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神楽

ジャパンナレッジで閲覧できる『神楽』の世界大百科事典のサンプルページ

改訂新版 世界大百科事典
神楽
かぐら

神前で神をまつるために演じられる神事芸能で,奏楽,唱歌,舞踊,演劇などさまざまな芸態がある。〈かぐら〉というよみ方については,神座(かむくら)の音韻転化とする説(折口信夫)が定説化している。神楽の字の用例は《万葉集》の諸歌に〈神楽波(ささなみ)の滋賀〉などとあり,〈ささ〉とよむこともあった。これには鎮魂の呪具たる採物(とりもの)の笹の葉ずれの音(本居宣長)とか,鈴の音(本田安次)などの説があるが,神事芸能を内容とする初見は807年(大同2)撰の《古語拾遺》の〈猨女(さるめ)君氏,供神楽之事〉である。しかし神楽の文字が使われ出すのは石清水(いわしみず)八幡宮の初卯の神楽や,賀茂神社臨時祭の還立(かえりだち)の神楽のように9世紀末から10世紀初頭にかけてである。宮中では先行神事芸能としての琴歌神宴が行われており,10世紀に入って御遊(ぎよゆう)ないし御神楽(みかぐら)が清暑堂において行われ,1002年(長保4)に内侍所(ないしどころ)御神楽が成立した。この宮中における神楽については〈御神楽〉の項目を参照されたい。

神楽は本質的には招魂の鎮魂(たましずめ)作法であり,歌舞を演ずる楽(あそび)の形式をとった。神遊(かみあそび)の歌(《古今集》)の用例もあり神楽を〈かみあそび〉(《神楽歌考》)と呼んだ可能性もある。招魂思想には天の岩屋戸(あまのいわやど)神話の天鈿女命(あめのうずめのみこと)の作法(わざ)を唱導した猿女氏のもの,平安以降宮中鎮魂祭の主体となった天饒速日命(あめのにぎはやびのみこと)の降臨神話による物部氏のもの,神功皇后の新羅攻めの説話にちなむ阿度部磯良(あどべのいそら)の安曇(あずみ)氏のものなどがあるが,内侍所御神楽の基本となったのは石清水八幡宮を経た八幡系の安曇氏の鎮魂作法だったようである。
→神楽歌

里神楽

御神楽以外の民間の神楽を里神楽と総称するが,別して江戸で発達した神楽を1874年(明治7)から郷(里)神楽と呼ぶようになった。民間の神楽は全国津々浦々に散在し,おびただしい数にのぼる。そしてあたかも猿(猨)女君氏の唱導であるかのように岩戸神楽や神代神楽の名を冠するものが多い。しかしなお民間の神楽には踏鎮めによる悪霊の鎮魂作法をもつ修験道の参画をみたものが少なくない。こうして民間の神楽は複雑になり,西角井正慶,本田安次,三隅治雄らによってそれぞれ分類法が示された。それらを統合して考えると,巫女神楽,採物神楽,能神楽,湯立神楽,獅子神楽に大別されよう。

(1)巫女は舞による神懸りで託宣に及ぶもので,天鈿女命にその原型を見るが,今日の巫女舞は静かで優雅な舞が多い。春日大社の社伝の神楽,美保神社の朝神楽・夕神楽の巫女舞などが代表的なものである。(2)採物神楽と能神楽は対になっている場合が多く,その最も古い典型が出雲の佐陀(さだ)神社の七座の神事と神能(佐陀神能)で,この形式のものを出雲流と呼び,中世末から近世初頭の初発である。この流派が最も広く分布しているが,高千穂神楽では採物神楽に傾き,江戸の里神楽では神話のことごとくを黙劇に仕組むというように能に傾いている。(3)湯立神楽は神聖な湯花に触れて祝福を得ようとするもので,伊勢神宮外宮(げくう)の御師(おし)と呼ぶ外勤神職団によって広められ,伊勢流と呼ばれているが,今は伊勢になく,秋田県横手市の保呂羽山波宇志別神社の霜月神楽や愛知県の花祭などに残されている。湯釜をすえて神々を勧請(かんじよう)し,数々の潔(きよ)めの舞を舞い,ときには見物人に湯花を振りかけるのである。(4)獅子神楽は獅子頭(ししがしら)を権現(神の仮託した姿)とあがめ,潔め鎮(しず)めの獅子舞を舞わせたのち,数々の余興を演ずる。岩手県の山伏神楽などでは能楽大成以前と目されるような古風な能舞や狂言を演じ,伊勢大神楽などのいわゆる太(だい)神楽では散楽系の曲芸や滑稽を演じてみせる。太々(だいだい)神楽,代々神楽の名称には規模の大きさ,美称,代参(信者講中の参加者による)などさまざまな意味が含まれている。

