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僧尼令

ジャパンナレッジで閲覧できる『僧尼令』の国史大辞典・世界大百科事典のサンプルページ

国史大辞典
僧尼令
そうにりょう
『養老令』の篇目。同令の第七篇で、二十七条よりなる。『大宝令』の僧尼令もほぼ同内容。仏教教団の僧尼を統制する法典。日本令の母法である唐令には僧尼令はなく、道教の道士・道士女および仏教の僧尼を統制するための道僧格があった。日本僧尼令は唐道僧格から道教統制の要素を除いた部分を令の一篇としたもの。僧尼の犯罪・破戒行為への措置と、僧綱による僧伽の自治的統制、民間への不法な布教や私度の禁止などを定める。犯罪・破戒に対しては、(一)天文現象を観察して仮(いつわ)って災祥を説き国家(天皇)を論難し百姓を妖惑したり、禁書である兵書を習読したり殺人・〓盗を犯したり聖道を得たと詐称したりした場合などの強制還俗(僧尼身分の剥奪)による官司による科罪、(二)吉凶卜相や小道・巫術による療病などの場合の強制還俗、それ以下の犯罪・破戒の場合の(三)苦使の三段階の刑罰が定められており、令法典の中では異例の刑罰法典の性格を有する。
[参考文献]
井上光貞他校注『律令』(『日本思想大系』三)、三浦周行『法制史の研究』、井上光貞『日本古代の国家と仏教』(岩波書店『日本歴史叢書』)、砂川和義・成瀬高明「大宝令復原研究の現段階(二)―僧尼令―」(『神戸学院法学』一三ノ二)
(石上 英一)


改訂新版 世界大百科事典
僧尼令
そうにりょう

律令の編名で,僧尼に関する行政と刑罰の規定。僧尼に対する単行の法令は7世紀末に出ているが,律令の一編に加えられたのは大宝律令からである。701年(大宝1)道首名(みちのおびとな)が大安寺で説明した後に施行された。養老律令では27条からなる。形式的には,行政規定と刑罰規定に大別される。〈律〉的条項の刑罰規定をそのなかに含む法規が,僧尼令という名称でもって〈令〉に編入されているのは,律令の法体系において特異な存在である。それは唐の道僧格(どうそうきやく)という〈格〉を母法としたからであろう。ただ刑罰は,通常は僧尼身分を考慮して苦使や還俗(げんぞく)という閏刑を用いたが,僧尼にあるまじき重大犯罪には還俗したうえで〈律〉により科断した。内容的には,僧尼身分の異動と,寺院以外での宗教活動とに厳しい制限を設けている。律令制下では官許を得ないで出家する私度(しど)を認めず,また僧尼が呪術を介して民衆に接触することをもっとも警戒したが,僧尼令は,私度および私度にかかわる不法行為を厳禁し,かつ民衆教化を禁じ,山林修行や乞食(こつじき)さえも届出を義務づけている。こうした僧尼令にもとづく律令国家の仏教統制に対して批判的な運動が,養老年間(717-724)に勃興する行基らの民間伝道である。なお,平安初期の806年(大同1)少僧都(しようそうず)忠芬(ちゆうふん)の奏上で,殺人姦盗のほかは仏教の戒律により処罰することが勅許され,812年(弘仁3)までの間,僧尼令が実質的に停止された。
[中井 真孝]

[索引語]
私度
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検索コンテンツ
1. 僧尼令
日本大百科全書
仏教教団の僧尼統制の法典。日本令の母法である唐令には僧尼令はなく、道教の道士・道士女および仏教の僧尼の統制のための道僧格(きゃく)があった。日本僧尼令は、唐道僧
2. 僧尼令
世界大百科事典
ことをもっとも警戒したが,僧尼令は,私度および私度にかかわる不法行為を厳禁し,かつ民衆教化を禁じ,山林修行や乞食(こつじき)さえも届出を義務づけている。こうした
