子どもに人気の500系をモチーフにした、山陽新幹線の公式キャラクター。2012年10月14日「鉄道の日」に大阪市の交通科学博物館でデビューイベントが行なわれた。JR西日本では、新幹線のファンを育てていくとともに、安全やマナー向上の広報に役立てる考えだ。ちなみに、EEKO星(エエコ星)から来た生命体で、普段は新幹線の車掌、パンタグラフソード(パンダグラフの剣)という武器を使うなど、決め込まれた設定も楽しい。
 イメージキャラというと、いわゆる「ゆるキャラ」がおなじみ。だが、牧歌的なビジュアルのゆるキャラでは、積極的なメッセージの発信にはそぐわない場合も多い。単なるPRだけでなく、「安全」などの啓蒙性が求められる場合には、「守るべきものがある」特撮ものをイメージしたキャラクター設定が行なわれることが多い。世に言う「ご当地ヒーロー」「ローカルヒーロー」と呼ばれる存在だが、カンセンジャーもこの流れといえるだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2012年9月、ポリオ(急性灰白髄炎)の予防接種が経口生ポリオワクチンから、より安全な不活化ポリオワクチンに切り替えられた。米国が導入した1987年から遅れること25年目にして、ようやく実現した定期接種化に日本のワクチン行政の問題点が見て取れる。
 日本で予防接種法ができたのは戦後間もない1948年。公衆衛生の向上を図るために結核、腸チフスなど12種類のワクチンを接種することが国民の義務とされ、罰則まで設けられた。ワクチン接種は病気予防ができる反面、まれに身体麻痺などの副作用が出ることもある。当時、こうした健康被害を救済する国の制度がなかったため訴訟が急増。裁判で負け続けた国は、それまで積極的だった予防接種に及び腰になり、1990年代以降は新しいワクチンがほとんど導入されなくなる。そして、1994年、予防接種は国民の義務ではなく、「必要なワクチンは国が接種を勧め、国民は受ける努力をする」と改められた。接種にかかる費用は、努力義務を課した「定期接種」は国が負担するが、本人・家族の希望で受ける「任意接種」は自己負担なので、お金がない人は予防接種を受けることができない。
 このとき、救済制度も拡充されたが、定期接種と任意接種とでは損害賠償額にも大きな差がある。たとえば、定期接種の百日咳ワクチンで死亡した場合、現在は4250万円が支払われるが、任意接種のヒブワクチンは国の救済制度の対象外。ヒブワクチンでの健康被害は医薬品メーカーなどが費用を拠出する「医薬品副作用被害救済制度」で賠償されるが、死亡時の補償は約708万円。場合によっては訴訟に発展することもあり、医薬品メーカーが日本でワクチンの販売に二の足を踏む原因のひとつになっている。
 先進諸国では、副作用もきちんと理解した上で、「予防できる病気はワクチンを接種し、健康被害が起きたら無過失補償制度(医師に過失がなくても患者に補償金が支払われる)で救済する」ということが国民の合意になっている。日本がワクチン行政の遅れを取り戻すためには、救済制度の整備と国民の理解が不可欠だろう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 鉄道ファン、いわゆる「鉄ちゃん」の女性版を「鉄子」という。メディアで語られる彼女たちは、男性の醸し出すディープさからは縁遠く、「旅好きがこうじて」「子どもにつきあっているうちに」といったライトなタイプが多いようだ。しかし、車体のフォルムに対する愛情は共有できる場合が多い。同様に、飛行機の姿を「カワイイ」と感じる女性の存在も注目されつつある。こちらは「空美」と呼ばれている。
 鉄道でいえば「撮り鉄」のタイプ、すなわち飛行機の美しさをカメラで追うタイプの「空美」がよくメディアなどで紹介される。成田空港そばのホテルでは、女性がテイクオフの写真を撮るための宿泊プランが登場。また羽田空港でも、プロの写真家の指導によるビューポイントでのツアーが企画された。大空を舞う旅客機の優美さは、たしかに女性が好むセンスといえるかもしれない。ちなみに、金環日食など天文に関する話題が多かった2012年には、宇宙や星にロマンを抱く「宙(そら)ガール」という言葉も登場。趣味に対する女性のアクティブさは増すばかりだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 自民党の安倍晋三総裁は新政権を「危機突破内閣」と位置づけた。そこで、想起されるのが「失われた20年」という言葉である。
 バブル崩壊後の日本経済の停滞のことをいう。実際、2011年の名目国内総生産(GDP)は約470兆円で、1991年と同水準でしかない。この20年、GDPはほとんど成長していないのだ。
 失われた20年といっても前半と後半でその原因は異なる。最初の10年はバブル崩壊のツケ、金融機関の不良債権問題が足枷(あしかせ)となった。後の10年は、少子化に伴う生産年齢人口(15歳―64歳)の減少が原因だ。
 生産年齢人口の減少は医療や年金制度にも大きな穴を開け、社会保障は危機的状況に陥った。
 将来の老後に不安を抱くなら、財布のヒモも固くなる。その結果、消費が抑制され、成長率がさらに悪化するという悪循環だ。
 人口問題は人間の営みに関わる問題だけに、その解決は容易ではない。失われた20年がさらに30年、40年と続くシナリオも取り沙汰されている。まさに危機的状況だ。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 冬至には、柚子を丸ごと湯舟に浮かし、香りいっぱいにした風呂に入れば、その冬は風邪をひかないといわれる。柚子湯に入った後、かぼちゃを食べる風習が残っている地域もある。
 冬至は、1年でいちばん昼が短く、夜がもっとも長い日。この夜、ゆったりと風呂につかりながら、明日から少しずつ日脚が延びる様子を想像しつつ、暖かな春を待ちわびてみる。考えるだけでも、せわしさと寒さに硬くなった体が、すっとほぐれていくような気がする。
 柚子には豊富なビタミンだけでなく、フラボノイド成分も数多く含まれているため、血行促進や抗ウイルス作用などの効用もある。年の瀬の柚子湯には、寒さや慌ただしさをしのぐ、古くからの知恵が受け継がれている。
 また、柚子は日本料理に欠かせない材料の一つである。京都・愛宕山(あたごやま)などの西麓(せいろく)には、水尾(みずお)をはじめ、山間の狭い土地に柚子の生産地が点在している。秋から年末にかけてこの辺りから京都の料亭へと、農家の人が急ぎ訪ねる姿を見かける。懇意の料亭から依頼を受けた、枝付きの大きな実の柚子を届けるためである。この柚子は、果実部をくりぬいて「柚釜」(ゆがま)をつくり、器のように使われる。
 この柚釜を使った菓子で室町時代からあるという柚餅子(ゆべし)は、干し柿とも羊羹(ようかん)とも、似て非なる珍味である。米粉、白味噌、砂糖、しょうゆ、木の実などの混ぜものを柚釜に詰め込み、柚子の萼(がく)部分でふたをして柚子の形に戻したら、そのまま蒸し上げる。そして日干しにし、待つこと3か月から4か月。乾燥しすぎると、硬くて食べられないので注意が必要。うまくいけば、柚子と味噌が溶け込んだ複雑な香味が楽しめる。


