富士山が世界文化遺産に登録されることが6月22日に決まった。これにより富士山には、登山客が殺到するとみられ、自然環境や登山道周辺の保全整備などに費用がかさむことが想定される。

 そこで静岡、山梨両県が検討しているのが入山料だ。保全費用の財源になるほか、入山者の抑制にもつながる。今年の夏山シーズン、5合目付近で試験的に任意で1000円程度を徴収する方針という。

 さて、この1000円が妥当なのかどうか。

 現状保全のためには「7000円程度は必要」という数字がある。それぐらい高めに設定しないと、入山者の抑制につながらないからだ。一方、国民からすれば「1000円程度にして、世界遺産に登録されても気軽に登山できる富士山であってほしい」ということだろうか。

 環境省の調査によると、昨年の夏山シーズン、富士山の8合目から山頂を目指した登山者数は、約32万人。すべての登山者から徴収した場合、1000円だと3億2000万円、7000円だと22億4000万円の入山料が入る計算だ。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 陰暦6月の異称を菓銘とする水無月は、うっとうしい梅雨から本格的な夏への移りかわりを告げる和菓子である。その年の1月から6月までの間の穢(けが)れを除く神事、6月30日の夏越祓(なごしのはらえ)にちなむもので、本来は6月30日にしかつくられなかった。この日に「今年の暑い夏も健康にあれ」と願いつついただくものである。ついでに、7月から12月の穢れを払うのは、12月の年越祓(としこしのはらえ)であることを付け加えておきたい。

 水無月は、新粉でつくった餅(もち)の台に、悪魔払いを意味する小豆がたくさん散らしてあり、これを三角形に切って食べる。三角形をしているのは氷に見立てているからで、かつて陰暦6月1日に氷室の節句として行なわれていた宮中行事に由来している。この行事は冬の間に地下の氷室に保存しておいた氷の小片を口に含むというもので、夏やせしないといわれた暑気払いの行事である。冷凍庫のないはるか昔のことであるから、夏の氷は贅沢きわまりないことであったろう。その後、公家の勢力が弱まるとともに行事も変化し、江戸期には「こほりかちん」(氷餅)という菓子が本物の氷の代用とされていた。それが現在のような水無月へと変わっていったようである。

 現代では餅の台に黒糖や抹茶を混ぜ込み、いろいろな風味の水無月が楽しめるようになった。しかし、京都のこの時期は本当に蒸し暑いので、涼しげな白い台が一番人気である。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 安倍晋三総理のアベノミクスがうまくいっていないことを揶揄(やゆ)した言葉。命名者は同志社大学大学院ビジネス研究科・浜矩子(のりこ)教授といわれる。ほかにアベノミス、ダメノミクス、サゲノミクスなどがある。

 政権発足以来「株高・円安」を掲げ、デフレ脱却を目指すと大見得を切った安倍総理だったが、ここへきて、三番目の矢と位置づけた成長戦略が期待はずれだったこともあって、株価は下がり続け、円相場も一進一退を繰り返し、心配されていたアベノミクスの“副作用”である長期金利の上昇を招いてしまっている。

 「株価は4万円もあり得る」と煽りに煽っていた『週刊現代』(以下『現代』)でさえも「米国発 すごい大暴落がやってくる」(6/8号)、「株価1万円割れ─安倍退陣」(6/29号)と、批判派へと“大転向”した。

 私は商学部出身だが、自慢ではないが、未だに複式簿記の借方、貸方がどちらにあるのかさえわからない。したがってアベノミクスを批判できる何ものもないが、最近読んだ雑誌で腑に落ちたのは『PRESIDENT』(7/15号)のジム・ロジャーズ氏(世界的投資家)の「歴史に学べ」という次のような言葉である。

 「大昔から、経済的に行き詰まると政治家たちはお金を刷るという手段に走ってきました。けれど歴史を紐解くと、この手の政策が長期的に、いや中期的にさえよい結果をもたらしたことはありません。自国通貨の価値を下げるということは、結局、不健全なインフレを引き起こし、自国民を苦しめることになるのです」

