秋の日は、井戸の釣瓶が落ちるように早く沈み、暮れてしまう。秋の日暮れが早いことのたとえ。
*歌舞伎・勧善懲悪覗機関(村井長庵)(1862)六幕「もう入相でござりますれば、秋(アキ)の日(ヒ)の釣瓶落(ツルベオト)し。日が暮れるに間もござりませねば、今日はお暇致しませう」
*歌舞伎・牡丹平家譚(重盛諫言)(1876)「一時(とき)あれど秋の日の釣瓶落しに暮れ易し」
*日本俚諺大全(1906~08)「秋(アキ)の日(ヒ)は釣瓶(ツルベ)落(オト)し」
*右門捕物帖(1929~34)〈佐々木味津三〉袈裟切り太夫「いかさま釣瓶(ツルベ)落(オト)しの秋の日と、形容通り、いつかもう黄昏かけて来たと言ふのに」
*唄立山心中一曲(1941)〈泉鏡花〉「秋の日は釣瓶(ツルベ)落(オト)しだ、お前さん、もうやがて初冬(はつふゆ)とは言ひ条、別して山家(やまが)だ」
*西海道談綺(1976~77)〈松本清張〉夜の鳩笛「おや、もう夕方になりましたね。秋の日は釣瓶(ツルベ)落しというが、なるほど昏(く)れるのも早うございますな」
補説秋になると、日没の時刻が早まるだけでなく、その後の薄明の時間も短くなり、日が沈んで間もなく真っ暗になる。「釣瓶落とし」は誇張表現だが、それくらい早く感じられるということである。
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