「ふなっしー」は元気いっぱいの「梨の妖精」で、わざわざ落書きのように雑にした顔が特徴。2013年には、ほかのゆるキャラとともに「アサヒ十六茶」のCMにも出演した。千葉県船橋市の非公認キャラクターだ。……そう、「非公認」なのである(船橋市には「汗一平」「風さやか」「目利き番頭 船(ふな)えもん」など、複数の公認キャラがいる)。その事実が、個性の厚みとなっているようだ。

 「ゆるキャラ」というものは、自治体のイメージを担うものなので、ときに「マジメさ・木訥(ぼくとつ)さ」を要求される。ところが「ふなっしー」は、悪童のようにちょこまかと動き、「口は悪く虚言癖があるけど案外素直」(公式サイトより)。そういえば、熊本の人気者「くまモン」も、仕事に嫌気がさして逃げ出したことがあった。これらのキャラクターはなんとも「人間くさく」、ゆえに愛される存在になっているという構図がある。

 週刊誌でギャラについて叩かれたこともあるが、もはや有名税だろう。それまで手弁当でパフォーマンスしていた。公的な予算の助けを借りずブレイクしたことには感心するばかりだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 職務や勤務地、労働時間などが限られている正社員のことをいう。「ジョブ型正社員」とも呼ばれ、欧米では一般的な雇用形態とされている。正社員と非正規労働者との中間的な雇用形態に位置づけられる。いま注目を集めているのは、安倍自公政権がその普及・促進を図ろうとしているからだ。

 狙いは(1)多様な働き方の実現(2)非正規雇用から正規雇用へ近づける――と説明されているが、背景には、「構造不況産業から成長産業へ労働力の移動を図る」との思惑がある。労働力の移動は、人口減少社会の中、経済成長の果実を得るには欠かせない成長戦略だからだ。その意味でアベノミクスの一つと言っていい。

 これに対し、労働界は反発している。連合は「賃金カットなどこれまでの正社員に対する労働条件の引き下げ手段に悪用される。解雇されやすい正社員を作り出し、新たな格差を生み出す」と指摘する。不採算部門の閉鎖など企業の都合で安易に首切りされては、「働くものの雇用を脅かす改悪政策」ということだろうか。「多様な生き方」「非正規から正規へ」といった美名に隠れて「企業の論理」が見え隠れするわけだ。

 そうならないためにも、どのような場合に解雇ができるのかそのルール作りが必要だ。政府もそこはわかっていて、2013年度中に有識者懇談会を開いてルール作りを検討するとしている。


 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 梅雨の晴れ間に襖や障子を片付け、代わりに夏用の建具と入れ替えることをいう。模様替えや建て替えともいわれる。建具替えとともに、きものは単衣(ひとえ)から絽縮緬(ろちりめん)などのうすものを着た人を見かけるようになり、普段でも着ながしや浴衣の涼しげな装いが増えてくる。衣服も、家の装いも、夏向けにがらりと趣を替えると、あとは祇園祭を待つばかりである。宵山などへ出かけるならば、京都の夏しつらえも楽しんでいただきたい。

 京都の夏はとにかく蒸し暑いので、少しでも暑気をはらって見た目にも涼しく、建具には御簾(みす)をかけたり、簾戸(すど)を入れたりするのが京都流の粋である。御簾とは薄い竹で編んだ簾(すだれ)の一種。簾戸は昔風の網戸のことで、葦(よし)障子ともいわれている。葦の簾を障子の枠にはめ込んだもので、とても風通しがよくなる。座敷を涼しくする夏の小道具にはいろいろあって、たばこ盆、団扇、風鈴、夏座布団、寝ござといったあたりが定番といえよう。畳の上には籐(とう)で編んだ網代(あじろ)の敷物を敷くのがいい。油をすり込んだ和紙を幾重にも重ね張りしてつくる、床材のような敷物の油団(ゆとん)で涼やかに過ごしてみたいものだが、最近では入手が難しいうえに高価なので、今のところ憧れの的といったところ。

 このような夏のしつらいは、多少残暑が長くても、9月の終わりにはもとに戻す。大きな屋敷には建具替え専用の蔵や屋根裏が用意してあり、大工に建具替えを依頼する人も少なくない。


夏敷物の油団をつくっているところ。和紙を一枚ずつ重ねて貼り合わせながら、刷毛で強く打つことで、厚い一枚の紙=敷物をつくっていく。表面に荏油を塗ると完成である。毎年、水拭きしながら使っていると、徐々に飴色の風格のある表情に変わっていく。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



