1. あい‐な・し
日本国語大辞典
〔形ク〕(「あいなし」か「あひなし」かは不明)(1)(するべきでないことをしたのを非難していう)あるまじきことである。けしからぬことである。不都合である。不届き
2. あい-な・し
全文全訳古語辞典
申し入れようと言うので。❷度を越していてよろしくない。 「つひに尋ね出でて、流し奉ると聞くに、あいなしと思ふまで、いみじう悲しく」〈蜻蛉・中・安和二年〉(逃げた
3. あいなし【間無】[方言]
日本方言大辞典
(1)まもなく。 富山県西部(主に過去のことを話す時に用いる)「ちょっこる待っとったらあいなし来た」398砺波民俗語彙(佐伯安一)1961《あいなく》 富山県3
4. あい‐なし【間無】
日本国語大辞典
〔副〕(1)まもなく。《あいなし》富山県西部(主に過去のことを話す時に用いる)398 《あいなく》富山県390 《あいもなく》北海道美唄市038 大分県941
5. あいなしだれ[方言]
日本方言大辞典
むだなこと。また、どっちつかずのこと。 岩手県気仙郡「そんなえぁなしだれなごどやめろ」100気仙方言誌(菊地武人)1964
6. あいなしに[方言]
日本方言大辞典
→あいなし【間無】
7. あいなしんでん【安比奈新田】埼玉県:川越市地図
日本歴史地名大系
[現]川越市安比奈新田 入間郡増形村の北、入間川左岸低地に立地。高麗郡に属する。村名は的場村と柏原村(現狭山市)とに挟まれた小村に由来するという(風土記稿)。寛
8. さつあいなし[方言]
日本方言大辞典
無分別で軽率なこと。だらしないこと。 茨城県西茨城郡188茨城方言集覧(茨城教育協会)1904 栃木県芳賀郡198栃木県方言辞典(森下喜一)1983
9. あい‐な
日本国語大辞典
(形容詞「あいなし」の語幹)多く感動表現に用いる。不都合、不適当なこと。*源氏物語〔1001~14頃〕関屋「『あいなのさかしらや』などぞ、はべるめる」*紫式部集
10. あいなく[方言]
日本方言大辞典
→あいなし【間無】
11. あいな‐さ
日本国語大辞典
〔名〕(形容詞「あいなし」の語幹に、接尾語「さ」の付いたもの)不都合、不適当なこと。また、その度合。*夜の寝覚〔1045~68頃〕四「えさらず見あひ給たる時、あ
12. あいな‐だのみ【─頼】
日本国語大辞典
〔名〕(形容詞「あいなし」の語幹が「頼み」に付いた形)してもはじまらない頼み。むだな頼み。あてにならない期待。また、法外な期待。*源氏物語〔1001~14頃〕帚
13. あいな-だのみ【あいな頼み】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕《形容詞「あいなし」の語幹「あいな」+名詞「頼み」》あてにならない期待。むだな頼み事。そら頼み。 「過ぎにし方のやうなるあいなだのみの心驕りをだに」〈更
14. あいな‐だのめ【─頼】
日本国語大辞典
〔名〕(形容詞「あいなし」の語幹が下二段動詞「頼む」の連用形の名詞化「頼め」に付いた形)むだな期待を人に抱かせること。あてにならないことを頼みにさせること。また
15. あいもない[方言]
日本方言大辞典
→あいなし【間無】
16. あいもなく[方言]
日本方言大辞典
→あいなし【間無】
17. あい‐も‐なく【間─無】
日本国語大辞典
〔連語〕
あいなし(間無)
18. 明石(源氏物語) 242ページ
日本古典文学全集
したまひけるを、その御筋にて、とりたてて伝ふる人なし。すべてただ今世に名を取れる人々、 「あいなし」は、関連性がない、妥当性がない、の意。入道は、娘のことで頭
19. 朝顔(源氏物語) 487ページ
日本古典文学全集
かつは軽々しき心のほども見知りたまひぬべく、恥づかしげなめる御ありさまをと思せば、なつかしからむ情もいとあいなし、よその御返りなどはうち絶えで、おぼつかなかるま