柚子の中身、米粉、白味噌、砂糖、醤油を練り、柚釜に詰めて蒸してから、2か月ぐらい日干しした柚餅子。薄く切って食べるといい。この年は実が小振りだったので、やや固めにできあがった。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



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 大隈重信が1882(明治15)年に創設した大学(当初は東京専門学校)。慶應義塾大学とともに私学の雄として存在感を示してきた。
 だが、『AERA』(12/17号)は「60大学×人気100社就職調査」の中で「早稲田より学生数の少ない慶應が、金融や商社で前年以上に『強さ』を見せた」と書いている。早稲田の学生数は約45,000人、慶應は約37,000人である。
 たしかに2012年3月に卒業した学生の就職先を見てみると、三菱東京UFJ銀行は慶應124人に対して早稲田は116人。みずほFGは慶應84人で早稲田が65人。三菱商事は慶應50人で早稲田は29人。三井物産でも慶應32人に対して早稲田は27人である。
 NHKや朝日新聞社などマスコミは早稲田が強いが、これは慶應生があまり志望しないからである。私がいた講談社も、かつては採用されたうちの半分以上を早稲田出身者が占めていたが、昨年は15名の採用枠でわずか2人になっている。
 落ち込んでいるのは就職ばかりではない。志願者数も明治大学に抜かれ、公認会計士試験合格者(2010年度)でも慶應が1位で251名に対して2位の早稲田は221名。同じ年の司法試験の合格者数でも慶應が3位の179名なのに、早稲田は5位で130名である。
 スポーツでもやや精彩に欠ける。六大学野球はこの5年間で春秋あわせて10回のうち優勝したのは3回。常勝を誇ったラグビーも、ここ5年で優勝は2回、3年連続で優勝を逃がしている。
 雑誌にとって「早稲田の凋落」は部数を稼げるありがたいテーマである。「慶應の凋落」では売れないのだ。早稲田OBは群れることはないが、悪口を言われると愛校精神に火がつくようである。
 『週刊現代』(1997年9/13号、以下『現代』)で「早稲田大学はついに三流大学に成り下がった!?」という記事をやったことがある。
 志願者数の大幅な減少。慶應と早稲田に受かった場合、慶應を選ぶ学生が82%にもなる。事業拡大路線を突き進んできたため財務状況が悪化していることなどについて書いたのだが、この号が発売されると早稲田側が記者会見を開き、『現代』を告訴すると発表したのだ。
 結局、告訴には至らなかったが、当時の奥島孝康総長が『文藝春秋』(98年1月号)で「早稲田は三流大学ではない」と反論した。その中で奥島総長は、私の名前を3度もあげて糾弾したのである。
 母校に弓を引く者として卒業名簿から抹消されるのではないかと心配した。
 これには後日談がある。いまから5年ほど前になるが、早稲田の学生が私と奥島さん(当時は早稲田の教授)との対談を企画し、会ったことがある。お互い恩讐を超えて2時間ほど早稲田について語り合った。奥島さんは話のわかる豪快な人物だった。 

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読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 メッセージ型図鑑は単に「新型図鑑」とも呼ばれる。従来型の子ども向け図鑑は、「動物」や「乗りもの」といったカテゴリーしかなく、カタログのような体裁でデータも「数字だけ」が多かった。そんな固定観念を大きく変えたのは、2009年に小学館が出版した『くらべる図鑑』であろう。たとえば、見開きページにさまざまなサイズの動物イラストをひとまとめに載せる。同じページには小学生の全身像もあり、キリンやパンダとの大きさが直感的に比較できるわけだ。子どものハテナに応えるかたちで、編者が「読み方」を提供するのが、この手の図鑑のキモである。
 出版界で図鑑は「年間3万部売れればヒット」とされていたが、メッセージ型図鑑は10万部単位の売り上げを連発し、2012年には各社競合の状態となっている。子どもの図鑑にこれほどの伸びしろがあるとは考えられていなかったが、大人でも欲しくなる切り込んだ知的演出が購入に結びついた。実際、版元には親子でいっしょに楽しんだという声が多く寄せられているそうだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


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