神楽人は本来神職が演じることが多かったが,明治維新以後は在来の神事舞太夫の列に加わって民間人が演じているところが多い。神楽の舞台は拝殿,神楽殿などのほか仮設の舞台,民家の座敷・土間などさまざまであるが,出雲流の岡山県の備中神楽や広島県の備後神楽では神殿(こうどの)と呼ぶ特設の舞処を設け,天蓋(てんがい)飾をつける。天蓋飾は高千穂神楽や花祭にも顕著で,陰陽道,修験道の影響を色濃く宿している。
→神楽面
[西角井 正大]

[索引語]
神座 御神楽 里神楽 巫女神楽 採物神楽 能神楽 湯立神楽 獅子神楽 出雲流 御師 霜月神楽 花祭(民俗) 伊勢大神楽 神殿
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検索ヒット数 6088
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検索コンテンツ
1. 神楽(北海道の地名)
日本大百科全書
地で、水田が広がり、被覆栽培による野菜生産の先進地である。忠別(ちゅうべつ)川との合流点近くの神楽市街には林野庁の北海道森林管理局旭川事務所があり、近くに外国樹 ...
2. 神楽(歌舞)画像
日本大百科全書
)の日)に行われた。 神楽は宮中の御神楽(みかぐら)すなわち内侍所御神楽(ないしどころのみかぐら)と、民間に行われる里神楽に大別される。渡辺伸夫御神楽宮中の内侍 ...
3. 神楽[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
神楽(かぐら)。『職人尽絵詞(しょくにんづくしえことば)』 第3軸(部分) 原図は、鍬形蕙斎(くわがたけいさい)(北尾政美(まさよし))画、手柄岡持(てがらのお ...
4. 神楽画像
世界大百科事典
→神楽面西角井 正大 神座 御神楽神楽 巫女神楽 採物神楽神楽 湯立神楽 獅子神楽 出雲流 御師 霜月神楽 花祭(民俗) 伊勢大神楽 神殿 ...
5. 神楽
世界大百科事典
吹き,小鼓も〈神楽地〉という特殊な地を打ち,多く幣をもって舞い,優美にリズミカルに奏演される。準神舞部分は扇で舞い,爽快によどみなく奏演される。純神楽部分で終始 ...
6. かぐら【神楽】
日本国語大辞典
すなわち、巫女が舞う巫女神楽、神話・伝説を黙劇または科白劇で演じる里神楽・太太神楽(だいだいかぐら)、清めの湯をふりかける湯立神楽、家ごとに獅子頭をまわし息災延 ...
7. かぐら【神楽】画像
全文全訳古語辞典
〔名詞〕神前で奏する歌舞。 「神楽こそ、なまめかしくおもしろけれ」〈徒然草・16〉神楽というものは、優雅で趣のあるものである。天照大御神が天の岩戸に隠れた時、そ ...
8. かぐら【神楽】
国史大辞典
係ではない。以上の古神楽が、内侍所御神楽の成立に影響を与えた。民間の神楽(里神楽)は、その形態の上から、(一)巫女神楽、(二)出雲流神楽、(三)伊勢流神楽、(四 ...
9. 神楽
日本史年表
1191年〈建久2 辛亥⑫〉 12・19 源頼朝,山城久家らを京に遣し,多好方より 神楽 を学ばせる(吾)。  ...
10. 神樂(かぐら)【篇】
古事類苑
樂舞部 洋巻 第1巻 151ページ ...
11. かぐら【神楽】[技法・演出]
能・狂言事典
前半の純神楽部分と後半の準神舞部分とに分かれるが、その接続のしかたには、段で接続する〈段直リ〉と、地で接続する〈地直リ〉の二種がある。純神楽部分では笛は固有の旋 ...
12. 神樂(かみあそび)
古事類苑
樂舞部 洋巻 第1巻 151ページ ...
13. かみ‐がく【神楽】
日本国語大辞典
〔名〕能楽の舞の一つ。「翁(おきな)」で、シテの翁が舞う舞。小鼓三つではやし、笛があしらう特殊な舞。翁役を神になぞらえたもの。翁の舞。 ...
14. 【神楽(樂)】しんがく
新選漢和辞典Web版
【一】しんがく霊妙な音楽。 【二】かぐら《国》祭りのとき、神前で奏する舞楽。  ...
