだ。それが昨今の大量退社の背景にあるのではないか。
 給与のダウンがそれに拍車をかけた。金の切れ目が縁の切れ目は、女子アナの世界でも同じようだ。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 「ロールキャベツ男子」という言葉がある。見た目は「草食系」なのに、中身は「肉食系」で女性に積極的な男性のことだが、この女性版が「クリオネ女子」。一見して清純そうに見えるが、決して男性を離さない。ロールキャベツ男子は女性にとって肯定的に使われる場合もあるが、クリオネ女子は「怖さ」のニュアンスで語られるという違いを見せている。
 クリオネは、最近では水族館でも人気の軟体動物巻貝の仲間。翼のような足でかわいらしく泳ぐ姿から「流氷の天使」として知られるが、じつは肉食である。獲物が近づくと、バッカルコーンと呼ばれる6本の触手を出して食らいつく。その様子は、まるで頭の部分が怪物のように割れてえさを包み込むかのようで、なかなかの迫力。テレビのバラエティー番組でおもしろおかしく紹介されることも多く、「クリオネ女子」とはクリオネの容姿と捕食行動のギャップにたとえたものだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2012年度の日本の国家予算90兆円のうち、約44兆円が国債で賄(まかな)われている。政治的な理由から長く増税を見送ってきたため、いまでは予算の4分の1が借金の返済に消えている。
 いわゆる「消費税増税法」は、こうした借金依存体質から抜け出して、社会保障や教育に関する国の支払いを将来に先送りせず、現在の租税や社会保険料で賄えるよう、新たな財源を確保する目的で作られた法律。2012年2月に閣議決定された「社会保障・税の一体改革」の関連法の一つとして、「子育て支援」「年金・医療」「障がい者施策」などの改革を行なうのと同時に、その財源としての消費税の税率や引き上げスケジュールを決めたものだ。
 消費税増税法が2012年8月に成立したことで、現在は5%(国4%、地方1%)の消費税が、2014年に8%(国6.3%、地方1.7%)に、2015年に10%(国7.8%、地方2.2%)に、と段階的に引き上げられる。増税にあたっては、その時の経済状況を判断するという付則がついており、食品などの生活必需品の税率を引き下げる軽減税率も検討されている。
 だが、欧州諸国の付加価値税(日本の消費税にあたる税金)が20%程度なのに比べれば、日本の消費税は低い水準だ。超高齢化社会に突入し、財源確保が待ったなしのなか、税率引き上げの先送りには疑問を呈する声もある。
 消費税は、低所得者ほど収入に占める生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者より税負担率が大きくなる逆進性も指摘されているが、集められた消費税は必要に応じて国民全体に再分配される。消費税そのものは逆進的でも、社会保障や教育などサービスを受けることで還元されるので、実質的な負担は軽減できるという見方もある。また、軽減税率は、どこからどこまでが生活必需品かの判断が難しく、業界の力関係によっても恣意(しい)性が働くため、導入は慎重に行なうべきだろう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


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