1. いたづら【徒ら】
全文全訳古語辞典
〔形容動詞ナリ活用〕 [類義語]あだ・はかなし・むなし 役に立たない、むなしい、が基本の意。いたづらになるは、命がむなしくなる、の意から、死ぬ、の意になる。現代
2. いたづらにな・す
全文全訳古語辞典
❶だめにする。むだにする。 「多くの人の身をいたづらになして」〈竹取・帝の求婚〉たくさんの男の身をだめにして。❷死なせる。 「この人、いたづらになし奉らじ」〈源
3. いたづら-ごと
全文全訳古語辞典
〔名詞〕 〔一〕【徒ら事】 役に立たないこと。無用なこと。また、みだらなこと。 〔二〕【徒ら言】 役に立たない言葉。無用な言葉。
4. いたづらにな・る
全文全訳古語辞典
❶だめになる。無用のものになる。 ❷死ぬ。 百人一首 あはれとも言ふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな〈藤原伊尹〉 私のことをかわいそうだと言ってくれ
5. いたづら-びと【徒ら人】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕 ❶役に立たない人。役立たず。 ❷落ちぶれて、見るかげもない人。 「いたづら人をば、ゆゆしき者にこそ思ひ捨て給ふらめ」〈源氏・明石〉落ちぶれた人(=光源
6. いたづら-ぶし【徒ら臥し】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕恋人に会えず、空しくひとり寝ること。「いたづらね」とも。
7. いたづら-もの【徒ら者】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕 ❶「いたづらびと❶」に同じ。 「今は官もなきいたづら者になれるよしなり」〈古今著聞集・和歌〉今は官位もない無用な人になっている由である。❷悪いことをす
8. いたづら-や【徒ら屋】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕使われていない建物。空き屋。 「平野はいたづら屋のありしを『なにする所ぞ』と問ひしに」〈枕草子・神は〉平野神社には使われていない建物があったのを「何をす
9. 【徒事】とじ
新選漢和辞典Web版
【一】とじ役にたたないこと。むだごと。 【二】いたずら(いたづら)ごと/あだごと 《国》 ①むだごと。 ②男女間のみだらなこと。
10. 〖少壮(壯)不二努力一、老大徒傷悲〗しょう (せう) そう(さう)どりょくせずんば、ろう(らう)だい いたずら(いたづら)にしょう(しゃう)ひせん
新選漢和辞典Web版
若いうちに一生懸命にやっておかないと、年をとってからいたずらに痛み悲しむことになるであろう。〈楽府(がふ)詩集・長歌行(ちょうかこう)〉
11. あいだ‐ぐい[あひだぐひ]【間食】
日本国語大辞典
〔名〕食事と食事との間に物を食べること。かんしょく。*いたづら小僧日記〔1909〕〈佐々木邦訳〉「喰べるといへば奥さんは能く間食(アヒダグヒ)をする人だ」*まん
12. 明石(源氏物語) 246ページ
日本古典文学全集
行ひよりほかのことなくて月日を経るに、心もみなくづほれにけり。かかる人ものしたまふとはほの聞きながら、いたづら人をばゆゆしきものにこそ思ひ棄てたまふらめと思ひ屈
13. 明石(源氏物語) 276ページ
日本古典文学全集
自身を「舟人」と称した。「おほ(果)す」(下二段)は、動詞の連用形について、…しおえる、の意。「いたづらに立ち返りにし白波の名残に袖のひるときもなし」(後撰・恋
14. あき の 雲(くも)
日本国語大辞典
「あきぐも(秋雲)」に同じ。《季・秋》*御伽草子・桜の中将(室町時代物語大成所収)〔室町末〕上「花のすがたもいたづらにはる風にしほれ、月のかほばせもさながらあき
15. 秋(あき)の鹿(しか)は笛(ふえ)に=寄(よ)る〔=心(こころ)を乱(みだ)す〕
故事俗信ことわざ大辞典
曽我物語(南北朝頃)六・仏性国の雨の事「夏の虫、とんで火に入、秋の鹿の、ふゑに心をみだし、身をいたづらになす事、たかきも、いやしきも、力およばぬは、此道なり」浮
16. あき の 鹿(しか)は笛(ふえ)に=寄(よ)る[=心(こころ)を乱(みだ)す]
日本国語大辞典