20. あさ-つゆ【朝露】
全文全訳古語辞典
朝露に濡れたるあさぼらけの桜に劣らず。ほととぎすのよすがとさへ思へばにや、なほさらに言ふべうもあらず。「あいなし」花の中から(実が)黄金の玉かと見えて、大変くっ
21. 東屋(源氏物語) 33ページ
日本古典文学全集
尋ね知らむ人もなかなかおとしめ思ひぬべきこそ悲しけれ、など思ひつづく。いかがはせむ、盛り過ぎたまはんもあいなし、賤しからずめやすきほどの人のかくねむごろにのたま
22. あひ-な・し
全文全訳古語辞典
〔形容詞ク活用〕⇒あいなし
23. 和泉式部日記 69ページ
日本古典文学全集
近くて親はらからの御有様も見きこえ、また昔のやうにも見ゆる人の上をも見さだめむ」と思ひ立ちにたれば、「あいなし。参らむほどまでだに、便なきこといかで聞こしめされ
24. いつも【何時】[標準語索引]
日本方言大辞典
あいがなすきがな / あいなしに / あっぱし / いきまーりたちまーり / いきまりかいまり / いじょー / いちーき / いちきり / いちぬー / いち
25. 梅枝(源氏物語) 409ページ
日本古典文学全集
しめやかなる香して、あはれになつかし。冬の御方にも、時々によれる匂ひの定まれるに、消たれんもあいなしと思して、薫衣香の方のすぐれたるは、前の朱雀院のをうつさせた
26. 栄花物語 44ページ
日本古典文学全集
穆子の孫彰子が産んだのは男宮二人。女宮は今回妍子が産んだ禎子が初めて。このような場合の禄としてふさわしい品。「あいなし」に同じ。いい年をして若宮のことが念頭を離
27. 栄花物語 102ページ
日本古典文学全集
一条殿に遷御 さて中宮は、御忌の果てんまではなど思しめしながら、この院の物の怪などもいと恐ろしければ、あいなし、いづくにてもおろかなるべきことかはとて、しばしあ
28. 江戸小咄集 1 145ページ
東洋文庫
古めかしきをすて玉、新らしい一ツゑりの咄を一冊となして、はつ春の笑いぞめとなしぬ、た黛し志毛か穿りさしあいなし(一)したきり雀のこと (二)小咄の前身を軽口とい
29. 落窪物語 130ページ
日本古典文学全集
なほなほな憎ませたまひそ」と言へり。あこぎ、<いとあいなし>と思ふ思ふ書く。「いと悩ましくせさせたまひて、御みづからは、え聞こえたまはず。枯れはてて今は限りの老
30. 落窪物語 209ページ
日本古典文学全集
さ思ふやうあり」とのたまへり。女君はいとほしがり嘆きたまへば、衛門、「さはれ、いたくな思しそ。あいなし。おとどのおはせばこそあらめ、典薬がうたれしは、かのしるし
31. 少女(源氏物語) 32ページ
日本古典文学全集
按察大納言の北の方になりて、さしむかへる子どもの数多くなりて、それにまぜて後の親に譲らむいとあいなしとて、とり放ちきこえたまひて、大宮にぞ預けきこえたまへりける
32. おもい‐かた・める[おもひ‥]【思固】
日本国語大辞典
覚悟する。*夜の寝覚〔1045~68頃〕二「『あながちに忍びなびかし奉りても、何ばかりかは。あいなし』と、我もおもひかためられたることなれば」*今昔物語集〔11
33. 蜻蛉日記 172ページ
日本古典文学全集
逃げ出でたまひにけり。愛宕になむ、清水に、などゆすりて、つひに尋ね出でて、流したてまつると聞くに、あいなしと思ふまでいみじう悲しく、心もとなき身だに、かく思ひ知
34. 蜻蛉日記 213ページ
日本古典文学全集
十一月になりて、大嘗会とてののしるべき、その中にはすこし間近く見ゆるここちす。かうぶりゆゑに、人もまたあいなしと思ふ人のわざも、習へとて、とかくすれば、いと心あ
35. 蜻蛉日記 219ページ
日本古典文学全集
その三月に出産予定か。「ありも遂ぐまじう思ひにたる世の中に、心なげなるわざをやしおかむ」(一三行)が、この「