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 第88回NHK連続テレビ小説。脚本・宮藤官九郎(くどう・かんくろう)、主演・能年玲奈(のうねん・れな、19)。

 4月から始まった「あまちゃん」も6月末から後半の東京編がスタート。北三陸市で海女のアイドルになった天野アキ(能年)が、2009年夏日本各地のご当地アイドル代表が集まる「GMT(ジモトの意味)47」へ入るために上京して、奮闘する姿を描いている。

 かつてアイドルを目指したが挫折したため、アキの上京に強硬に反対する母親役に小泉今日子を配したことも、このドラマを骨太にしている。

 クドカン(宮藤の通称)の脚本が素晴らしい。北三陸市は架空の都市で、岩手県久慈市が舞台。小袖海岸の「北限の海女」や三陸鉄道北リアス線にまめぶ汁、80年代のアイドルソングにいまが盛りの「AKB48」をもじった「GMT47」を登場させるなど、現実の社会現象をドラマに取り込み、アキが成長していく姿を、切れのいいテンポで見せる。

 番組の中でアキが発する「じぇじぇじぇ」という言葉が流行語にもなっているが、小袖地区の海女たちが驚いたとき実際に使っている言葉だそうだ。

 主役の能年はいま時珍しい素朴さを感じさせる美少女。東北弁をうまく操るが『週刊新潮』(6/20号)によれば、彼女が生まれたのは兵庫県の中ほど、城で名高い姫路から電車で1時間弱の神崎郡神河町で、美しい川と清涼な水田が印象的な、民家もまばらな山間の地である。能年の母親が娘のことをこう語っている。

 「自分の好きなことをやってくれたらええと思ってきました。悪いことはしないとか、朝出かけるときはみんなに挨拶するとか、基本的なことは教えてきましたけど、全然厳しくなかったと思います。ただ貧しいから、欲しいからって与えられへん。“ピアノを習いたい”とか言ってたけど、それは“ごめんなさい”って。勉強はノータッチでしたけど、6年生のとき義務教育のシステムがわかってなくて、“中学校に上がられへん”と言って猛勉強したときもありました。服は好きで、2、3歳ごろから試着するのも嫌がらなくて、ファッションとか華やかなことには、元々興味があったんやろうなと思います」 

 温かな家庭でのびのび育ってきたことが窺える。

 私事だが、朝の連ドラ(私たちの世代はこういっていた)を見るのは何十年ぶりだろう。一番覚えているのは1964年の「うず潮」(主演・林美智子)と1966年の「おはなはん」(主演・樫山文枝)である。

 その頃は1年通しでやっていた。学校に遅れるわよと母親に怒られながら、終わると同時に家を飛び出したことを懐かしく覚えている。

 「うず潮」は作家・林芙美子の小説を題材に、「おはなはん」は作家・林謙一の母がモデルで、苦難に耐え、明るくたくましく生きていく女性の生涯を描いたものである。

 「うず潮」は平均視聴率30.2%、最高視聴率は47.8%であった。

 もっとすごいのが1983年の「おしん」(脚本・橋田壽賀子、主演・小林綾子)。平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%。テレビドラマの最高視聴率を記録し「オシンドローム」といわれる社会現象を巻き起こした。

 そうした怪物番組ほどではないが「あまちゃん」は、視聴率20%超えを連発、久しぶりのヒットである。『現代』ではほぼ毎週「あまちゃん」が登場、『ポスト』は後半ネタバレ特集を組み、『文春』『新潮』も出演者の記事をピックアップするなど、週刊誌上でも熱い話題となっている。

 ドラマのクライマックスは2011年の東日本大震災になるそうだ。アキや北三陸の人たちがどうなるのかも、大きな注目点だ。

 『週刊現代』(7/6号)で、このドラマの音楽担当の作曲家・大友良英(よしひで)氏がこう話す。

 「宮藤さんは宮城県の生まれ。私は福島の人間で、3・11以後は震災の被害や、原発事故問題に向き合って来ました。(中略)でも人間、どんな辛いことがあっても、前を向いて幸せに生きていきたいじゃないですか。『朝ドラ』は夢の世界。その15分の間は、幸せな時間を過ごして欲しいですね」

 高度成長期やバブルが弾ける前は、どんなに苦しくても耐える女性のドラマが受ける。いまは現実が厳しいから、夢と笑いのあるドラマが受けるのかもしれない。

 