*曾我物語〔南北朝頃〕六・仏性国の雨の事「夏の虫、とんで火に入、秋の鹿の、ふゑに心をみだし、身をいたづらになす事、たかきも、いやしきも、力およばぬは、此道なり」
17. あきのた‐の【秋田─】
日本国語大辞典
含む「かりそめ」にかかる。*後撰和歌集〔951~953頃〕恋四・八四五「秋の田のかりそめぶしもしてけるかいたづらいねをなににつままし〈藤原成国〉」
18. 秋山記行・夜職草 90ページ
東洋文庫
申捨て往内に、予は杖を力に、岩角や、枯木にすがりて〔進みゆく〕、暫時の間に桶屋ひとりさびしくいたづらは見えず〔なりぬ〕。又、諸樹乱雑したる所に〔て〕、頻に猫寂敷
19. 秋山記行・夜職草 104ページ
東洋文庫
是や往來の稀かして、樵父だに進ず。只錦繍の如き大樹の紅ひかりかがやき^もうろう)いへ^おもむろ)ふきいたづらひびく葉暉曜、又は檬瀧なして、白日と云ども寂蓼たる冷
20. 秋山記行・夜職草 150ページ
東洋文庫
幸に罧敷にし、道中蒲團に合羽迄背通りにかけ、眞麿になって更に眞睡もせず。秋山ここなりすぐしぱしっくいたづら修行は髪也と〔思ふ〕。時刻過れど家内は裸ず、や、暫あり
21. あきれ‐かえ・る[‥かへる]【呆返】
日本国語大辞典
〔1798〕冬の床「おめへはあきれけへるよ」*滑稽本・浮世床〔1813~23〕初・下「なる程いたづらな調市(でっち)だのう慌帰(アキレケヘ)るぜ」*当世書生気質
22. あく‐しょう[‥シャウ]【悪性】
日本国語大辞典
判記・色道大鏡〔1678〕一「悪性(アクシャウ)悪人のみをさしていふ詞にあらず、当道にても、いたづらなる者をいふ。悪性(アクセウ)を題する歌。風呂すまふ芝居兵法
23. あく‐たろう[‥タラウ]【悪太郎】
日本国語大辞典
十三夜〔1895〕〈樋口一葉〉上「誰れだと大きく父親の声、道ゆく悪太郎(アクタラウ)の悪戯(いたづら)とまがへてなるべし」*思出の記〔1900~01〕〈徳富蘆花
24. 総角(源氏物語) 277ページ
日本古典文学全集
いとほしう見たてまつりたまひて、薫「同じ御騒がれにこそはおはすなれ。今宵の罪にはかはりきこえさせて、身をもいたづらになしはべりなむかし。木幡の山に馬はいかがはべ
25. あさ‐ふし【朝臥】
日本国語大辞典
〔名〕朝寝のこと。*身のかたみ〔室町中頃〕「朝おきの事〈略〉いたづらにあさふしして、おきあがりて、かほのゆくゑもしらず、ほれまどひたるありさまみにくし」
26. あさ‐ぶせり【朝臥】
日本国語大辞典
〔名〕朝寝のこと。*伊勢貞親家訓〔1457~60頃〕「いたづらに朝ふせり夕まどひして、若き時は二度なきに四時にわたり風雅の面白き光陰を只に送る事、心ふとくあさま
27. あさま・し
全文全訳古語辞典
のは世の常だけれども、嘆かわしいことだ。❹もってのほかだ。とんでもない。ひどい。 「この庭のいたづらに広きこと、あさましく、あるべからぬことなり」〈徒然草・22
28. あさまし・い【浅】
日本国語大辞典
、もののあはれも知らずなりゆくなん、浅ましき」*増鏡〔1368~76頃〕序「あさましき身は、いたづらなる年のみ積もりたるばかりにて」*良人の自白〔1904~06
29. あさゆく‐つき【朝行月】
日本国語大辞典
〔名〕朝まで残っている月。残月。有明の月。*頼政集〔1178~80頃〕上「天の原朝行月のいたづらによに余さるる心ちこそすれ」
30. あし の 裏(うら)に傷(きず)持(も)つ
日本国語大辞典
。*俳諧・本朝文選〔1706〕三・賦類・鼠賦〈去来〉「二月鼠の穴を塞(ふさ)ぐ。つくづく汝がいたづらをおもへ。家に居て人をおそるるは。足のうらに疵(キズ)持けら
31. 足(あし)の裏(うら)に傷(きず)持(も)つ
故事俗信ことわざ大辞典
「足に傷持つ」に同じ。 俳諧・本朝文選(1706)三・賦類・鼠賦〈去来〉「二月鼠の穴を塞(ふさ)ぐ。つくづく汝がいたづらをおもへ。家に居て人をおそるるは。足のう
32. 排蘆小船(近世随想集) 245ページ
日本古典文学全集
〔一〕歌の本体 問ふ。歌は天下の政道を助くる道なり。いたづらに翫び物と思うべからず。この故に古今の序に、この心みえたり。この義いかが。答へて曰く。非なり。歌の本
33. 排蘆小船(近世随想集) 278ページ
日本古典文学全集
もすべて日本紀の文法、之の字あるまじきと思しき所に、之の字あること多し。されば「うたよみして」と云ふ言は、「これをうたふ」と云ふ字義にさのみ関はらず。ただ歌の字
