人口センサスpopulation censusの訳語として使われることもあるが,日本では,統計法(1947年5月施行)に基づき,政府が全国民について行う人口に関する調査を国勢調査と呼ぶ。指定統計第1号。調査は10年ごとに,またその間の5年目に当たる年には簡易な調査が,それぞれ行われることになっている。調査対象は,調査年の10月1日午前0時現在に日本国内に常住する者(外国人,浮浪者等も含み,国外に出ている者等は含まない)である。近年の調査における調査事項は,(1)氏名,(2)男女の別,(3)出生の年月,(4)世帯主との続柄,(5)配偶の関係,(6)国籍,(7)現住居に入居した時期,(8)前住地,(9)在学,卒業等教育の状況,(10)就業状態,(11)所属の事業所の名称および事業の種類,(12)仕事の種類,(13)従業上の地位,(14)従業地または通学地,(15)従業地または通学地までの利用交通手段,(16)世帯の種類,(17)世帯員の数,(18)家計の収入の種類,(19)住居の種類,(20)居住室の数,(21)居住室の広さ,(22)住宅の建て方,の22項目である。簡易調査の場合は,(7)(8)(9)(15)および(18)を除く17項目である。
国勢調査の調査主体は表のような変遷をたどって,現在は総務庁統計局が調査を企画し,実地調査は都道府県-市町村-指導員-調査員-世帯の系統で行われる。1人の調査員は,ほぼ50世帯を受け持ち,4名連記の世帯票様式の調査票を各世帯に配布し,記入を依頼するとともに,記入された調査票を取集し,その内容を審査するという,調査の第一線の仕事を行う。そのため調査員は,他の調査関係者と同様に,調査で知りえた秘密を保護するよう統計法において義務づけられており,違反すると罰せられることになっている。
第1回の国勢調査は,1902年公布の〈国勢調査に関する法律〉に基づき20年10月1日に実施され,その後10年ごとに大規模な調査が,中間の5年目には簡易調査が行われている。なお45年の国勢調査は中止されたが,47年に臨時国勢調査が実施され,また1944年,45年,46年には,資源調査法により全国的な規模の人口調査が行われた。第1回調査の調査事項は,氏名,男女の別,出生の年月日など11項目であり,また簡易調査である第2回調査では,氏名,男女の別,出生の年月,配偶の関係,世帯の種類の5項目と,近年の調査に比べ調査事項の数が少ない。第2次大戦前の大規模調査では,近年の調査事項にはない出生地が調査されており,また1940年の調査では,特別に熟練を要する職種,養成が容易でない職種など国の指定する技能について調査するなど,戦時色の濃い調査事項が含まれていた。近年の調査では,調査事項はほとんど変わっていないが,80年の調査では,戦後大規模調査で調査されてきた結婚年数と出生児数が,プライバシーの関係で,調査事項から削除された。
日本の国勢調査に相当する調査は諸外国においては,人口センサスあるいは人口・住宅センサスとして行われているが,調査事項,調査方法あるいは実施頻度など,国によってかなり異なっている。調査事項については,日本に比して調査事項が多い国が多く,たとえばアメリカの1980年センサスでは69項目も調べている。このように調査事項の多い国では,基本的な調査事項は全部の世帯について調査するが,それ以外の調査事項は標本調査の方法を導入している。たとえばアメリカの場合,23項目についてのみ全世帯で調べるが,残りの46項目については全国平均で約1/5の世帯を抽出して調査する方法をとっている。調査の実施頻度が5年ごとの国は,カナダ,オーストラリア,韓国など少数で,多くの国は10年ごとあるいは不定期となっている。
国内の人口・世帯の実態を明らかにし、各種行政施策などの基礎資料を得ること目的とした調査。国のもっとも基本的な統計調査である。国勢調査により作成される国勢統計は人口統計の一つであり、統計法上の基幹統計に位置づけられている。総務省統計局が5年ごとに実施しており、2020年(令和2)10月1日実施の調査で開始から100年になる。日本国内に普段住んでいるすべての人(外国人を含む)および世帯を対象とする全数調査で、世帯員に関する15項目(「男女の別」「出生の年月」「配偶者の有無」「就業状態」「従業地又は通学地」など)、および世帯に関する4項目(「世帯員の数」「世帯の種類」「住居の種類」「住宅の建て方」)を調査している。
もともとは「国勢調査ニ関スル法律」(明治35年法律第49号)に基づいて1920年(大正9)に第1回調査が行われ、その後5年ごとに実施されてきた。第二次世界大戦後は、当時の「統計法」(昭和22年法律第18号。現行法の前身)に基づき、第6回調査として1947年(昭和22)に臨時調査(1945年が終戦年次であり調査が中止されたことによる)が行われ、1950年以降は10年ごとに大規模調査、その中間の5年目に調査項目の一部を省略した簡易調査がそれぞれ行われ、調査年次の10月1日現在における日本人口の静態が把握されてきた。人口把握の基準としては、第1回から第6回までの調査では現在地主義(調査時点に滞在している場所を把握する方法)が採用されていたが、1950年に行われた第7回調査以降は常住地(当該住居に3か月以上住んでいるか)を基準として調査することに改められている。調査結果は、『国勢調査報告』として「全国編」「都道府県・市区町村編」「産業編」等に分けられて大部の統計資料として公表されている。
2020年9月17日
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