本書は、1927(昭和2)年に故矢野恒太* が初版を発刊して以来、93年にわたり刊行を続けて参りました。初版の序文では、「編者が若し教育家であって、幾人かの青年を預かったなら、本書に書いたことだけは何科の生徒にでも教えたいと思うことである。本書は講堂のない青年塾の一部である」と記して、著者の教育への熱い思いを伝えています。わが国初の国勢調査が実施されたのが1920(大正9)年のことで、本書発刊当時は統計が十分には整備されておらず、青少年が客観的な判断力を養うために統計の普及が求められていました。そうした時代に、本書は貴重な統計年鑑の一つとして刊行を重ね、現在に至っています。
2020年に入ると世界中に新型コロナウイルスがまん延するようになり、WHOは3月11日にパンデミック(世界的な大流行)を宣言しました。現状有効な治療方法がなく、外出するだけでウイルスに感染、発症しかねないとの不安感から、人々は普段の生活を送れずにいます。ウイルス対策として、海外では罰則を伴う外出制限や都市封鎖(ロックダウン)が発令され、日本でも4月7日に7都府県、16日には全国を対象に外出自粛、施設休止などを要請する緊急事態宣言が出されました。移動の制限などで経済活動が収縮し、IMFは世界大恐慌以来、最悪の不況に直面していると報告しています。現段階で新型コロナ禍の収束時期を見通すことは困難であり、長期化の様相さえ呈しています。東京五輪・パラリンピック2020の開催延期を余儀なくされた新型コロナ禍の一刻も早い収束、終焉を願うばかりです。
*矢野恒太(やのつねた) 慶応1.12.2~昭和26.9.23(1866.1.18~1951.9.23)
第一生命保険の創立者。保険のみならず統計、公衆衛生、社会教育など各方面に功績があった。