「もったいない」や「エコ」などの概念が流布すると、単にムダを減らすというだけでなく、意外なメリットが浮かび上がってきた。たとえば、食材を「使い切る」ことは、健康面でも合理的なのだ。野菜の皮や種・ヘタなど、これまで捨てられていた部分にこそ、重要な栄養が詰まっている。それらの「切れはし」を煮込んで作るのが「ベジブロス」。「ベジ」は野菜の「ベジタブル」、「ブロス(broth)」とは「だし汁」の意味である。

 人気を牽引しているのは、「ホールフード」の第一人者としてテレビでも紹介された、料理研究家タカコ・ナカムラ氏(ホールフードとは、環境など食材を取り巻くあらゆることを、包括的に捉えるという概念だ)。その著書『野菜の栄養100%いただきます! ベジブロスをはじめよう。』(角川マガジンズ)によれば、ベジブロスは水1.3リットルに対し、切れ端は両手1杯分が目安である。料理酒小さじ1杯も加える。弱火で30分じっくり煮てから、漉(こ)すだけで完成となる。

 皮やヘタがすぐにたまるわけではないので、ある程度の量になるまで冷蔵庫に保存しておくのがいいだろう。また、セロリなどの香味野菜の軸は風味をよくするそうだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 政府は8月8日、小松一郎氏を内閣法制局長官に起用する人事を発令した。

 内閣に直属する機関である内閣法制局は、政府提出法案の事前審査や憲法解釈が主な任務だ。そのため、「法の番人」とも称される。内閣法制局長官はその長で、身分は特別職公務員である。

 新長官に就任した小松氏の前職は駐仏大使。外務省で条約課長や国際法局長を歴任したが、内閣法制局勤務の経験は全くない。本来の慣例に従えば、内閣法制局次長が内部昇格するはずだった。

 極めて異例の人事は「安倍晋三首相の強い意向が働いた」との解説付きで、報道されている。安倍首相と言えば、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈の変更に強い意欲を持ち、第一次安倍内閣(2006~07)でも、有識者会議を設置して取り組んだ経緯がある。そしてその有識者会議に裏方として関わったのが小松氏だった。

 前任の長官だった山本庸幸(つねゆき)氏は、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈の変更に慎重だったとされる。実際、第一次安倍内閣時代の2007年6月、参院外交防衛委員会で政府の憲法解釈について「その取り扱いについては、これは慎重でなければならない」と答弁している。小松氏の起用は、憲法解釈の変更に向けた布石と見ていい。

 衆参のねじれが解消したことで、安倍首相が「安倍カラー」を出そうと腐心している。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 お地蔵さんとは、八大菩薩(ぼさつ)の一つ、地蔵菩薩のことである。けれども、峠や路傍でじっと見守ってくださるお地蔵さんに抱く印象とは若干異なるように感じられ、しっくりいかない思いを抱いている方も多いのではないだろうか。

 この身近な場所でいつも温かく見守ってくれるお地蔵さんは、日本人の信仰が生んだ神仏習合によって形づくられた民間信仰といえる。愛宕山(あたごやま、京都市北西部)山頂の愛宕社の本地仏である勝軍地蔵は、塞神(さえのかみ、さくじんとも読む)・道祖神と地蔵菩薩が、語の音の転訛によって神仏が習合された。道祖神とは「塞」という語が使われていることからもわかるように、境界にいて悪霊の侵入を防ぎ(塞ぎ)、通行人や村人を守ってくれる神様のことである。この道祖神と地蔵菩薩の神仏の習合した姿が、いわゆる「お地蔵さん」であり、峠や町境、辻、路傍に石像を建てて祀られる「お地蔵さん」の信仰を広めていったのである。室町時代の京都では、地蔵霊場巡りや「〇〇地蔵」と名づけられた、はやり地蔵がもてはやされた。それは和讃(わさん)や説話、狂言となり、のちの江戸の町民文化へも浸透していくことになるのである。