3. そうにりょう【僧尼令】
国史大辞典
『大宝令』の僧尼令もほぼ同内容。仏教教団の僧尼を統制する法典。日本令の母法である唐令には僧尼令はなく、道教の道士・道士女および仏教の僧尼を統制するための道僧格が
4. そうに‐りょう【僧尼令】
仏教語大辞典
明文化したことは日本独自のものといえる。 続紀 二・大宝元・六・壬寅 「令正七位下道君首名説僧尼令于大安寺」
5. 僧尼令
日本史年表
701年〈大宝元(3・21) 辛丑〉 6・1 僧尼令 を大安寺で講説させる(続紀)。
6. 僧尼令(著作ID:592687)
新日本古典籍データベース
そうにりょう 法制 
7. あすかぶっきょう【飛鳥仏教】
国史大辞典
最高の地位と格式を与えられ、藤原京の偉容を飾った。『大宝令』僧尼令は、大官大寺に参集した僧尼の前で説かれ、そして僧綱制はこの僧尼令によって確立せられた。玄奘訳に
8. 尼
世界大百科事典
受けたのである。仏教伝来の当初,尼は神まつりする巫女と同じであった。のち尼の数は増加し,8世紀のはじめ,僧尼令に細かな取締規定が設けられ,玄蕃寮(げんばりよう)
9. い‐ご【囲碁】
仏教語大辞典
うつこと。梵網四十八軽戒では第三十三戒にこれを禁ずる。また、この類の遊びを博戯という。ただし、『僧尼令』では「碁・琴は制限に在らず」と許している。 法華験記 上
10. い‐ほう【違法】
仏教語大辞典
きめられた規律にそむくこと。内法である戒律、俗法である「僧尼令」などを犯すこと、また、その行為。 日本後紀 一二・延暦二四・正・甲申 「為興釈教、擯出違法之僧」
11. うしきのさんごう【有職三綱】
国史大辞典
の大徳がなる阿闍梨の三者を指す。いずれも宣旨によって補任せられ、僧綱に次ぐ職であった。一方、僧尼令の規定により、各寺院には上座・寺主・都維那の三綱が置かれ、僧尼
12. え‐しき【衣色】
仏教語大辞典
衣の色。袈裟の色。『僧尼令』では、「木蘭・青碧・皀・黄・及壊色」と定める。 日用工夫略集 二・永和一・九・二 「写余真、黄衣色而索讃」
13. え‐じき【壊色】
仏教語大辞典
避け、通常、青・黒・木蘭の三色系統の濁った色をいうが、律典により多少の差がある。不正色。雑色。 僧尼令 一〇 「聴著木蘭・青碧・皀・黄及壊色等衣」 伝光録 上・
14. えじ‐し【依止師】
仏教語大辞典
出家になるために、出家前から師事して教えを受け、出家後も学業をうける師。師主のこと。 令義解 二・僧尼令・三 「師主〈謂、依止師是也。自為白衣時、服事者也。出家
15. 大鏡 281ページ
日本古典文学全集
たけだけしい、荒っぽい。「大童子」や「中童子」など。童子はもと僧侶に仕える十七歳以下の少年(僧尼令)を意味したが、後に寺院の雑役に従事した人。大・中の区別は年齢
16. か‐じょう【科条】
仏教語大辞典
僧の行為に対する僧尼令などに示された禁止条項。 類聚国史 一八六・僧尼雑制・大同元・一〇・壬戌 「故緇徒之禁、具載科条」
17. か‐ばつ【過罰】
仏教語大辞典
過ちを犯した罰。『僧尼令』に説く過罰とは、十日の苦使以上の罰をいうという。 →苦使 令集解 八・僧尼令・一四 「謂、過罰者、十日苦使以上也」
18. 鑑真
世界大百科事典
ず,受戒は出家の出発を約する重要な正門であった。日本では平城京遷都以後,仏教隆盛と並行して,僧尼令に違反する僧尼や,勝手に僧尼となる私度僧が群出するようになり,
19. がんじん【鑑真】画像
国史大辞典
登壇受戒は出家の正門とされていた。一方わが国においては、平城遷都後、仏教の隆盛とともに私度僧の群出、僧尼令に違犯する僧尼が多く、大陸仏教界の授戒制度、戒律研究の
