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イェーツ

ジャパンナレッジで閲覧できる『イェーツ』の世界大百科事典のサンプルページ

改訂新版 世界大百科事典
イェーツ
William Butler Yeats
1865-1939

アイルランドの詩人,劇作家。ダブリンに生まれ,美術学校に進んだが,詩人となる決心を固めて退学。1887年,家族とともにロンドンに移り,世紀末文化のただなかに身を投ずることになる。W.ペーターやラファエル前派の作品を愛読し,W.モリスやO.ワイルドを知り,91年にはA.シモンズらと反俗的文学青年の集団〈詩人クラブ〉を結成。この間,心霊協会や結社〈黄金の暁教団〉に入会する一方,祖国の民俗文化への関心から《アイルランド農民民話集》(1888)を編集する。のちに詩神とも〈宿命の女〉ともなる愛国者で女優のモード・ゴンMaud Gonneを知ったのもこの時期であった。1889年,ケルト文化特有の非現実への憧れにみちた処女詩集《アシーンの放浪》を出版。良きパトロンのグレゴリー夫人と語らって,99年アイルランド文芸劇場(のちにアイルランド国民劇場協会)を設立。その本拠アベー座の運営による社会的現実との接触は,《キャスリーン・ニ・フーリハン》(1902初演)をはじめとするアイルランド伝説に題材を得た劇作とあいまって,詩人としての成熟をも促した。《緑の兜》(1910)から《クールの白鳥》(1917)にいたる詩集は,愛,老年,死,詩の個人的主題を社会的・神話的主題と自在にからませて個性的な声調でうたう現代詩人の出現を示している。劇作家としても,秘書役のエズラ・パウンドが入手したフェノロサ訳の《能》に触発されて,《鷹の井戸》(1916初演)など4編の舞踊劇を連作,新たな展開を見せた。詩,音楽,舞踊が一体化した象徴的演劇への長年の夢が東洋古典劇のなかにみごとに実現されているのを知ったイェーツの驚きと喜びは大きかった(《鷹の井戸》は日本で新作能《鷹姫》として翻案・上演されている)。1917年結婚。妻の心霊能力によって若年よりの隠秘学的関心がさらに深まった。世界史の展開,人間精神の類型,死後の霊魂のありようなどを,月の28相に照応させて体系化した神秘思想は現代の奇書ともいうべき《幻視録》(1925,改訂1937)にまとめられ,晩年の作品の背景をなしている。《塔》(1928)や《最後の詩集》(1939)などの詩作品,また《窓ガラスの言葉》(1930初演)や《煉獄》(1938初演)などの劇作品は,世紀末の夢想的文学青年がついに人間精神の悲劇的現実をときに簡勁に,ときに凄絶なユーモアをもって表現しうる老詩人へと成長したことを示している。英語圏における20世紀最大の詩人の一人との評価は,今後とも変わらないと思われる。23年ノーベル文学賞受賞。1922年から6年間アイルランド上院議員をもつとめた。墓は幼年時代を過ごしたアイルランド西部の町スライゴにある。
[高橋 康也]

[索引語]
Yeats,W.B. ゴン,M. Gonne,M. アシーンの放浪 アイルランド文芸劇場 アイルランド国民劇場協会 アベー座 キャスリーン・ニ・フーリハン パウンド,E.W.L. 鷹の井戸 鷹姫 幻視録
上記は、日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書サービス「ジャパンナレッジ」のサンプル記事です。

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29. オケーシー
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同じような史観を説いたもう一人の象徴的存在は,本来美術史,もしくは文化史の出身であるF.A.イェーツであった。彼女は,ホイッグ史観に基づく歴史記述法への厳しい批 ...
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36. ギーターンジャリ
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37. ギーターンジャリ
世界大百科事典
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日本大百科全書
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41. グレゴリー夫人(Lady Isabella Augusta Gregory)
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42. ケルト人画像
世界大百科事典
O'Grady(1846-1928)が書いた《アイルランド史》(1878-80)は,19世紀のW.B.イェーツ,グレゴリー夫人,J.M.シング,エー・イーAE( ...
43. 劇場画像
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44. 劇場画像
世界大百科事典
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45. コバーン画像
日本大百科全書
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46. コラム(Padraic Colum)
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47. 詩
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49. 詩劇
世界大百科事典
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50. 象徴主義
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「イェーツ」の情報だけではなく、「イェーツ」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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