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ソフィスト列伝

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第一章 プロタゴラス > I 生涯と著作
ソフィスト列伝6 / 168
文庫クセジュ862 ジルベール・ロメイエ=デルベ / 神崎繁 / 小野木芳伸
哲学・心理学・宗教
第一章 プロタゴラス
I 生涯と著作
 プロタゴラスは紀元前四九二年頃、アブデラ〔トラキア地方のエーゲ海に面したネストス川河口のポリス〕で生まれたと現在では考えられている(1)。プロタゴラスは、マイアンドリオスの息子であった。
(1)従来、紀元前四八六年~四八五年の生誕とされてきたが、これは誤りである。ウンターシュタイナー『集成』第二巻一五、同『証言と断片』第一巻一四注参照。
 複数の証言中で、プロタゴラスはデモクリトス〔同じアブデラ生まれの原子論者〕の弟子とされている。これが信用するに足りるかどうかは、デモクリトスに関してどの年代記を採るか、つまりデモクリトスの生年を紀元前四六〇年とするアポロドロスを採るか、紀元前四九四年とするディオドロスを採るかによる(デュプレール『ソフィスト』二八頁以下参照)。
 フィロストラトス〔紀元前二世紀の『ソフィスト伝』の著者〕は、プロタゴラスはペルシアの僧侶の行なう秘儀に(あずか)っていたと主張する。プロタゴラスの父マイアンドリオスはとても裕福であったため、ペルシアのクセルクセス王を自宅で歓待することができ、クセルクセス王のほうはといえば、感謝の印として、通常はもっぱらペルシア国民に限って与えられる教義を若きプロタゴラスに授けるよう僧侶らに命じた。そこでプロタゴラスが授かった教義の内容こそが、プロタゴラスの不可知論の元になったものであろう、というのである。事実、ペルシアの僧侶は、自分たちの信仰内容を秘密にしている。しかし、この話はありそうにないことばかりでできている。こうした話がでっちあげられた動機は、プロタゴラスの宗教上の懐疑主義は異国からの影響によるものだと申し立てることで、これを免責しようということにある。この話では、ペルシア王その人の登場を説明するために、プロタゴラスに金持ちの父親がいたことになっているが、別の複数の証言では、プロタゴラス家の慎ましい生活が引き合いに出され、プロタゴラス自身まず手仕事に従事するところから身を起こし(断片A一およびA三〔以下、断片の引用については、「訳者あとがき」を参照〕)、ソフィストとして身を立てると、「報酬と引き換えに質問に答えることを考え出した最初の者」(断片A二第四節)となったとされているのである。実際、ソフィストは教師として報酬を得ていたが、それは人がプラトンの言葉を鵜呑みにしてそう信じてきたように限りない物欲に動かされてのことではなく、その理由はまったく単純に、現代の教師と同様、生活のためには報酬が必要だったからである。プロタゴラスの最初の職である手仕事について言うと、それが本当だという確かな証拠がある。というのも、その証拠というのが、『教育について』と題する若きアリストテレスの著作の一節であるからである。アリストテレスのこの著作からわれわれは、プロタゴラスが「その上に重い荷物を載せて運ぶための、テュレーと呼ばれる道具を発明した」(断片A一第五三節)ということを知ることができる。テュレーとは、通例、マットレス、あるいは詰めものをした茣蓙(ござ)、あるいは頭当てに使うクッションのことを指すのであるが、ジャニーヌ・ベルティエは、エピクロスの著作やアウルス・ゲリウスの著作の一節を典拠として、プロタゴラスの発明というのは、本当は柴の束が外から紐をかけなくても柴だけでまとまるようにする荷造りの仕方であったと解釈する。そうであるとすれば、「プロタゴラスの着想は力学的というよりは幾何学的であり、ともかくも手工業的というよりは数学的であったといえよう(1)」。しかしながら、テュレーなるものの正体に関するこの巧妙な解釈にも一つ難点があり、それは、ディオゲネス・ラエルティオス(2)が、テュレーとはクッションのことだと述べ、しかもまたディオゲネスは、くだんの柴の束のまとめ方の話も承知しているという点である。ディオゲネスは、デモクリトスはプロタゴラスが柴を束ねる手際の良さを見て、将来ソフィストとなるプロタゴラスの頭の良さに気づいたらしい、と言っている(断片A一第五三節)。したがって、プロタゴラスの発明というのは、一つだけではなく二つあったのであろう。つまり、荷物の詰め方とテュレーの二つであって、こう理解すれば、ディオゲネス・ラエルティオスに出てくるテュレーという語にも、それにふさわしい意味を充てることができよう。したがって、プロタゴラスによるテュレーの発明は、われわれには数学的というよりは技術的であると思われ、これは彼の、思弁的であるというよりは実践的な知の捉え方とも合致する。そして、このような知の捉え方は、プロタゴラスの弟子であるイソクラテス(3)の教育に関する理想のうちに再現されることになる(断片A三)。
(1)P・M・シュール監修『アリストテレス断片と証言』(PUF社、一九六八)一四六頁を見よ。ただし、この主張はプロタゴラスが数学に対して不信の念を抱いていたと思われる点とは相容れない。断片B七およびウンターシュタイナー『証言と断片』第一巻八四記載の断片B七aを参照。後者はシンプリキオスのテクストで、そこではプロタゴラスはエレアのゼノン〔紀元前五世紀の哲学者で、パルメニデスの弟子、不生不滅な一者の存在を説いた師の一元論を徹底させて運動の否定を主張した〕と対立している。
(2)紀元後三世紀前半の著作家で、その著『ギリシア哲学者列伝』によってしか知られない〔訳注〕。
(3)紀元前五世紀から四世紀にわたってほぼ百歳の長寿を保ち、アテナイに設立した弁論学校を通して幅広い教育を行ない、ソフィストに反対すると同時に、プラトンのアカデメイアにおける哲学教育にも対抗した弁論家〔訳注〕。
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