15. 神楽(著作ID:1080348)
新日本古典籍データベース
かぐら 富士谷御杖(ふじたにみつえ)  ...
16. 神楽(著作ID:4378427)
新日本古典籍データベース
かぐら  ...
17. かぐら【神楽】[方言]
日本方言大辞典
大阪府泉北郡646和泉郷荘村方言(南要)1935(3)祭礼。 新潟県岩船郡(4)→かぐらさん【神楽桟】かぐらとーがらし【神楽唐辛子】かぐら 舞まって行ゆく急いで ...
18. かぐら【神楽】[標準語索引]
日本方言大辞典
ら:神楽の舞ちゃんちき / ちゃんちきまいかぐら:神楽や万歳の演者の組だちかぐら:神楽をする女性みかんこかぐら:神楽を行う者たちの長かぐらべっとーかぐら:神楽を ...
19. 〓暑堂御神樂 (見出し語:神樂【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第1巻 1311ページ ...
20. 〓暑堂御神樂 (見出し語:神樂【篇】)
古事類苑
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21. 内侍所御神樂 (見出し語:神樂【篇】)
古事類苑
帝王部 洋巻 第1巻 126ページ ...
22. 齋院相嘗神樂 (見出し語:神樂【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 482ページ ...
23. 日吉神社神樂 (見出し語:神樂【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第4巻 646ページ ...
24. 春日神社神樂 (見出し語:神樂【篇】)
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25. 狂言神樂 (見出し語:神樂【篇】)
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26. 神樂用拍子 (見出し語:神樂【篇】)
古事類苑
樂舞部 洋巻 第2巻 1144ページ ...
27. 神樂殿(かくらでん)
古事類苑
神祇部 洋巻 第1巻 488ページ ...
28. かぐら‐いた【神楽板】
日本国語大辞典
板(あゆみいた)。〈略〉今歩板と書。又摂州灘舟にて神楽板と呼」 ...
29. 神楽歌
日本大百科全書
神楽のおりに歌われる神楽と民謡。宮廷御神楽(みかぐら)の神楽歌と民間神楽神楽歌がある。現存する神楽では宮廷の神楽歌が最古で、その歌本の古写本は、藤原道長筆と伝 ...
30. 神楽歌
世界大百科事典
歌5)を収める。神遊の歌は神楽歌の古称と見られる。《拾遺和歌集》巻二十にも〈神楽歌〉11首を収める。神楽歌の平安時代書写本には源信義本,鍋島家本,伝藤原道長本《 ...
31. かぐら‐うた【神楽歌】
日本国語大辞典
〔名〕神楽(1)の中で歌う歌。特に清暑堂、内侍所(ないしどころ)の御神楽に歌う歌。庭燎(にわび)、採物(とりもの)、大前張(おおさいばり)、小前張、星歌、雑歌の ...
32. かぐら-うた【神楽歌】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕神楽を奏する時に歌う歌。特に、内侍所の神楽の時に歌う歌。(冬の季語)  ...
33. かぐらうた【神楽歌】
国史大辞典
神楽の際うたわれる神歌や民謡。『古今和歌集』二〇に「神あそびの歌」十三首があり、『拾遺和歌集』二〇にも「神楽歌」十一首を載せるが、ふつう神楽歌といえば、上を含 ...
34. 神楽歌
日本古典文学全集
平安宮廷の「神楽歌」を集めて載せる。神楽歌は、日本独特の歌舞芸能で、神楽の際にうたわれる神歌や民謡のこと。その種類は、庭火(にわび)・採物(とりもの)・大前張( ...
35. かぐらうたくもいのきょくまり[かぐらうたくもゐのキョクまり]【神楽諷雲井曲毬】
