ジャパンナレッジ
本書は、1927(昭和2)年に故矢野恒太* が初版を発刊して以来、92年にわたり刊行を続けて参りました。初版の序文では、「編者が若し教育家であって、幾人かの青年を預かったなら、本書に書いたことだけは何科の生徒にでも教えたいと思うことである。本書は講堂のない青年塾の一部である」と記して、著者の教育への熱い思いを伝えています。わが国初の国勢調査が実施されたのが1920(大正9)年のことで、本書発刊当時は統計が十分には整備されておらず、青少年が客観的な判断力を養うために統計の普及が求められていました。そうした時代に、本書は貴重な統計年鑑の一つとして刊行を重ね、現在に至っています。
昨年末に発覚した統計不正問題については、本書中の表・図の多くが政府統計を原資料としていることから、一刻も早い信頼の回復を願うばかりです。各省庁では、問題のあった統計の見直し、再集計に取り組んでいるところで、本書でも入手可能な限り、公表された再集計値を紹介致しました。統計の不備が判明している調査は数多く、今後、当財団が刊行する各書籍で、再集計された統計をフォローしていく所存です。
本年5月1日には新天皇が即位され、本書の歩みも昭和、平成、令和の三時代にわたることとなりました。本書がわが国の現状を捉え、これからを考える一助となれば幸いです。
読者の方々からの積極的なご意見、ご要望、ご叱責をお待ち致します。
*矢野恒太(やのつねた) 慶応1.12.2~昭和26.9.23(1866.1.18~1951.9.23)
第一生命保険の創立者。保険のみならず統計、公衆衛生、社会教育など各方面に功績があった。