 毎月24日はお地蔵さんの特別な日を意味する縁日である。京都では8月22日から24日を地蔵盆といい、各町内の子どもの守り神である石地蔵を祠(ほこら)から移し、灯籠(とうろう)や供物をささげて飾りつけ、子どもたちはその前で遊んだり、おやつをもらったりしながら一日を過ごす。最近は24日ではなく、8月下旬の休日に日取りを合わせるようになったが、あちこちで年に一度のお地蔵さんのお祭りを楽しむ光景が見られる。


地蔵盆の様子。今出川通と志賀越道(しがごえのみち)の交差点に佇む子安観世音(鎌倉期)は、花売りの白川女の信仰が厚く、商いに出る前には花を供えたという習慣は現在も受け継がれている。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏(49)が2億5000万ドルでアメリカの名門新聞ワシントン・ポスト紙を買収したニュースが、日本の新聞界に衝撃を与えている。

 アメリカの日刊紙発行部数は1980年代まで6200万部を保っていたが、ネット登場後の2011年には4442万部へと激減し、ポスト紙も最盛期の半分の40万部にまで落ち込んでいた。

 『週刊ポスト』(8/30号、以下『ポスト』)は、アマゾンが日本の新聞の買収まで目論むのではないかという特集を組んでいる。

 今回はベゾス氏個人の買収だが、彼は何を考えてポスト紙を買収したのか。東洋経済オンライン編集長の佐々木紀彦氏はこう語る。

 「アマゾンにとって、世界中の人々の購買データが最大の財産。新聞社を持てればアマゾンの持つ顧客データがさらに拡充される。読者がどんな記事を選び何に興味があるのかを把握すればeコマース(電子商取引)はさらに進化する」

 顧客データだけではなく、アマゾンのコンテンツの充実を考えていると話すのは在米ジャーナリスト北丸雄二氏。

 「アマゾンはキンドルに配信するコンテンツの一つ、キンドル・シングルズ(短編電子書籍)に力を入れている。これは新聞や雑誌の記事としては長く、かといって単行本としては短い、1万語~5万語未満の作品を、5ドル未満で販売するというもの。ベゾスはワシントン・ポストの記者にもシングルズで作品を発表させて、この流れを加速させたいのではないか」

 米国の印税は通常25%未満(日本は10%)だが、シングルズは70%にもなるそうである。

 ポスト紙が電子化に乗り遅れたことも凋落に拍車をかけた。ウォールストリート・ジャーナル紙は全購読者208万人のうち約4割の89万人が電子版の読者だし、ニューヨーク・タイムズ紙は190万人の購読者のうち110万人が電子版購読者である。いずれも購読料は月約20ドル(約2000円)で、日本の半値。

 8月2日のasahi.comは「ニューヨーク・タイムズが1日発表した2013年4~6月期決算は、純損益が2013万ドル(約20億円)の黒字となり、前年同期の8762万ドル(約87億円)の赤字から黒字に転換した」と報じている。

 では日本の新聞界はどうか。アメリカよりもさらに悲劇的で、部数減に喘ぎ、電子版購読者の数は増えていない。

 『ポスト』によれば、朝日新聞の公称部数は760万部だが、いずれ来る500万部時代を想定して地方支局縮小に向けて動いているという。

 朝日は電子版を2年前から導入した。表向き10万人突破といっているが、ほとんどが新聞との抱き合わせの読者で、電子版だけを購読しているのは1割に満たないようである。

 「今年5月、アメリカのネット大手AOL傘下のハフィントン・ポスト・メディアグループと合弁会社をつくり、ハフィントン・ポスト日本版を開始。ニュースやブログをベースに、ユーザーが意見を交換する参加型コミュニティーという触れ込みだったが、期待を大きく裏切った。

 『なかなかページビュー(PV)が上がらず早くも“ハフィントン・ポストへの出資は大失敗”という声が上がっている』(ジャーナリストの山田順氏)

 朝日は紙にかわる新たなプラットフォーム作りを模索するがいずれも失敗。もちろん厳しい状況にあるのは他社も同じだ」

 だが、日本の新聞社は1951年に施行された「日刊新聞法」に守られ、株式譲渡に制限が加えられているため、買収されにくくなっているから、アマゾンとて手は出しにくい。

 そこで結局、日本の新聞はこうなるのではないかと朝日新聞関係者が語っている。

 「発行部数を維持できなくなり、電子版も伸びない新聞社が、アマゾンに記事を配信する“下請け”と化す。これはアマゾンが直接、日本の新聞社を買収するよりも現実的かもしれない」

 もはや権力チェックの役割を自ら捨てつつある大新聞は、アマゾンのコンテンツサプライヤーになるしか生き延びる道はないのかもしれない。これは出版も同じである。日本のメディアに明日はない!