 円は半年で2~3割も下落し、日用品は高騰し、生活はますます苦しくなる。アホノミクスなどと笑っていられるうちはいいが、この状態が何年か続くと、もっと酷くなる。そうロジャーズ氏は警告している。

 『週刊ポスト』(6/28号、以下『ポスト』)は「安倍政権が高い支持率の陰で進めていたのは、国民の財産を掠め取り、雇用を失わせ、権力の維持のために老後の年金まで奪う『国民背信の政治』」だとして、死亡消費税という、とんでもない計画が進んでいると報じている。

 安倍総理のブレーンとして知られる伊藤元重(もとしげ)・東大教授から「社会保障制度改革国民会議」に出されたという。

 立正大学法学部客員教授の浦野広明氏がこう説明する。

 「国は今後急速に増えていく社会保障費を賄いきれない。現役世代の負担にも限界がある。そこで消費税のように国民全員に死ぬときに財産から一定の税率を“社会保障精算税”として納めさせる。相続人ではなく、死者から取るから死亡消費税なのでしょう」

 現在、個人の金融資産は1545兆円。そのうち1000兆円近くを高度成長期を支えた団塊の世代をはじめとする65歳以上の約3000万人が保有しているといわれる。

 そこに死亡消費税をかけるとどうなるか。65歳以上の世代が平均寿命を迎える今後15年間で、税率5%なら50兆円。消費税引き上げ後の10%だと100兆円の課税になるという。国民の財産を減らされ、国には途方もない金額が入ってくるというのである。 

 『ポスト』は「棺桶を掘り返す“墓泥棒”」と難じているが、その通りである。

 『現代』(7/6号)は「いよいよやってきた『年金制度廃止』」という大特集を組み、「10年後には70過ぎてから、20年後には80過ぎてから支給」と報じている。日本人男性の平均寿命は79.59歳である。これではほとんどの人間がもらえないことになる。

 そんなバカな!とは思わない。現実に日本の年金制度が破綻していることは間違いない。いくら綻(ほころ)びを繕っても限界はある。だからこそ、消費税増税は年金などの社会福祉に限定しなければいけないのに、民主党も自民党もそこをごまかし、大新聞は追及しない。

 消費税増税分を社会福祉だけに限定してつかうのなら、北欧並みの20%程度も致し方ないと、私は考える。

 だが今の政治家や官僚は口先ばかりで信用ならない。参議院選で問われるべきは、憲法でも株高・円安でもない。この国のこれからの社会福祉の「形」であるはずだ。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 村人の中に狼が潜んでいる。正体を突き止められるのか、それとも食べられてしまうのか? ……そんなスリリングなゲームが話題だ。「汝は人狼なりや?(Are You a Werewolf?)」(アメリカのルーニー・ラボ社の商品名から)、ないし単に「人狼」と呼ばれているもの。世界各国で同様の内容を持つカードゲームが発売されているが、日本ではイタリアのダ・ヴィンチ社の『タブラの狼』が多く使われている。ネットの掲示板上で繰り広げられる推理ゲームとしても人気で、相手の顔が見えない状況でのプレイは知的興奮度が高い。フジテレビやTBSがバラエティ番組の題材としても採り上げた。

 基本となるルールはこうだ。プレイヤーは「人間」と「人狼」に分かれる。昼間はおとなしくしている人狼も、夜になると村人を襲う。そこで人間は、狼だと疑わしい者を一人ずつ処刑しなければならない。人狼をすべて当てたら人間側の勝ち。逆に少数派の人狼は、村人たちを圧倒する(村人と人狼が同数になると、もはや人間は食べられる運命にある)のが目的だ。ゲームは話し合いによって進められる。相手の発言がウソをついているか、それとも真実かを探っていく。疑い出すと何もかも弁解に聞こえてくる不思議。人が人を信じることの危うさとともに、それでも最終的には誰かを信用しなければ生きていけないことがわかる、奥の深いゲームなのだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 過去最低の投票率だった昨年12月16日の衆院選。

