他人の意見や忠告に対して、何やかやと理屈を言って従わないさま。どう言えばこう言う。
*人情本・春色雪の梅(1838~42頃か)初・二回「ああ云(イ)へばかう云(イ)ふと言ってぢれったいねえ」
*諺語大辞典(1910)「ああ言(イ)へばかう言(イ)ふ」
*今年竹(1919~27)〈里見弴〉焼土・四「ああ言へばかう言ふし、かう言へばああ言ふし、どこまでも人に逆らひたい性分なんだなあ」
*小川の流れ(1929)〈牧野信一〉一「——だってさ、ああ云へば斯う云ふといふ彼奴は法螺吹きなのよ。——女の苦労をした人でなければお話にならないと、いふやうなことを妾が不断あまり吹き込み過ぎたもので」
*疵だらけのお秋(1931)〈三好十郎〉四「そこへ四五日前から杉山が宿(とま)り込みでゆするのよ。ああ言へば、かう言ふし、どんな事をしても出て行かないの」
*停年退職(1963)〈源氏鶏太〉酒場「『君は、こんな男に惚れているのか』『今まで、そのように見えませんでした?』『停年間際の男に、物好きにもほどがある』『あたしって、物好きな女なのよ』『うるさいな、ああいえばこういう』『そして、こういえばああいう、でしょう?』」
補説意見する側からのことばで、簡潔な表現の裏には、なかなか説得できず、匙を投げたい気分やいらだちが込められている。
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