蜆を茹で、殻からとり出した身のことをいう。雛祭りのばらずし(家庭風ちらし寿司)に付けるお吸い物は蛤(はまぐり)とよくいわれるが、京都の蜆のお汁は美味であり、身蜆の生姜煮もまた、春を代表する佃煮である。

 全国的に出回っている真蜆(ましじみ)は寒中に旬を迎えるが、京都で食べられる蜆とは瀬田蜆(せたしじみ)をさし、これは3月~4月に旬を迎える。日本の蜆には、淡水に棲む真蜆と、海水の混じった河口付近に棲む大和蜆(やまとしじみ)、砂地を好む瀬田蜆の三種類の仲間がいるという。瀬田蜆は琵琶湖水系だけに棲み、琵琶湖から流れ出る唯一の川の瀬田川(滋賀県)でとられてきた。

 殻は3センチ四方ほどで、茹でると、身は直径1センチほどの小ぶりだが、ふっくりと厚みがあり、身がしっかりとして噛みごたえがある。真蜆のような泥底に棲んでいるものとは味が違い、お汁にしても、佃煮にしても、薄めの味付けで春らしい風味を楽しむのがおいしい。

 琵琶湖周辺でしか味わえない固有種であるが、漁獲は1950年代半ばがピークで、その後はずっと減り続けている。琵琶湖に生息可能な環境が少なくなったことが減少の理由で、南湖はほぼ絶滅し、北湖の一部に残っているだけといわれる。滋賀県では以前から生育環境の改善や稚貝の放流に取り組んでおり、あと5年もすると、もっと入手しやすい量がとれるようになるという。春の味わいの復活を心待ちにしている。


ほんのりとした甘みが食欲をそそる、身蜆の生姜煮。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 テレビが大きな曲がり角にきている。安倍晋三首相が自分の意のままに動くことを期待してNHKに送り込んだ籾井勝人(もみい・かつと)会長のメディア人としてあるまじき言動が厳しい批判に晒されているが、時の政権の広報機関に堕した公共放送ばかりでなく、視聴者を蔑ろにして金儲けに狂奔する民放は、それ以上の危機的状況にあると『週刊ポスト』(2/28号、以下『ポスト』)が特集している。

 かつてテレビは「茶の間の主役」であり「国民的娯楽」だった。私の家にテレビが入った日のことをいまでもハッキリ覚えている。「ダイアナ」の大ヒットを飛ばしたポール・アンカが初来日した年だから1958年、私が13歳の時である。授業が終わると家に飛んで帰り、居間にデーンと置かれたテレビのスイッチを入れ、まだ放送時間になっていないため走査線だけが流れる画面を見ているだけでとても“幸福”だった。

 力道山のプロレス、長嶋茂雄の天覧試合サヨナラホームラン、東京オリンピックに感動し、『パパは何でも知っている』『ローハイド』をはじめとする数々のアメリカのドラマによってアメリカへの憧れをかき立てられた。

 『ポスト』が書いているように「戦後の市民参加の民主主義を支えたのも、テレビだった」ということもできるかもしれない。そのテレビがつまらなくなっただけではなく、スポーツも政治も娯楽も全部ダメにしたと『ポスト』は主張しているのだ。

 ソチ五輪の中継にもそれが表れていたという。五輪に出場する代表選手全員をメダル候補のように取り上げ、煽るだけ煽って、高梨沙羅や浅田真央のように負ければ、お涙頂戴のヒューマンドラマに仕立て上げる。

 外国選手の素晴らしいパフォーマンスを見せ、スポーツの楽しさを伝えるのではなく、「日本人がメダルを獲るかどうか、その一点のみを追うようになっていった」(『ポスト』)のである。

 先日行なわれた都知事選挙が盛り上がらなかったのも、テレビが中立・公正を建前にして自主規制した結果、反原発か再稼働かという重要テーマを各放送局が正面から取り上げず、議論が深まることなく終わったからだ。

 NHKなどはラジオで原発について話す予定だった大学教授に、都知事選の最中だからとコメントの中止を求めていたことが明らかになった。

 行き過ぎた自主規制はドラマの現場にもあると、制作会社の現役演出家がこう話している。

 「たとえばドラマで銀行強盗のシーンを撮るとする。発砲したり、人を殺すのはOKなのに、クルマで逃走するときにはシートベルトを着けないといけないし、バイクならばヘルメットは要着用。赤信号では必ず止まる決まりになっている。その理由は、犯罪はフィクションとして受け止めるが、交通違反はリアルすぎるというよくわからないものだ」