日本国語大辞典
歌舞伎所作事「どんつく」の本名題。 ...
36. かぐら‐うど【神楽人】
日本国語大辞典
〔名〕「かぐらびと(神楽人)」に同じ。 ...
37. かぐら‐お[‥を]【神楽男】
日本国語大辞典
〔名〕「かぐらおとこ(神楽男)」に同じ。*浄瑠璃・孕常盤〔1710頃〕五・百せん百味の神供をささげ「八人の少女、十人の神楽男、朝の御神楽夕べの祝詞(のっと)」* ...
38. かぐら‐おか[‥をか]【神楽岡】
日本国語大辞典
かぐらがおか。康楽岡。*色葉字類抄〔1177~81〕「神楽岡 カクラヲカ」*平治物語〔1220頃か〕上・信西の首実検の事「別当惟方と同車して、光泰の宿所、神楽岡 ...
39. かぐらおか【神楽岡】
国史大辞典
京都市左京区吉田神楽岡町にある丘陵。別名を吉田山という。名称の由来は、神々が神楽を奏した跡といわれるが、これは室町時代に吉田神道が興盛をみたころに、卜部家でい ...
40. かぐらおか【神楽岡】京都市:左京区/吉田村地図
日本歴史地名大系
九―八七七)創建という吉田神社が鎮座する。この岡は神のよります神座であったと思われ、神座の岡が神楽岡となったものであろうが、「日本逸史」延暦一三年(七九四)一一 ...
41. 神樂岡東陵(かぐらおかのひがしのみささぎ)
古事類苑
帝王部 洋巻 第1巻 1016ページ ...
42. かぐらおかひがしりょう【神楽岡東陵】京都市:左京区/浄土寺村地図
日本歴史地名大系
元慶八年(八八四)関白藤原基経によって廃され、のち陽成院と称した。天暦三年(九四九)九月二九日死去。一〇月三日に神楽岡東地に葬られた(日本紀略)。陵は封土円墳で ...
43. 神楽岡吉田社[図版]画像
国史大辞典
都名所図会 (c)Yoshikawa kobunkan Inc.  ...
44. かぐらおじょうあと【神楽尾城跡】岡山県:津山市/旧苫田郡地区/惣社村
日本歴史地名大系
総社・小原・下田邑・上田邑にまたがる標高三〇八・四メートルの神楽尾山頂に築かれた当地方有数の規模をもつ山城。山頂に天剣神社があり、毎夜諸神が集まり神楽を奏し、そ ...
45. かぐら‐おとこ[‥をとこ]【神楽男】
日本国語大辞典
〔名〕神楽を奏する男。かぐらおのこ。かぐらお。*古今著聞集〔1254〕一二・四二四「拝殿と名付けて、八乙女以下、かぐらおとこなどをすゑたりけり」*神道名目類聚抄 ...
46. かぐらおとこ【神楽男】
国史大辞典
ぞれ笙・笛・和琴・篳篥を鳴らしたとあり、これを「五人ノ神楽男」と記している。『神道名目類聚抄』にも、「神楽ノ事ニ預ル役人ナリ、五人ノ神楽男ト云ハ、八乙女ニ対シテ ...
47. 神樂男(かぐらおとこ)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 1520ページ ...
48. かぐら‐おとめ[‥をとめ]【神楽少女】
日本国語大辞典
〔名〕「かぐらみこ(神楽巫女)(1)」に同じ。*俳諧・犬子集〔1633〕六・雑冬「おもて白き神楽乙女のけしゃう哉〈望一〉」*浄瑠璃・日本武尊吾妻鑑〔1720〕五 ...
49. かぐら‐おのこ[‥をのこ]【神楽男】
日本国語大辞典
〔名〕「かぐらおとこ(神楽男)」に同じ。*曾我物語〔南北朝頃〕四・鎌倉殿箱根御参詣の事「別当社僧は、経の紐をむの甍に解き、かぐらおのこは銅と拍子をあはせて拝殿に ...
50. かぐら‐おもて【神楽面】
日本国語大辞典
〔名〕神楽を奏する人。一説に神楽を奏する人の面。*源氏物語〔1001~14頃〕若菜下「酔(ゑ)ひ過ぎにたるかくらおもてども、おのが顔をば知らで、面白きことに心は ...
「神楽」の情報だけではなく、「神楽」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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