弟子が師よりまさっていることのたとえ。藍より出でて藍より青し。出藍(しゅつらん)の誉。氷は水より出でて水より寒し。
*世俗諺文(1007)「青レ於レ藍〈略〉青取二之藍一而青三於二藍一」
*十訓抄(1252)一〇・序「道々の才芸も又父祖には及がたき習ひなれば、藍よりも青からんことはまことに希也」
*日蓮遺文‐上野殿御返事(1279)「故上野殿をこそ色ある男と人は申せしに、其御子なれば紅の濃きよしを伝へ給るか。あいよりもあをく、水よりもつめたき氷かな」
*応永本論語抄(1420)雍也第六「千騎を二千騎としるし、五千騎を一万騎と書て、藍出て藍よりも青云なす」
*童観鈔(1625)上「青き色は藍(ラン)より出れとも、藍よりもいよいよ青し。氷は水より出れとも水よりもさむし。学問してゆたんなくつとむれとも、弟子も師匠にまされり」
*浄瑠璃・三世相(1686)三「されば氷は、水より出て水よりもさむく、青き事あいより出てあいよりふかし、もとのうき身のむくひならば、今のくるしみさりもせで、あら人恋しゑんぶ恋しや」
*世諺叢談(1900)坤「青(アヲ)は藍(アヰ)より出(イ)でて藍(アヰ)よりも青(アヲ)し」
*婦人と文学(1948)〈宮本百合子〉二「萩の舎門下の才媛たちの間で、『あゐよりあをし』と定評されてゐたのは花圃であり、その花圃と並んでその才幹を着目されてゐるのが一葉であった」
補説「荀子‐勧学」の「学不レ可二以已一、青取二之於藍一、而青二於藍一、冰水為レ之而寒二於水一」から出た語。「王先謙‐荀子集解」により唐代には「取之於藍」の「取」を「出」に作るテキストがあったことが知られる。また、「史記‐三王世家」には「青采出二於藍一、而質青二於藍一者、教使レ然也」とある。これらにより「出藍」とも略される。「荀子」「史記」では、特に学問の深まりを青色の染料がその原料たる藍よりも青いことにたとえるが、「十訓抄」や「日蓮遺文」のように父子間や「応永本論語抄」のように数量を過大にいう場合など、もとのものよりもそこから派生したものの方がまさっている場合にも用いる。ただし、近代以降は、師弟関係に限って用いる傾向にある。
©2024 NetAdvance Inc. All rights reserved.