 笑える話であるが、これでドラマがおもしろくなるはずはない。視聴者からのクレームを恐れているわけだが、元TBSアナウンサーの生島ヒロシ氏は、昔はそうしたクレームに対して「そんなに文句あるなら観るな」といったスタッフがいたそうだが、いまではそんなことは考えられないという。

 テレビ離れが進み視聴率が低迷するためコストカットも半端ではない。タレントやお笑い芸人をひな壇にズラーッと並べるバラエティ番組も、いまはホスト1人か2人で回すのが主流。

 番組内でスポンサー企業の人気商品ランキングや工場視察、製品開発の裏側をレポートするのが花盛りだが、自局にCMを出してもらう“呼び水番組”だから、そこでは悪口は言わないという厳然としたルールがあるそうだ。

 だが、テレビは斜陽産業といわれながらも決算は絶好調のようだ。テレビ朝日は前年より売上高117億円アップの2655億円、日本テレビも前年比117億円増の3381億円。

 TBS社員は自嘲的に「うちは不動産屋だから」というが、ほかのテレビ局も本業よりも、不動産業やDVD、映画化、通販業、自社の敷地内を使ったイベント事業で収益を得ているのだ。

 『ポスト』は、公共の電波を使って自社の通販やイベントの宣伝を流して莫大な利益を上げているのはおかしいと批判する。しかも各局が支払っている電波利用料は格安なのである。12年度の利用料はNHK17億9900万円、日テレ4億2658万円、フジテレビ3億9354万円。売上高から比較すると0.2%前後にしかならない。

 こうした美味しい蜜を吸い続け、報道機関としての役割を蔑ろにしてきたテレビに明日はないと『ポスト』は結んでいる。

 最後に、私も出たことがあるテレビ朝日『ニュースの深層』(CS、今月末で終了)の村上祐子アナからのメールの一部を紹介しよう。

 「テレビが置かれている状況を眺めておりますと、己の力量はさて置き、じっくりと本質に迫れる貴重な番組だと思っておりましたので、とても残念です」

 いまやテレビは単なる「見せ物小屋」産業でしかなくなってしまったのだ。


元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 今週は割烹着のリケジョ美女、小保方晴子(おぼかた・はるこ)さんについての話題が3本。   
 普通の細胞を酸性の液に漬けるだけで、どんな臓器にもできる万能細胞が生まれるという「世紀の大発見」は、彼女がカワイイこともあってメディアが飛びつき、世界的な話題になった。
 科学誌『ネイチャー』に掲載され、世界から賞賛を浴びていたが、ネットでは早くから、実験条件が異なるにもかかわらず酷似した画像が出ている「画像使い回し疑惑」が指摘され、捏造ではないかという噂まで出ているのだ。
 これについて週刊誌の取り上げ方がそれぞれ違うのが興味深い。

第3位 「安倍総理面会もドタキャン STAP細胞 小保方晴子を襲った捏造疑惑」(『週刊文春』2月27日号)
 やっかみ半分の中傷かと思っていたら、どうもそうとばかりはいえないと『文春』が取り上げている。
 小保方さんの共同研究者・若山照彦教授(山梨大)によると、本人は画像の使い回しを認めているという。
 「十四日に本人が泣きながら、『ご迷惑をおかけすることになるかもしれません』と電話をしてきました。ただ、『こんなことで研究そのものまで疑われるのは悔しい』とも話していた。
 もちろん改ざんが事実ならよくないことです。ただし、指摘を受けた箇所は、研究の本筋とは離れた些末な部分であり、研究そのものの成果には影響しません。彼女も、ネイチャーから細かい指摘を受けて時間に追われていたのでしょう。既に彼女はネイチャーに修正版を提出し、認めてもらう方向で進んでいます」

第2位 「小保方晴子さんにかけられた『疑惑』」(『週刊現代』3月8日号)
 『現代』もやや懐疑的。
 「素人目に疑問なのは、学会では論文を『間違えました、直します』と言って許されるのかという点だろう」(『現代』)
 そこでカリフォルニア大学デーヴィス校医学部で再生医療の研究に携わる、ポール・ノフラー准教授に聞いている。
 「論文に、誤植などの小さな間違いは比較的よくあります。
 しかし画像の混同といった手違いは大問題であり、過去には論文撤回の理由になったこともある。本当に全体の結果に影響しないか精査しないといけません」