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 2013年6月、岐阜県の地銀「大垣共立銀行」は、スマートフォンの画面上で閲覧や記帳ができる「スマホ通帳」のサービスを始めた。対象となるのは同行の「スーパーOKダイレクト」(インターネットバンキング)の契約者。基本的には24時間いつでも利用できる(記帳に関しては0時から2時までのあいだ休止)。通帳の表紙をお好みでデザインできたり、ミニゲームが搭載されているのもスマホならでは、である。

 大垣共立銀行は、日本経済新聞による金融機関の顧客満足度ランキングで、いつも上位に食い込んでいる地方銀行の雄。ユニークな取り組みが多いことで有名だ。2012年9月には、手のひら静脈認証によるカードレスなATMサービスを開始した。従来より技術としては可能と思われていたが、いち早く導入に踏み切った背景には、東日本大震災で通帳やカードを紛失し、多くの人々が難儀した事例がある。

 同行の公式サイトには、「金融はサービス業」というフレーズがおどる。次に何をやってくれるのか、各金融機関にとって見習うところの多い銀行であるように思われる。


 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 インターネットの普及によって、いまや検索サイトにキーワードを入力するだけで、さまざまな情報が簡単に手に入る。だが、中には本人が公開を望まない個人のプライバシー、過去の経歴なども含まれている。

 本人は「忘れたい」と思っていることでも、インターネットは忘れてくれず、検索するたびに人の目に触れてしまう。一度、ネットに出た情報は、それが当事者にとって好ましくないものでも、どこまでも拡散する可能性がある。

 こうしたネット上に拡散した個人情報を、本人が削除要求できるのが「忘れられる権利」だ。

 個人情報の保護に先進的な取り組みをしているEUの欧州委員会が、2012年1月に域内の共通規則として加盟各国に提案。「EU一般データ保護規則提案」の中で規定したもので、表現の自由の侵害に当たらないなど一定の要件を満たせば、データ管理者はその個人情報を削除したり、拡散の防止に努めなければならないというものだ。

 世界の流れを受け、日本でも「忘れられる権利」が求められるようになっている。日本で、ネットから個人情報を削除してもらうには、裁判所に削除仮処分を出してもらうか、テレコムサービス協会の「送信防止措置依頼書」を使うといった方法がある。だが、削除しないほうが公共の利益に適う情報もあり、削除には正当な理由が求められる。表現の自由を侵すと判断されれば、削除できないこともある。情報提供元(プロバイダー)が海外事業者の場合は日本の法律が通用しなかったり、そもそも連絡先がわからない事業者もあり、ネット上から個人情報を消し去るのは容易なことではない。

 「忘れられる権利」を絵に描いた餅にしないためにも、インターネット社会に対応できる法整備が必要になってきている。


 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 女子がケーキをうれしそうに食べる様子を、興味なさげに見ている男子……というのは、ひと昔前のデートでありがちだった(らしい)光景。だが、いまや男性の若年層にスイーツ好きが増えている。彼らは「甘党男子」と呼ばれることがある。

 甘党男子が一般化した理由はいろいろ挙げられるだろう。バブル期を経て、いまの日本は気軽にコース料理を楽しめるようになった。コースの最後にはデザートが欠かせず、好み以前に甘いものが単純に「食習慣」になっている可能性がある。より庶民的に考えれば、コンビニの存在も大きい。ケーキ屋には「女子」のイメージがあるかもしれないが、男子にとってより身近なコンビニでも甘いものが買えてしまうのだ。しかも、豊富な選択肢の中から。

 2008年に開設されたスイーツ情報サイト『甘党男子』をのぞくと、甘いもの好きのイケメンコンテストまで開催されているというのだから驚く。気恥ずかしさから「こっそりと」ケーキを食べてきた男性諸氏には、いい時代が来たといえるだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


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