20. きしん【基真】
国史大辞典
凌(陵)突した罪で飛騨国に流されたのは、陵突に対する百日苦使が適用されずにその三犯の重罰を受けたことになる(僧尼令)。『続日本紀』のこの日の条に舎利出現は作為で
21. きょう‐け【教化】
仏教語大辞典
1 教え導いて恵みを与えること。 僧尼令 五 「聚衆教化、幷妄説罪福、(略)皆還俗」 2 法要に際し仏前で朗唱される一種の賛歌で、声明の節によって唱するもの。
22. きょう‐ぞう【経像】
仏教語大辞典
経典と仏像。 僧尼令 二三 「僧尼等令俗人付其経像歴門教化者、百日苦使」
23. きんぶさん【金峯山】奈良県:吉野郡
日本歴史地名大系
「万葉集」巻一三に「み吉野の御金の嶽に間無くぞ雨は降るとふ」「み雪ふる吉野の嶽に」と詠まれ、「令義解」僧尼令に「謂仮山居在〓金嶺
24. 魏書釈老志 229ページ
東洋文庫
、急速に増加した僧団に対する統制の必要が生じて来たのであって、これから順次、唐や日本大宝令の僧尼令の基礎になったと思われる北魏の仏教統御に関する法制が発達して行
25. 行基
世界大百科事典
結合した活動は隋の三階教(信行が創始者)の影響という。 717年(養老1)政府が行基の伝道を《僧尼令(そうにりよう)》違反として禁圧したのは,彼への社会的信望を
26. ぎょうき【行基】
国史大辞典
を説き、朋党を合はせ構へ、(中略)余物を乞ひ、詐つて聖道を称し、百姓を妖惑す」(同)といい、僧尼令違反とし布教を禁圧した。『行基年譜』に当年の造寺がみえないのは
27. ぎょうき【行基】
日本架空伝承人名事典
結合した活動は隋の三階教(信行が創始者)の影響という。 七一七年(養老一)政府が行基の伝道を『僧尼令(そうにりょう)』違反として禁圧したのは、彼への社会的信望を
28. く‐げん【公験】
仏教語大辞典
えて僧や尼になったものに下付した証明書。後、鑑真の渡来により、戒牒の授与を以てこれにかえ、この制は中断した。 僧尼令 一六 「僧尼以己公験授与俗人」 2 また、
29. くし【苦使】
国史大辞典
着用すること、酒を飲み葷肉を食うこと等々、僧尼令にその規定がみえ、軽重により十日・三十日・五十日・百日の四等が定められている。苦使の内容は、『養老令』僧尼令修営
30. くし【苦使】 : 苦使/(一)
国史大辞典
着用すること、酒を飲み葷肉を食うこと等々、僧尼令にその規定がみえ、軽重により十日・三十日・五十日・百日の四等が定められている。苦使の内容は、『養老令』僧尼令修営
31. く‐し【苦使】
仏教語大辞典
犯した出家に対して、その罰として課する労役。ただし『僧尼令』に規定しているものは重労働に駆ることではなく、寺院内の清掃や経典書写などに従事することである。 僧尼
32. く‐どく【功徳】
仏教語大辞典
もたらすよい行い。神仏の果報をうけられるような善行。断食、祈禱、喜捨、造仏、写経の類。 令義解 二・僧尼令・一二 「功徳〈謂修善也〉」 3 福徳をもたらす行い。
33. 荊楚歳時記 30ページ
東洋文庫
是れ五種は一切の食中に食すること得ざれ。若し故さらに食さば軽垢罪を犯す」とある。日本の『養老令』中の僧尼令に「凡そ、僧尼酒を飲み、宍を食い、五辛を服する者は光日
34. げ‐じょう【下乗】
仏教語大辞典
貴人に対して僧尼は礼として馬からおりねばならないこと。「僧尼令」第十九条に、僧尼は三位以上の人と出会った時、隠れることができなければ、馬をとめて側に立てという。
35. 還俗
日本大百科全書
用ひんが為(ため)なり」とあり、これは僧の俗事能力が買われて官命により還俗させられた後者の例である。また「僧尼令」によれば、全27か条のうち、還俗規定および還俗