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読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 2012年12月に東証マザーズへの上場を果たしたバイオベンチャー、「ユーグレナ」の株価が絶好調だ。同社が扱うのは、理科の時間に覚えさせられた「ミドリムシ」。鞭毛(べんもう)で動き回れる点においては「動物」、葉緑体を持って光合成する点では「植物」という、興味深い存在だ。「ユーグレナ」という社名はこのミドリムシの学名で、栄養素が豊富なことから健康食品として耳目を集めつつある。

 同社の社長・出雲充(いずも・みつる)氏は、東大農学部出身。在学中からミドリムシに注目し、銀行員を経て起業した(ちなみに研究所の所在地は、本郷キャンパス内の東京大学アントレプレナープラザ)。実は日本では、ミドリムシの重要な研究が志半ばで中止になった経緯がある。いったん打ち切られた研究開発を受け継ぎ、大量培養にこぎつけたのは、出雲氏らのすばらしい成果だ。現在、マスコミではミドリムシ入りのケーキやラーメンなど「食」の面での紹介が多いが、それ以外にも地球規模の展開を目指している。たとえば、バイオ燃料の研究だ。同社サイトには、ミドリムシのジェット燃料が飛行機を飛ばす未来が語られている。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



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 「若いのに働かない怠け者」。

 ニートに対して、そんなイメージを持っている人も多いのではないだろうか。ニート(NEET)は、not in education, employment or trainingの略語で、日本では15~34歳の非労働人口のうち家事や通学をしていない人と定義づけられている。

 とかく、「わがまま」の一言で片づけられがちだが、厚生労働省の「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究報告書」(平成19年度)を読むと、そのイメージは覆される。

 「社会や人から感謝される仕事がしたい」と答えた人は82.5%、「仕事を生きがいとしたい」と答えた人は68.7%。彼らは、仕事に対して前向きに考えていることがわかる。その一方で、「知らない人に話しかけるのが苦手」と答えた人が59.6%、「面接で質問に答えるのが苦手」と答えた人が64.8%で、他者とのコミュニケーションを苦手とする傾向もある。

 つまり、就労意欲はあるのに、コミュニケーション能力が低かったり、精神的な弱さが障害となって、なかなか仕事に就けないのがニートの実態なのだ。

 そこで、これまでのイメージを覆すために、ニートの中でも就労意欲があって行動している若者の呼称として、大阪府にあるNPO法人などが提唱しているのが「レイブル」だ。

 欧米諸国では高等教育の卒業後に就職せずに、ボランティア活動などの経験をする若者を「レイトブルーマー(late bloomer)」と呼ぶ。「遅咲き」「大器晩成」の意味だが、レイブルはこれにちなんで作られた造語だ。

 大阪府では、こうしたレイブルに対して、府内10社の企業と連携して、職業体験できる場を提供したりして就労支援を行なっている。

 2011年の調査では、ニートは全国で60万人にも及ぶという。少子高齢化が進み、社会の支え手がますます必要になるのに、60万人もの若者が労働市場に参加できない現状を放置しておくことは大きな損失だ。

 また、人が生きていくうえでも、「働く」ことは自分が社会に必要とされていることを実感できて、自己承認を得やすいものだ。働くことで満足を得られれば、それが自信につながり豊かな人生を送ることも可能になる。

 国も「地域若者サポートステーション」を設けて、若者の就労支援を行なっている。だが、さまざまな困難を抱え、社会から排除された若者を包みこみ、いかに面倒をみていくのか。大阪府の取り組みのように、私たちの社会はいま、試されている。

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ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



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 NHK連続テレビ小説の『あまちゃん』は、架空の地「北三陸市」が舞台だが、そのモデルとなっているのが岩手県久慈(くじ)市。劇中に出てくる「まめぶ汁」も、実際は同市の名物だ(より正確には市内の旧・山形村の一帯だけに伝わっていた料理)。「久慈まめぶ汁」の名前で、地域グルメの人気イベント「B‐1グランプリ」にも参戦している。

 まめぶ汁の「まめぶ」とは、山ぐるみと黒砂糖の入ったお団子。これを野菜・焼き豆腐・油揚げなどとしょうゆ味で煮込むという、具だくさんの料理である。「しょっぱいと思ったら甘い」という個性は、『あまちゃん』の中でもおもしろおかしく取り上げられている。このまめぶ汁、実は東日本大震災のときに炊き出しの料理としても活躍した。震災当時、久慈市で開催目前だったイベント用の食材が活かされたのだという。人々の傷ついた心を癒やしたまめぶ汁を『あまちゃん』に「出演」させたのは、制作側も意図があってのことかもしれない。

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旬wordウォッチ / 結城靖高   


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