ジャパンナレッジ
日本国勢図会は、1927年(昭和2 年)に矢野恒太*が創刊した統計データブックで、98年にわたり刊行を続けてきました。初版の序文では、「編者がもし教育家であって、幾人かの青年を預かったなら、本書に書いたことだけは何科の生徒にでも教えたいと思うことである。本書は講堂のない青年塾の一部である」と記しています。矢野恒太は客観的なデータが社会を知る上で重要と考え、その普及に努めました。以来、矢野恒太の理念を引き継ぎ、改良を加えながら版を重ねて現在に至っています。
戦後の日本は、自由貿易体制のなかで発展してきました。しかし、近年は世界的に保護主義的な動きが続いています。本書編集中の4月には、自由貿易をけん引してきたアメリカが高関税政策を発表し、自由貿易体制が揺らいでいます。EUでは第二次世界大戦後の平和な時代は終わったとして、防衛力強化を目指すなど、世界秩序が大きく変わろうとしています。本書は、編集時期の都合上、こうした動きをすべて盛り込んだ統計データの提供には至っていませんが、読者の皆様が社会を考察される一助となれば幸いです。
刊行にあたり、ご協力いただいた方々に深く感謝の意を表します。
*矢野恒太(やのつねた) 慶応1.12.2~昭和26.9.23(1866.1.18~1951.9.23)
第一生命保険の創立者。保険のみならず、統計、公衆衛生、社会教育など各方面に功績があった。