36. 還俗
世界大百科事典
犯した出家者が俗にかえるのを還俗,みずから俗生活にかえる場合は帰俗と区別することもある。律令制下での僧尼は〈僧尼令〉により規制され,その違犯者の刑罰の一つに還俗
37. げんぞく【還俗】
国史大辞典
僧が俗人にかえること。復飾ともいう。僧尼令によれば、僧尼が還俗する場合には、所属の寺の三綱が、京であれば僧綱を経て、また地方であれば国司を経て、治部省に届け出
38. げん‐ば【玄蕃】
仏教語大辞典
「 げんばりょう【玄蕃寮】 」の略。 僧尼令 五 「京内仍経玄蕃知」
39. げんばりょう【玄蕃寮】
国史大辞典
系統が、これまた単一の寺官の機構として確立したものが玄蕃寮なのである。その後、実際の管掌は、僧尼令では京内僧侶に限られていたようであるが、『延喜式』に集成される
40. こう‐い【綱維】
仏教語大辞典
寺で一般の僧を監督・指導する僧の総称。寺主・上座・維那など。 令義解 二・僧尼令・一四 「綱維者、張之曰綱、持之曰維。言張持法務、令其不傾弛也」
41. こく‐ふ【刻膚】
仏教語大辞典
第四十四軽戒には、皮を剝いで紙とし、血を墨として経典を書写することを菩薩行として勧めるが、「僧尼令」第二十七、焚身捨身条では禁止する。 続紀 九・養老六・七・己
42. こだい【古代】画像
国史大辞典
天武朝には僧正・僧都・律師より成る僧綱制として確立した。大宝元年(七〇一)には唐の道僧格を摸して僧尼令が制定され、律令国家の期待する僧尼像が示された。僧尼の使命
43. こつじき【乞食】
国史大辞典
ならない、生命を支えるに足るだけを受けるなど、種々の規律が定められていた。わが国の『養老令』僧尼令でも「その乞食する者あらば三綱連署して国郡司に経れよ、精進練行
44. こつじき‐しゃ【乞食者】
仏教語大辞典
食を乞い求めて修行する僧。乞食を修行として行う僧。「僧尼令」では乞食には管轄機関の許可が必要であるとした。 霊異記 下・三八 「乞食者来於景戒之家誦経」
45. 木葉衣・鈴懸衣・踏雲録事 修験道史料1 11ページ
東洋文庫
がかれた、摩訶薩埋太子の「捨身飼虎」にならったとの見方もあるが、この実践行が、「大宝律令」(僧尼令)の「凡そ僧尼は焚身、捨身することを得ざれ」という禁令があるこ
46. 木葉衣・鈴懸衣・踏雲録事 修験道史料1 60ページ
東洋文庫
したがって、役の小角の得意とした咒術も、この道術の咒禁にちかいものと考えられる。 『令集解』(僧尼令、卜相吉凶の条)の引く古記(天平十年正月十三日から十二年八月
47. 木葉衣・鈴懸衣・踏雲録事 修験道史料1 61ページ
東洋文庫
咒禁とおなじく道術にちかいものとおもわれ、こんにちの magic の訳としての咒術とはちがう。しかし「僧尼令」では、僧尼が吉凶のト相と小道(厭符)と巫術をするこ
48. 今昔物語集 397ページ
日本古典文学全集
下馬の礼を欠いたのを見咎めたのである。字句の理由説明としての付加句。国守の横暴ではあるが、『僧尼令』遇三位已上の条によれば、僧尼は五位以上の者に対して下馬する規
49. 碁画像
日本大百科全書
一面が日本風である。琴棋書画の気風は早くから日本にも持ち込まれ、たとえば『大宝令(たいほうりょう)』僧尼令には「凡(およ)そ僧尼は音楽及び博戯をなさば百日苦役す
50. ご‐きん【碁琴】
仏教語大辞典
碁と琴。梵網戒では碁や琴は四十八軽戒の第三十二で禁止しているが、「僧尼令」第九条はこれを制限しない点に特異なものがある。 僧尼令 九 「凡僧尼、作音楽及博戯者、
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