あいなし」の具体的な感情内容。淡竹の一種。「
竹 文
36. 蜻蛉日記 264ページ
日本古典文学全集
で、「くもむら」を認めてよい。「よそのくもむら」は、兼家と疎遠になった作者自身をたとえる。「あいなし」は、もう出てくるはずのない涙が、あやにくにあふれてくるやり
37. 蜻蛉日記 273ページ
日本古典文学全集
のこどもはまゐりにた 訪れがなくてもしかたがないとわかっていながら、そんな理屈ではどうにもならない気持。「あいなし」は、自分にはどうにもできないことで、かれこ
38. 柏木(源氏物語) 316ページ
日本古典文学全集
ど、さまざまなることにて、さらに、かすめはべらむもあいなしかし。六条院にいささかなる事の違ひ目ありて、月ごろ、心の中に、かしこまり申すことなむはべりしを、いと本
39. かしまし・い【囂・姦・喧】
日本国語大辞典
「女三人寄ればかしましい」*落窪物語〔10C後〕三「あなかしまし。今は取り返すべき事にもあらず。あいなし。ないひそ」*散木奇歌集〔1128頃〕雑上「はたけふに黍
40. かぶり【被・冠】
日本国語大辞典
つけるところから)元服すること。加冠。*蜻蛉日記〔974頃〕中・天祿元年「かふりゆへに、人もまたあいなしと思ふ思ふ、わざもならへとて」*栄花物語〔1028~92
41. きよたき【清滝】京都市:右京区/上嵯峨村地図
日本歴史地名大系
にげいでたまひにけり。愛宕になん、きよたきになど、ゆすりて、つひにたづねいでて、ながしたてまつるときくに、あいなしとおもふまでいみじうかなしく(後略)と、左大臣
42. けいそつ【軽率】[標準語索引]
日本方言大辞典
がざがざ / かす / かりやす / きんぱ / きんぱこ / きんぴら / こでやすげ / さつあいなし / さっさくさ / さっさくさー / そさーくさ /
43. 建礼門院右京大夫集 93ページ
日本古典文学全集
これらの歌は安元二年後半から治承二年までの詠となる。気にくわない差し出口ですよ。「あいな」は「あいなし」(気に入らない)の語幹。このような風雅なわざ、すなわち歌
44. 源威集 111ページ
東洋文庫
叶えてやることができる望みであるならば、そのままにしておくことはできない。(18) 「無相」は「あいなし」。筋違い、本意でない。筋違いのお願いに対し、ご配慮を伺
45. こころ 隔(へだ)つ
日本国語大辞典
綿の心へだてておもふものかは」*源氏物語〔1001~14頃〕若菜上「さ宣はんを、心へだてんもあいなしとおぼすなりけり」*金槐和歌集〔1213〕雑「岩ねふみ幾重の
46. こと‐い・ず[‥いづ]【言出】
日本国語大辞典
ばに出す。口に出していう。ことず。*源氏物語〔1001~14頃〕夕霧「我さかしにこと出でむもあいなしと思して」*源氏物語〔1001~14頃〕宿木「たはやすくこと
47. 賢木(源氏物語) 84ページ
日本古典文学全集
君も思す。人は心づきなしと思ひおきたまふこともあらむに、我はいますこし思ひ乱るることのまさるべきを、あいなしと心強く思すなるべし。〔二〕源氏、御息所を野宮に訪れ
48. 更級日記 313ページ
日本古典文学全集
継母は孝標と離別後、後一条天皇に仕え、上総大輔と呼ばれていた。別人を夫として通わせてからも。「あいなし」の語意は必ずしも分明ではないが、筋違いである、具合が悪い
49. 早蕨(源氏物語) 359ページ
日本古典文学全集
なることにこそ。彼岸に到ること、などか。さしもあるまじきことにてさへ、深き底に沈み過ぐさむもあいなし。すべて、なべてむなしく思ひとるべき世になむ」などのたまふ。
50. しきり【頻】[標準語索引]
日本方言大辞典
→やたらしきり:頻とやーしきり:頻にあいなしに / かったし / ごっこと / こんに / さっさ / しぐらに / しげなつ / しじらこに / じじらこに