茨城県日立市宮田町神峰(かみね)神社の祭礼(5月3~5日)に出る風流物山車(だし)。笠鉾ともいう。国指定重要無形民俗文化財。からくり人形曳山は中部地方には多く見られるが,日立の風流物は山車の形態や規模の雄大さにおいて他に類例がない。山車は4台あり,幅4m高さ9mほどの表山(おもてやま)と,15mほどの裏山からなる巨大なものである。表山は5層(山車とも6層)の天守閣式の館で,各層とも唐破風の屋根をもつ。屋根が中央から左右に割れる(開く)とそのまま5段の人形舞台となり,《源平盛衰記》《風流仮名手本忠臣蔵》《風流太平記》などの人形芝居がからくりで各層ごとに1場ずつ5場演じられる。最後は武者人形たちが一瞬にして御殿女中に変身して総踊となるが,これもからくりで演じられる。この表山が終わると5層が180度回転して裏山が表になり,《白狐伝》《日本一桃太郎一代記》《風流三国誌》などのお伽噺風のからくり人形芝居が演じられる。山車には囃子方(大太鼓,小太鼓,鉦(かね),笛)や人形遣いが約30~35人乗り,山車の引手は200人を超えるという。1695年(元禄8)に山車が繰り出された記録があり,この山車にからくり人形を配して現在のような風流物になったのは享保年間(1716-36)という。現在,5月3日の祭礼に笠鉾が出るのは不定期とされる。
茨城県日立市宮田町、神峰(かみね)神社の5月3~5日の祭り(現、日立さくらまつり)に出るからくり人形山車(だし)。楼閣造りの表山と岩山造りの裏山が一体になった構造で、表山は唐破風(からはふ)屋根の5層建て、高さは10メートルほど、裏山は蔦蔓(つたかずら)でかたどり布で覆った断崖(だんがい)状の山で高さ15メートルほど。5層の楼閣が真ん中から左右に真横に割れて5段の舞台となり、数体ずつのからくり人形が登場して『源平盛衰記』『太平記』『忠臣蔵』などが囃子(はやし)にのって演じられる。最後は武士の人形なども御殿女中に変身し華やかな総踊りとなる。終わると裏山が正面に回って、『蛇塚』『俵藤太秀郷(たわらとうたひでさと)百足(むかで)退治』『桃太郎』などのからくり人形が演じられる。原形的な人形山車は1695年(元禄8)、からくりの考案は享保(きょうほう)年間(1716~1736)のことという。古い山車や人形は戦災でほとんどを失い、1958年(昭和33)に復興した。山車は現存は4台で、人形の胴体部は毎年新調される。1台の山車に人形遣い、鳴物係など50名以上が乗る。そのほか館係、山綱係など30名ほどを要する。全国に類例がなく、1977年に国の重要無形民俗文化財に指定されている。
また、2009年(平成21)ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に単独で登録されたが、2016年には日本各地の山車(だし)の巡行を中心とした祭礼行事33件をとりまとめた「山・鉾・屋台行事」の一つに含まれる形で、改めて登録された。
2017年2月16日
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