 無効票も多く、比例区、小選挙区合わせて約352万票が、投票用紙に何も書かれていない白票であったり、別の候補者の名前が書かれていたという。無効票の割合が最も高かった高知県は、1万7000票の無効票のうち半数以上が白票だったという。

 昨年末の衆院選は政党が乱立して、入れたい政党があっても、その党の候補者が選挙区にいないケースもあった。そのため、投票所に足を運んだものの、投票する候補者が見つからず白票を投じた人もいるだろう。

 しかし、ここで考えたいのが選挙の意味だ。国政選挙は、国の行く末を話し合うための私たちの代表を決めるもので、自分の意見を代弁してくれる人を選ぶものだ。

 結婚相手を選ぶわけでもなく、恋人選びでもない。共感できる人がいなければ誰にも投票しないとなると、自分の意見を代弁してくれる人を話し合いの場に送ることはできず、自分の意見を何ひとつ政治に反映させることはできなくなる。政治はゼロか百かではなく、それぞれの利害を持つ人が調整を重ねながら、ある意味では妥協を繰り返しながら、ひとつの方向性を作り出していくものだ。

 たとえ自分の思い通りの政策にならなかったとしても、最初からそこに絡むことを諦めてしまうと、自分の言いたいことは何一つ政策には取り入れてもらえなくなる。白票を投じることは、政治批判にはなっても、残念ながらそれで政治を変えることはできないのだ。

 たとえ自分の選挙区に入れたい政党の候補者がいなくても、選挙の情勢をみながら、「Aという政党が政権をとると、自分の生活が破壊される」と思うなら、そのやり方に歯止めをかけてくれる対立候補に投票するという方法でも自分の意見は反映できるものだ。

 政治が国民の生存権を無視するような方向に歩き出している今、私たちが持つ一票の重みを真剣に考えるべきだろう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 「平成の大合併」の最中、2004年に誕生した新潟県の南魚沼市。同市を語るキーワードは多い。上質のコシヒカリや、豪雪をいかしたスキー場。大河ドラマ『天地人』の主人公・直江兼続(なおえ・かねつぐ)を輩出したことでも知られる。観光のウリがそれなりに多いとくれば、重要になるのは外部へのアピールであろう。

 銭渕(ぜにぶち)公園、六日町(むいかまち)大橋、坂戸(さかど)城跡……。南魚沼の誇る名所・旧跡を、同市在住の美少女たちが案内する地域密着型の観光パンフレット、「美女旅」が全国的な反響を呼んでいる。2012年8月に発行されると、約1万2000部が品切れ状態に。年が明けて3月には「冬編」も登場した。手に入れられなかった人も、公式ホームページに行けばページをめくるような演出で内容が楽しめる(こちらのサイトのアクセス数も順調に伸びているとのこと)。一般のガイドとは異なって、観光スポットの紹介文はおさえられ、風景よりも「美女」がメイン。まるでタレントの写真集のようで、思い切った印象も受けるが、たしかに現地の楽しそうな雰囲気は伝わってくる。巧みなコンセプトといえそうだ。いまや地域観光のPRも戦略の時代である。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 車の燃費向上や人口減少の影響で、ガソリンの需要は頭打ちだ。そのため全国でガソリンスタンド(GS)の廃業が相次いでいる。

 経済産業省によるとGSが3か所以下の「給油所過疎地」は、2013年3月末現在で、全国で257市町村に達している。これは全国の1719市町村(東京特別区は除く)の15%に相当する数字だ。

 背景にはガソリンの需要減はもちろんだが、2011年2月施行の改正消防法で老朽化した地下の貯蔵タンクの改修が義務づけられたことがある。ガソリン業界は価格競争が激しく、改修費もなかなか工面できず、結局、閉鎖に追い込まれたケースも少なくない。

 ハイブリッドカーや電気自動車の普及、若者の車離れで、ガソリンの需要が減少する流れは今後も変わらないだろう。

 車が遠出の足である地方にとって、近隣にGSがないのは死活問題である。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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