小説家、エッセイスト。
山梨県山梨市生まれ。
書店を営む家庭に生まれる。山梨県立日川高校卒業後、日本大学芸術学部文芸学科入学。1976(昭和51)年卒業後、アルバイト等をしながら宣伝会議主催のコピーライター養成講座、糸井重里コピー塾等に学んだのち、1981(昭和56)年にコピーライターデビュー、1982(昭和57)年に初のエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(同・11 主婦の友社)を刊行し、ベストセラーとなる。1983(昭和58)年に初の小説「星に願いを」(『小説現代』1983・12)を発表、次いで「星影のステラ」(『野性時代』1984・7)、『葡萄が目にしみる』(1984・11 角川書店)、「胡桃の家」(『小説新潮』1985・7)と立て続けに直木賞候補となったのち、「最終便に間に合えば」「京都まで」(『最終便に間に合えば』1985・11 文藝春秋より)で第94回直木賞を受賞した。受賞作はどちらも、恋愛中の男女の駆け引きを描いた短編作品である。
この作風は以後の現代小説に受け継がれ、働く現代女性とその恋愛関係に焦点化した『不機嫌な果実』(1996・10 文藝春秋)や『anego』(2003・11 小学館)、専業主婦かキャリア女性かという女性のライフコース選択の問題を背景にした連作小説集『みんなの秘密』(1997・12 講談社 第32回吉川英治文学賞受賞)や『下流の宴』(2010・3 毎日新聞社)などが書かれた。いっぽう1990年代には、実践女子学園創設者・下田歌子を取り上げた『ミカドの淑女』(1990・9 新潮社)、歌人・柳原白蓮をモデルにした『白蓮れんれん』(1994・10 中央公論社 第8回柴田錬三郎賞受賞)、作家・真杉静枝に材をとった『女文士』(1995・10 新潮社 第6回坪田譲治文学賞候補)など、近代に生きる実在の女性表現者たちに取材した歴史・評伝小説を相次いで書き、知的才能に恵まれながらも恋愛や結婚に翻弄された姿を、彼女たちがものを書き読む営為を手がかりにしつつ描いている。
この系譜には、母をモデルにしたとされる女性・万亀の戦前から戦後までの半生を彼女の愛読する文学作品と関連させつつ描く『本を読む女』(1991・2 新潮社)のほか、「櫂」「一絃の琴」などの作品で知られる宮尾登美子の作家人生を描いた『綴る女 評伝・宮尾登美子』(2020・2 中央公論新社)なども含まれよう。宮尾登美子は歴史の中の女性に着目する点、また直木賞・吉川英治文学賞などを受賞している点でも、林真理子と立ち位置の近い作家である。書く女性たちの姿を描くこれらの作品は、女性作家が抱えてきた問題を明るみに出しつつ、書き手としての自らの立場をも捉え返す批評性のある作品であると言えよう。
林の作品は現代小説・評伝小説を問わず多くドラマ化され、女性を中心に広く読まれてきた。2018年には『西郷どん』(2017・11 KADOKAWA)がNHK大河ドラマの原作となり、注目を浴びることとなった。また『本朝金瓶梅 お伊勢編』(2007・11 文藝春秋)や、『六条御息所 源氏がたり』全3巻(2010・4~12・9 小学館)、『STORY OF UJI 小説源氏物語』(2015・2 小学館)など、古典文学に材をとって再構成した小説も手掛けている。
これら小説作品と並び、林真理子はデビュー当初からコンスタントにエッセイを書き続けている。1980年代にはタレントであるアグネス・チャンの「子連れ出勤」を批判したエッセイ「いい加減にしてよアグネス」(『文藝春秋』1988・5)を書き、中島梓をはじめ、上野千鶴子ら研究者をも巻き込んだ「アグネス論争」を引き起こし、女性の社会進出と家庭役割・家庭責任との軋轢が生むジェンダー問題を浮き彫りにした。それを含む林の『週刊文春』掲載エッセイは、1983(昭和58)年8月4日号の初回以降、1669回目を数える2020(令和2)年10月22日号をもって、「同一雑誌におけるエッセイの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定され、これらエッセイストとしての活躍を含めた長年の文化活動に対し、2020年に第68回菊池寛賞が贈られた。なお、林は第123回直木賞(2000年上半期)以降2021(令和3)年4月現在まで直木賞選考委員を務める他、吉川英治文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞などの選考委員も歴任、2020年5月には女性初の日本文藝家協会理事長に就任した。2018(平成30)年、紫綬褒章受章。2020年9月から11月にかけ、出身地である山梨の県立文学館にて「企画展 まるごと林真理子展」が行われた。
代表作
代表作:新規