第1位 「小保方『STAP細胞』を潰せ!『捏造疑惑』噴出で得する人々」(『週刊ポスト』3月7日号)
 これらを読むと何やら“?”がつく研究のように見えるが、『ポスト』はそんなことはないと、小保方さんに代わって反論をしている。
 『ポスト』は、とにかく現段階でほぼ確定しているのは、補足論文に画像の掲載ミスがあったということだけだから、調査中だという理研や『ネイチャー』の報告が待たれるが、どの疑惑も「大勢に影響なし」といえそうなのであるとしている。
 また、これだけの騒動に発展した背景には、一定の「アンチ小保方勢力」の存在が見え隠れするともいっている。

 さてこの騒動、どういう結末を迎えるのだろうか。

   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 「特撮の父」といわれた円谷英二(つぶらや・えいじ)の出身地は、福島県須賀川市。2014年に市政60周年を迎える。また、円谷プロダクションも昨年で創立50周年。絶好のタイミングを背景に、2013年5月、同市と「M78星雲 光の国」のあいだで「姉妹都市提携」が結ばれた。円谷プロが「ウルトラマン基金」を通じて震災の被災地支援に取り組んでいることも、重要なファクターとなった。

 同年11月には、須賀川市内の6つの郵便局で、ウルトラマンの「風景印」が登場した。郵便局によってセブン、タロウなど絵柄も異なる。もちろん、最新作の「ウルトラマンギンガ」を押してくれる局もある(ウルトラマンもほかの人気ヒーローたちに押され気味の昨今だが、等身大の高校生がヒーローだけでなく怪獣にも変身できる「ギンガ」は、子どもたちの評判も上々だった)。

 「風景印」は、今回のようなヒーローを題材にすることは珍しく、基本的には郵便局の周辺にある名所などをデザイン化したものになる。渋谷局ならハチ公、といった具合だ。観光地の多くで用意されているため、旅の楽しみとして集めるファンも多い。ちなみに、50円以上の切手が貼ってあれば、郵便物でなくとも押してもらうことが可能だ。

   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 4月から消費税が5%から8%に引き上げられる。それを見込んだ駆け込み需要で、昨年の新築住宅等の着工数は約98万件で、前年比11.0%増となった。

 この伸び率は、1997年の消費税アップ前に駆け込み購入が目立った96年に次ぐもの。だが、前回は、増税後の着工数が前年比マイナス15.6%という激しい落ち込みを見せた。そのため、今回は景気の腰折れを防ぐ目的で、今年4月以降に利用できる「すまい給付金」という新たな制度が作られた。

 4月以降に住宅を購入する人には、住宅ローン減税の控除枠も従来の最大200万円から400万円に拡大される。しかし、こちらは住宅ローンを組んでマイホームを購入した人の所得税や住民税をローン残額に応じて差し引く制度で、控除枠拡大の恩恵を受けられるのはおもに借入額が多い高所得層だ。納税額の少ない低所得層は、この制度を利用しても負担軽減効果は変わらない。そこで、新たに作られたのが「すまい給付金」で、住宅購入した人に現金が給付される。

 利用できるのは、2014年4月~2017年12月までに自分が住むための家を購入した人で、収入が一定額以下の人。たとえば、住宅ローンを組んで購入する場合は、年収510万円以下が目安(家族構成は、夫婦と中学生以下の子どもふたり。妻は専業主婦の場合。ただし消費税10%時は775万円以下)。給付額は、消費税8%の時は最大30万円、10%になると最大50万円だが、年収や扶養家族の数に応じて異なり、年収の低い人ほど受取額が多くなる。50歳以上で年収が650万円以下の人は、住宅ローンを組まずに購入しても利用できるケースがある。

 ただし、2014年4月以降に入居した場合でも、旧税率の5%が適用されている人は利用できない。また、中古住宅は宅地建物取引業者から購入する以外は適用されないなど、利用範囲は限られる(いずれの場合も住宅の要件は床面積が50㎡以上)。

 家計の負担を抑えて住宅取得するには、中古住宅の活用は有効な手段だが、国が税制優遇するのは新築住宅が中心だ。それは、日本では、新築住宅等の建設が重要な経済政策になっているからだ。

 戦後、日本で長く続けられてきた持ち家政策は、個人に住宅購入させることで、景気を刺激するのが目的だ。すまい給付金の創設も、消費税増税によって国民が住宅取得の意欲を失わないような誘導を図ろうとしている。

