はじめに、このたびの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって被害にあわれた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。また、懸命に対応に当たられている医療関係者の皆様に、感謝と敬意を表します。
新型コロナウイルス感染症により、私たちの生活は一変しました。マスクなど感染拡大を防止するための「新しい生活様式」が定着する一方、人と人との交流という私たちの社会や文化を支える生活の基本が大きく減少しました。産業別にみると、飲食店など人と接する機会の多い業種や、鉄道や航空など人の移動を担う業種などが大きく打撃を受けており、コロナ禍の影響には偏りがあります。これに対し、雇用を維持し家計を救うため、政府による大規模な財政拡大が続いています。他方、業種によってはテレワークが一気に拡大して、働き方が変化しています。
日本国勢図会は、1927(昭和2)年に故矢野恒太* が初版を発刊して以来、94年にわたり刊行を続けてきました。初版の序文では、「編者が若し教育家であって、幾人かの青年を預かったなら、本書に書いたことだけは何科の生徒にでも教えたいと思うことである。本書は講堂のない青年塾の一部である」と記しています。今回の79版では、多くの統計でコロナ禍による経済や社会の変化をみることができます。
情報が氾濫する現代社会において、統計が示す事実をベースに物事を考えることは、ますます重要性が高まっています。本書が、読者の皆様が社会を考察されるための一助となれば幸いです。
刊行にあたり、ご協力いただいた方々に深く感謝の意を表します。
*矢野恒太(やのつねた) 慶応1.12.2~昭和26.9.23(1866.1.18~1951.9.23)
第一生命保険の創立者。保険のみならず統計、公衆衛生、社会教育など各方面に功績があった。