34. 排蘆小船(近世随想集) 295ページ
日本古典文学全集
り、雪のうちに年の暮ゆくゆふべ迄、物ごとに何かはあはれならざらん。あたら花鳥の色をもねをも、いたづらに見ききすぐして、ひと言の詠もなくむなしくあかしくらさんは、
35. 排蘆小船(近世随想集) 296ページ
日本古典文学全集
何事かはおもしろからざらん。いと猛き猪の類ひも、「ふすゐのとこ」といへば、哀に懐しきといへる、古めかしきことなれど、まことにこの歌の徳ならでは、いかでかかく優に
36. 排蘆小船(近世随想集) 299ページ
日本古典文学全集
」と吟じたる、古へ、哀に優しきことなりし。今の世は、僧の恋歌詠みなどすれば、人これを大いに蔑み、「いたづら坊主よ」とて疎み果て、又僧も表向きは、随分潔白廉正にみ
37. あすか【飛鳥・明日香】
日本国語大辞典
置きて去(い)なば君があたりは見えずかもあらむ〈元明天皇〉」*ささめごと〔1463~64頃〕上「などいたづらにつとめざるらむ 寺近きあすかの里に住みながら〈十仏
38. あすか‐かぜ【飛鳥風・明日香風】
日本国語大辞典
香地方に吹く風。*万葉集〔8C後〕一・五一「采女の袖吹きかへす明日香風(あすかかぜ)都を遠みいたづらに吹く〈志貴皇子〉」*古今連談集〔1444~48頃〕「ふるさ
39. あたま を 分(わ)ける
日本国語大辞典
頭髪にくしの目を入れる。*吾輩は猫である〔1905~06〕〈夏目漱石〉二「頭を奇麗に分けて」*いたづら小僧日記〔1909〕〈佐々木邦訳〉「洋行帰りのハイカラで、
40. あたらし‐ずくめ[‥づくめ]【新尽】
日本国語大辞典
満たされていること。*坑夫〔1908〕〈夏目漱石〉「凡てが苔の生えない、新しづくめの上に」*いたづら小僧日記〔1909〕〈佐々木邦訳〉「新しい襟飾を付けて、新し
41. あったらし・い【惜】
日本国語大辞典
あったらしい事哉」*幸若・十番斬〔室町末~近世初〕「かかる臆病者共に、あったらしき御所領を、いたづらにたばんより」*浄瑠璃・相撲祝言はんがく女ぐんはふ〔1661
42. あつかい‐さわ・ぐ[あつかひ‥]【扱騒】
日本国語大辞典
する。*源氏物語〔1001~14頃〕手習「知らぬ人なれど、見めの、こよなうをかしげなれば、『いたづらになさじ』と、みるかぎり、あつかひさはぎけり」
43. あて宮(うつほ物語) 116ページ
日本古典文学全集
ことをば、そこに預けたてまつらむとなむ思ふを、かくいたづら人にていますがるが、いみじく悲しきこと」と泣き惑ひたまふ。いとどしきに、かけてものたまはで、ものも覚え
44. あて宮(うつほ物語) 117ページ
日本古典文学全集
寺詣でなどのために、山道を行くこと。仲澄は、同腹の妹あて宮へのかなわぬ恋に苦しみ続けたあげく、今や「いたづら人」になってしまった。あて宮の東宮入内が決定的になっ
45. あて宮(うつほ物語) 143ページ
日本古典文学全集
しければ。いでや、あが君の御ためには、身のいたづらになりぬるも思ひたまへず、今一度の対面賜はらずなりぬるを思うたまふるなむ」と聞こえたり。あて宮、見たまひて、あ
46. あます【余】[方言]
日本方言大辞典
そこもここもから持込んで来てあましたもんぢゃ」862土佐方言集(宮地美彦)1937頼政集上「天の原朝行く月のいたづらに世にあまさるる心地こそすれ」(2)嘔吐おう
47. あま の 捨草(すてぐさ)
日本国語大辞典
櫛笥(くしげ)はみだれて、あまの捨草となりつつ」*和歌呉竹集〔1795〕八「我こひはあまのすてくさいたづらに朽まさり行果(はて)をみせばや」(2)
48. 海人(あま)の捨草(すてぐさ)
故事俗信ことわざ大辞典
櫛笥(くしげ)はみだれて、あまの捨草となりつつ」和歌呉竹集(1795)八「我こひはあまのすてくさいたづらに朽まさり行果(はて)をみせばや」
49. 海人(あま)の捨舟(すてふね)
故事俗信ことわざ大辞典
りし風のしるべの浪の間に思はぬ方のあまの捨舟〈藤原信実〉」新千載(1359)恋二・一一八六「いたづらにあはでの浦に寄るべなき我が身ぞいまはあまの捨舟〈藤原為世〉
50. あま の 捨舟(すてぶね)
日本国語大辞典
しるべの浪の間に思はぬ方のあまの捨舟〈藤原信実〉」*新千載和歌集〔1359〕恋二・一一八六「いたづらにあはでの浦に寄るべなき我が身ぞいまはあまの捨舟〈藤原為世〉