 だが、すまい給付金がもらえるからと家計の実力以上に高い物件を購入したり、割高なローンを組むのは考えもの。住宅購入は人生最大の買い物ともいえる。制度に踊らされずに、買い時を見極める必要がある。

   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 こざっぱりとした大手の居酒屋チェーンは、現代サラリーマンのガス抜きになくてはならないものだ。だが一方では、昔ながらの「大衆酒場」という文化もある。親父たちの喧噪と煙草の煙。本来は「気軽さ」がウリであったはずだが、いつしか若い世代や女性には「敷居が高い」ものとなり、大手チェーンにおされていった。いま、この業態が「復権」を果たしている。いわゆる「ネオ大衆酒場」である。

 なんといってもその安さが魅力。酒場としては困るのかもしれないが、ビールとイチ押しメニューだけでも満足感があるだろう。食材にこだわる店も多い(もとより大衆酒場の心意気とはそういうもの)。飲み会の場としては、チェーン店に欠けた親しみ深さが支持されている。地域密着型の店舗が多いこともあって、客層も多様。女性が「お茶」をする場や、家族連れの団らんの場になっている(子ども向けメニューがある店も)。ネオ大衆酒場と呼ばれるいまどきの酒場の雰囲気は、ファミリーレストランに近づいているといえる。

 飲食業において「安くてうまい」は、理想ではあるが難しい。経営者は利益率の低さに愕然とするものである。そこで、しゃれた雰囲気などのテクニックで演出したくなる。「大衆酒場」は昔から、そうした経営側のホンネよりも、よりお客に寄り添った業態だ。「まともな商売」によって固定客が離れないメリットは、ネオ大衆酒場の強みである。

   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 安倍政権は、企業が派遣労働者を受け入れる期間について、これを条件付きで無期限で認めるという。「無期限派遣」の事実上の解禁である。

 現在、派遣労働者の受け入れ期間は原則として「最長3年」。無期限に認められているのは秘書や通訳、受付係など専門性の強い26業務に限られている。政府はこうした業務区分を撤廃し、そのうえで、企業が3年ごとに働く人を変えれば、何年でも派遣労働者に仕事を任せられるようにする。

 派遣制度の規制緩和はアベノミクスの一環で、緩和措置によって、派遣の活用拡大が行なわれ「雇用機会の増大に結びつく」という。

 経団連の米倉弘昌会長は記者会見で「非常にわかりやすい制度になるのではないか」「派遣労働者にとっても雇用が安定することになろう」と歓迎した。

 ただ、「企業の論理」が見え隠れする。無期限派遣の解禁は「派遣制度の使い勝手がよくなり、人件費削減につながる」からだ。

 一方、働く側からすれば「派遣の固定化になりかねない」「正社員登用の道を閉ざすものだ」との不満がくすぶる。

 政府は詳細を定めた労働者派遣法改正案を通常国会に提出する予定。成立すれば、2015年春にも「無期限派遣」の解禁が行なわれる見通しだ。

   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 紙媒体のグラビアやファッションページやブログで見ると無茶苦茶かわいいのに、テレビなどの動画で観ると、その美的オーラが極端に劣化してしまう女性のことを指す。

 最近の「動いたらダメな子」の最右翼としては、読者モデル出身のタレント・近藤千尋(ちひろ)あたりがよく挙げられる。写真撮影の際、瞬間時にキメ顔やキメポーズをつくる技には長けていても、“表情を動かす訓練”までは徹底できていないモデル出身のタレントに、とくに多い。

 筆者の独断からすると、武○咲や蛯○友里なども、この部類にカテゴライズされるが、静止画でしかかわいさを発揮できないビジュアル操作術の稚拙さだけではなく、その声質やしゃべる内容にも大きな問題があると思われる。『ニュースJAPAN』時代、左斜め45度座りにこだわりすぎた滝川クリステルも、フジテレビとの専属契約が終了し、バラエティ番組に出演し始めた当初は「動いたらダメな女子アナ」と一部で揶揄されていた。僭越ながら、筆者である山田ゴメスも、プロフィール写真なんかはそこそこに写っているが、テレビに出演したら口元がだらしない、と揶揄されがちである。

[反意語]動いたらイイ子──オールスター大運動会で巨乳をたっぷんたっぷん揺らしながら徒競走に出場していた河合奈保子(かわい・なおこ)が最右翼とされ、今でもレジェンドとして語り継がれている。

   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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