皇位を譲ること。禅(ゆずり)を受けて皇位につくことを含める場合も多く,譲国ともいう。日本における皇位継承は,上古は天皇が没すると行われるのを常例としたが,645年大化改新に際し,皇極天皇が孝徳天皇に皇位を譲ってから,しだいに譲位が慣例化し,明治天皇まで87代中,56代の天皇が譲位受禅によって皇位についた(ほかに北朝に2例ある)。一方,平安時代の初めから皇位継承と即位の儀礼が分離し,清和天皇のとき制定された《貞観儀式》では,譲国儀と天皇即位儀が別個に規定された。
譲国儀の大略は,天皇があらかじめ本宮を去って御在所に移り,譲位3日前に固関使を発遣して三関を固める(固関(こげん))。当日天皇は皇太子とともに御在所の南面に出御し,親王以下五位以上が南庭に,六位以下が門外に列立,宣命使が譲位の宣命を宣読し,群臣が称唯拝舞する。ついで皇太子=新帝が南階より降りて拝舞し,春宮坊に移る。内侍が節剣を奉持して従う。ついで少納言が伝国の璽の櫃(ひつ)と鈴印および鑰(かぎ)を奉持して新帝の御在所に進める。この儀注を基にして,以後宣命の宣読と剣璽渡御を中核とする譲位の儀礼が形成されたが,1889年(明治22)皇室典範が制定されるに及び,皇位継承は天皇が没したときに限られ,譲位の流例は廃絶した。
→践祚(せんそ) →即位
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